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気怠げな木村さんとちょっぴりエッチな水島さん  作者: 九条 結弦


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第21話 木村さんは空振る

 私主催の王様ゲームは初回の命令でぶっ飛ばし過ぎたけれど、その後1時間ぐらい続いた。

 命令の内容は色々あったけれど、初回の命令以外は基本的には暴走しすぎないように配慮もしてみた。

 雫が春海に宿題の分からない部分を教えてもらったり、結衣が私になでなでのおかわりを要求してきたり、私が春海とポッキーゲームをして唇がくっつきそうになったら張り倒されたり(理不尽)等色々あったけれど、結構ワクワクドキドキしましたわん。

 最初は怪訝そうな面持ちで始まったゲームだけど、最終的にはみんな笑っていたので良かった良かったと思う。

 ……初めてやるゲームだったから加減が分からなかったけれど、いつもの木村楓っぽく(・・・・・・・・・・)振る舞えてたんじゃないかなとは思う。

 昨日はいじめのことを雫に打ち明けて、春海や結衣とももう一度向き合うことになった。

 色々と蓋をして見ないようにしていたこととか、なんとなく向き合うのを避けていた気持ちとかと改めて向かい合って良かったとは思うけれど、

 ……あれ、普段の私ってどんなだ?

 と、昨日の夜(正確には夜お布団に入った時)から分からなくなっちゃっていた。

 布団を頭まですっぽり被って寝ようとしても、ついつい考えがそっちに行ってしまって中々寝付けず、今日は寝不足気味だ。ネムネムモードだ。グーッと一杯やりたい気分だ。……グーッとって何を一杯するの? オレンジジュース? お茶? シュワシュワは苦手なので、ビールとかは大人になっても飲めんじゃろうしのう。うむ、正解が分からぬ。家に帰ったら何かサッパリとした物を飲もう。果たしてゴチャゴチャした頭の中身がじゅーちゅと一緒に綺麗にお腹の中にストンと落ち着けば良いけれど、我ながら高望みしてるなあとしみじみ思う。

  ――昔の自分に向き合ったら、今の自分がどっちを向いていたのか分からなくなってしまった。

 自分が向いている方向って一体どっちだったのだろう?

 それを教えてくれる方位磁針があれば、良いのになあと、しみじみんと思うのである。

 まあでも私の場合、方角が分かってもそっちが本当に正しい方角なのか自信が持てないだろうから、宝の持ち腐れで終わりそうだけど。

 私って学校でどんなだっけ? たしかこんなキャラだったよね?

 そんな風に思ってたら昨日テレビで見たドラマの王様ゲームを思いついて、私ならこんなこと言い出すかなっと思って初回からアクセルベタ踏みでエロい命令をかましてしまった。

 3人のことは大切な友達で、沢山の気持ちをもらった。

 だから、なるべくいじめのことを引きずっていないように見えるよう、普段通りの私で行こうと意気込んでみた。……あと、雫に選んでもらった勝負下着を着て、行くぜ楓!と気合を入れてみたのだけれど、私は普段通りやれていたのだろうか?

 いつも通りの木村楓でいられたのだろうか?

 そんなことばかり考えていたせいなのか、ゲームが終わってから春海と結衣に別れ際、


『無理すんなよ』『無理しちゃダメだよ』


 と肩を叩かれて走り去られてしまった。

 色々と見抜かれている。

 うわー、ってなったのと、はずいなーってなった。

 ありがてーぜって思うけど、申し訳ねーぜって思ったりもする。

 嬉しさで心がぽかぽかするのと、気を遣わせてしまって本末転倒ではないのかしらとも思ったりもして、中々上手くいかんものである。

 上手くはいかないものだけれども、そもそも友達という存在がいなければ存在し得ない悩みでもある訳で、そんな悩みに悩める自分は結構贅沢者なんだろうなあと思う。

 まあ、総括してみると――私は恵まれてんだなぁ。

 そんなことを考えていたらお顔がほんのり熱を持ったけど、なるべく意識しないようにした。だけど、側にいた雫がニコニコ笑っていたので、まあきっと悪いことではないし、きっと間違ってはいないことは確かだろう。

 とりあえず私もニッコリとびっきりのスマイルをお返ししてみた。赤くなった。かわええのう。


 閑話休題。

 王様ゲームも終わって、春海は家の手伝いに、結衣は本日は部活は休みとのことだがバイトがあるとのことでバイバイしてしまった。

 そんな訳で、残された私と雫は自転車をチリンチリン(ほとんど私だけど)しながら下校中。

 昨日は雨降りだったけれど、今日は曇り寄りの晴れという天気で、昨日の雨の影響なのかかすかに空気が湿り気を帯びていて、自転車を漕いでいると自然とそんな空気が自然と肺の中に入り込んでいくのを感じる。

 雨降りの後とか、その翌日ぐらいに感じるこういう空気は割りとお好きな方である。

 上手く言葉には言い表せないけれど、なんかい感じで、乾燥したカピカピの空気を吸っているよりは喉が潤う。

 中間テストも終わり、もうしばらくしたら酸っぱい梅の雨が降ってくる季節になってくるから、潤いマシマシの季節がやってくるだろう。

 マシマシというかムシムシジメジメという言葉が適切かもしれないけれど……。

 というか梅の雨って、実際に降ってきたら梅干し食べ放題じゃないか。

 梅干し食べるとお口がきゅーってタコさん風に変化するけども、あのすっぱさが良いのである。

 でもすっぱすぎるのは苦手なので、蜂蜜を足して梅蜜雨と改名して頂ければありがたやあという感じだなあ。

 梅と蜂蜜が同時に降ってくる雨か……。

 雫が慌てふためく様子が目に浮かんでふふっとなった。

 そんなたわいのないことばかりに気を取られていると、唐突に私の前方を走行していた雫が徐々に速度を落として、私の右隣を並走する形になった。

 今走っている道は道幅が広い割に交通量が少ない場所なので、今の所は走ってる車もいないが、自転車の並走はあれだ、罰金!という奴をポリスに支払う義務が発生するのではなかったかと思い至り、ゆっくりと私も速度を落として停車する。


「雫、どうしたの?」


 今日は色々な自問自答が頭の中やら心の中をぐるりんぐるりんと風車のように回っていて、つい自分一人の世界に浸かりがちだったのと、縦列状態で自転車で走っている都合上、あまり会話を挟む余地がなかったので、そっけない態度になってしまったのだろうか。

 春海や結衣でさえ、私が王様ゲームで空振りしていたのに気づいていたのだから、雫も同様かもしれない。

 もしそうなら、ありがたいやら嬉しいやらだけど、ちゃんとお礼を言おうと思っていると、雫は自転車に跨ったまま振り向き、何故か顔を真っ赤に染め上げて、なにやら緊張で若干引き攣った頬を根性で動かして口を開き、



「楓!」


「はい?」


「明日楓のお家にお泊まりに行ってもいい!?」


「……はい?」


 私のうちにお泊まりをご所望してきたのであった。

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