24話 よーっしっ!
陽が落ち、騎士団達がテントを作り終えた後、俺はシエルとリリィと一緒にキャンプから少し離れた場所にやってきた。
周辺は草原になっており、障害物もないため視界が良い。
何時間も狭い屋形に閉じこもっていたため、吹き抜ける風がとても心地良かった。
「じゃあ……とりあえず、リリィができるスキルを見せてくれないかな」
とはいえ、いつまでも自然を満喫しているわけにもいかない。
とりえあず、今のリリィにどんなことができるのか教えてもらわなければ。
「はいっ! じゃあまずは剣士のスキルからっ!」
元気よく答えると、リリィは手に持っていた杖を両手で構える。
一見、魔術師が使うような杖だが大丈夫なのだろうか。
そう思いながらリリィのことを見つめていると――
「クラッシュロッドッ!」
リリィがそう言った瞬間、リリィの杖に青白い光が宿る。
それを背伸びをするように大きく振り上げて、一気に地面に叩き落すリリィ。
衝撃音とともに、地面に小さなクレーターができる。
――なるほど。それなりに威力はあるようだ。しかし、こんな大振りな攻撃が実戦で当たるのだろうか……
「次……せーの……ヒートストライクッ!」
もう一度、杖を高く掲げるリリィ。
赤く輝く光を放つ杖。それをハンマー投げでもするかのようにぐるりと体を回転させて反動をつけ、横にスイング。
やはり、これも大振りの攻撃だ。素人目で見ても、隙だらけだということがすぐに分かる。
「私の得意なスキルはこの二つです。他は……練習中で。魔法は、四属性の基本魔法を使うことができます。でも、威力はちょっと弱いみたいです……」
「なるほど……」
最初にリリィを見かけた時に使っていたファイアボルトという魔法のことか。
たしかに、あの魔法を受けた魔物は、全然怯んだ様子を見せていなかった。
属性に耐性があったとはいえ、もともとの威力が低いということか。
「えっと……少し大振りすぎると思います。あそこまでチャージが必要なスキルじゃないと思うのですが……」
と、シエルが言いにくそうに声をあげる。
しゅんと肩を落とすリリィ。
「それは……リリィのレベル不足だと思います。レベル20ぐらいないと、完全には使えないスキルだって言われました。でも、リリィがうまく使えるスキルは少なくて……」
――そうなのか。ダブルクラスというぐらいだから、使えるスキル自体は多様なのかと思っていたが。
そんなことを疑問に感じていると、シエルが察してくれたのか、小声で話しかけてきた。
「クラスだけじゃなくてスキルにも人それぞれ適性があります。特に剣士というクラスは武器ごとに異なったスキルがあって……人それぞれ、個性が出るクラスになっています」
「その適性っていうのはどうやって判断するんだ?」
「鑑定士という特殊なクラスに適性のある方が使えるアナライズ系統のスキルで判定します。私も戦闘能力を判定するために、何度かアナライズを受けました」
「へー……アナライズかぁ。俺にもつかえないか――」
――ふと。
頭の中にスキルの名前が浮かんできた。
「オールアナライズ」
半ば反射的にその名前を口にする。
すると、俺の手から奇妙な光がリリィに向けて放たれた。
「え……?」
その光は、少しの間だけリリィのことを包み込んだ後、まるでヴェールのように俺の目の前に広がっていく。
単純に見れば、それはただの光の幕なのだが――なぜだろう、俺にはその光が文字として意味を成していることを直感的に理解できてしまう。
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名前 リリィ
性別 女 年齢 14 レベル 10
適性クラス 剣士 魔術師
適性スキル レベル100以上のスキル
下級剣技 基本魔法の適性無し。
不適正スキルを使うと威力・詠唱力・集中力が低減
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そう書いてあるわけではないのだが、そういう意味であることが分かってしまう。
自分でも不思議な感覚だ。
それ以外にも……
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現在の心理状態 期待・不安
信頼ランク 友好・敬い
ストレス状況 慢性的劣等感
恋愛経験 無 憧れあり
処女 成人になることへの焦り・恐怖
性癖 現時点で無自覚
潜在意識に頭を撫でられることに対する強い憧憬あり
手の平フェチの素質あり 性的興奮の意味を知った場合、高確率で自覚に変化
スリーサイズ …………
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――ちょっとまてっ! なんだこの情報はっ!!
見てはいけないものを見てしまった気がする。
他にも色々読み取れそうな情報があるのだが、適性スキルのことが知れれば十分だ。
リリィのプライバシーにかかわることだし、見なかったことにしよう。
「ユウ様は、鑑定士の適性まであったのですか……しかも、鑑定補助具も使わずに……」
ふと、シエルの声で我に返る。
唖然とした表情で俺のことを見つめている。
少し恥ずかしいのでリリィに視線を移す。
「さすがですっ! それで……どうでしょう! リリィ、強くなれそうでしょうか?」
さっき見た情報通り、期待と不安に満ちた瞳で俺のことを見つめてくるリリィ。
「そうだな……レベル100以上のスキルに適性があるみたいなんだけど……」
「……はい?」
一瞬、場の空気が凍り付く。
「レベル100って……え? え?」
シエルは、引きつった笑みで俺のことを見つめてくる。
――まぁ、なんとなく言いたいことは分かるが、それでもさっきのアナライズだとそういう情報になっていたので仕方ない。
「凄いっ! ってことは――リリィ、頑張り続ければ、大陸の英雄様が使うようなスキルが使えるってことですか!」
「それははっきりとは分からないけど……レベルってどうやったらあがるんだ?」
レベル100以上のスキルというからには、その習得には同じぐらいのレベルが必要なはずだ。
だが、そもそもそれができないからリリィは悩んでいるわけで。
「地道に訓練や戦闘を重ねると上がるということしか分からないです。レベル上昇のタイミングは個人差もありますし……」
「そうか……うーん……」
やはり、リリィの悩みを解決することはできないか。
だが――
「やったやった! こんなこと、お父さんも教えてくれなかったですっ! リリィ、頑張りますっ!! 頑張って修行しますっ!!」
やる気に満ちた目で杖を天に掲げるリリィ。
――これで良かったのだろうか……?
妙に嫌な感覚が胸をよぎる。
だが、せっかくリリィがやる気になっているのに、それに水をさすのも違うだろう。
「よーっしっ! レベル100目指して、頑張りますよぉーっ!!」




