プロローグ
「いつになっても忘れない。あなたの顔、声、目、息遣い全て忘れることは無い」
こんなくさいセリフを昼間の1時から聞かされる僕は何を思えばいいのか。
面倒くさくてサボった今日の学校。昼間の1時、家でご飯を食べながら、ぼーっと見てたテレビで流れていたドラマのワンシーン。恋人おろか、好きな人すら出来ない僕にとって恐らく1年間は無縁なシーンだろう。学校が面倒くさくて、退屈で休んだはずの今日だが学校にいるより退屈な時間を過ごしているかもしれない。
さっきも言ったけど、僕は恋人も好きな人もいない。高校生である以上勿論恋人が居て欲しいとは思う。春は彼女と一緒に花見や散歩をしたり、夏はひんやり冷たいかき氷を分け合ったり、お祭りで一緒に浴衣を着たり。秋は紅葉を見に行ったり、旅行に行ったり、冬は聖なる夜や新しい年の幕開けを一緒に過ごしたり。沢山リア充したいと思う。こんな綺麗事ばかりを並べたが、自分で言うのもなんだが年頃の高校生。セックスなどもしたいと思ってしまう。目を見つめ、体を寄せ合い、手を繋ぎ、お互いを求め合うような甘いキス。男子高校生ならしてみたいと思うのは当然だろう。不純と言われようが、人間の三大欲求の中の1つ。皆がこの欲求を表面に出さないだけで、全員が間違いなく思っていることだろう。それなのに、変態だのキモイだの、僕からすれば君たちはそういう気持ちがないのかい?と問いたい。
ぼーっとしてたのに、そんなことを考えながら見ていたドラマの感動シーン、僕から見ればくだらないシーンは1分足らずでエンディングを迎えていた。「もう一度会ったりはしないのかよ」と心の中で呟いた。そんなことを思いながら昼ご飯の湯気も見えない程熱いカップラーメンを、僕はすすった。もちろん熱くて口の中を火傷しそうになった。そんな色んな気持ちがまざり八つ当たりのようにテレビのリモコンを思い切り取り、電源ボタンを押しテレビを消し、手元にあったスマホを手に取った。
何か出会いでも無いかなと思いアプリストアを開いた。こんなアプリに頼ろうとしてる時点で負け犬なのでは?そんな気持ちを押し殺しながら、僕は無音の部屋に響く爪で画面をタップする音をBGMに、僕はアプリを探した。まるで未成年でお酒を買いに来たかのような、悪いことをしている気持ちになった。そんな気持ちの中検索でヒットし、1番上に出てきたアプリを僕はダウンロードした。
これが僕の高校生活最初で最後の恋の始まりだった。