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22話 お願いしますっ

「あ……ごめんなさいっ、まだ自己紹介もしてませんでしたっ。リリィは、リリィといいます! よろしくおねがいしますっ!」


 予想もしてなかった弟子入りの申し入れに呆気にとられていると、その少女――リリィは、仰々しくお辞儀をして自分の名前を名乗ってきた。

 少しつっこみたくなるような話し方だが、異世界にはよくあることだろう。気にしないでおく。


「う、うん。よろしくね……俺はユウだよ」

「ユウさん……ですね! よろしくおねがいしますっ!!」


 ゆらりと、リリィのツインテールがゆれる。

 ゴツゴツの鎧をきている他の男達と比べるとかなりの軽装だ。

 着ているジャケットは、あざといとも思えるほど可愛らしい彼女の髪型とは対照的な、ガチガチの軍服。――それなのに、その下はおへそが露出した軽装になっている。

 赤と黒のチェックのスカートに、髪の毛をかざる赤のリボンは、彼女なりのおしゃれ心なのだろうか。

 顔立ちは整っており、シエルとは違ったタイプの美少女だ。


「ユウ様……? この方は?」


 ふと、シエルの声で我に返る。

 いつの間にか、俺のすぐそばにきていたシエルがきょとんとした顔でこちらを見ていた。


「えっと……リリィっていうみたい……」

「はいっ! よろしくおねがいしますっ!」

「あ……ご丁寧にありがとうございます。私はシエルです。よろしくおねがいします」


 そうシエルが名乗ると、リリィは目を大きく見開く。


「わぁ……リリィ、お名前のある獣人族の方とお会いするのは初めてですっ! シエルさんは凄い獣人族なのですか?」

「え? いや……そういうことではないですよ。ユウ様から頂いたお名前なのです」

「へー! ユウさんは、獣人族に名前をつけることができるのですね! 凄いですっ!」


 目を輝かせながら俺を見つめてくるリリィ。

 さすがにその言葉の意味が分からず、思わず苦笑してしまう。


「いや……別に凄いから名前をつけたわけじゃな――」

「そうなんですっ! ユウ様は凄いんですっ!!」


 と、シエルまでもリリィと同じように目を輝かせて身を乗り出してきた。

 その様子に言葉を詰まらせていると、リリィは俺の様子が目に入っていないかのように言葉を続ける。


「リリィ、さっきのユウさんの一撃を見て、ビビッときましたっ! リリィ、ユウさんの弟子になりたいですっ!」

「弟子って……俺は師匠になれるような器じゃ――」

「お願いします! ユウさん!! もう、ユウさんしかいないんですっ!!」


 ぐいぐいと上目遣いで俺に近づいてくるリリィ。

 あざとい――と思ってしまうほどの可愛らしさだ。だが、なんとなく無自覚でやっているんだろうということも伝わってきてしまう。

 どうしたものかと困っていると、背後からレイグが声をかけてきた。


「……何をやっているんだ、リリィ。そろそろ隊列に戻りなさい」

「あっ……ごめんなさい、お父さん。でも、後ちょっとだけ……」

「我儘をいうな。お前はまだ見習いの身分なんだぞ」


 厳かな……だが、優しさに満ちた声でリリィを諭すレイグ。


 ――って、待て。


「……お父さん?」


 唖然としながらレイグを見ていると、彼は苦笑しながら俺に視線を移す。


「娘が失礼したようだね。この子はダブルクラスだが、どうも要領が悪くてね……親がいうのもなんだが、根はいい子だから許してやってくれ」

「うぅ……お父さんまでひどいです。リリィ、これでも頑張って強くなろうとしてます!」


 若干涙目になりながら訴えるリリィに、レイグは気まずそうに微笑む。

 まぁ――なんとなく状況は察することができた。

 たしかに、レイグの言う通り要領が悪そうというか……伸び悩みそうな子というか……


「お願いしますっ、ユウさん! リリィを強くしてください! お礼になんでもしますからっ!!」


 と、俺の視線に気づいたのか、リリィが改めてお辞儀をしてきた。

 シエルは、そんな彼女を心配そうに見つめている。


「いい加減にしなさい。ユウ君が困っているだろう」

「でもっ――でもっ! このまま頑張って、リリィは強くなれるのですか!?」

「っ――」


 少し変わったリリィの声色に、レイグが言葉を詰まらせる。


「リリィ、言われたこと、ちゃんとやりました! でも、強くなれないですっ……ずっと、ずっと半人前のままですっ!」


明るく無邪気な第一印象から離れた、悲壮感のこもった声。


「強くなりたいですっ! リリィも……お母さんみたいに、強くなりたいんですっ!!」

「…………」


 その言葉に、レイグは表情を曇らせる。

 ――どうも、ただごとじゃなさそうな雰囲気だ。

 放置して戻るのはかわいそうな気がする……


「あの……俺、人に何かを教えるってことやったことないんですけど……」


 そう俺が言うと、期待に満ちた表情でリリィが俺のことを見上げてきた。

 その分かりやすい反応に、思わず苦笑いしながら話す。


「でも、話ぐらいならききますよ。目的地まで、まだ時間があるでしょう?」

「あ……ありがとうございますっ!」


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