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34話

 アルフレッドとの戦いが終わった後、アキラは実技棟の屋上に来ていた。

 ここに来るまでにいくつかの問題もあった上に無事屋上に来たことで問題も発生しているだろうがアキラにとっては知ったことではなかった。


「……」


 屋上に備え付けられたベンチに腰掛けたアキラは何をするでもなく空を見上げていた。

 思い返すのは先程の試合。

 自分はどうしていたら良かったのか……

 敗因は分かっている。

 解決策も分かっている。

 だが、それはすぐには解決しない問題だ。

 まず1つに戦い方の問題だろう。相手と同じ魔法を使う以上相手の方が魔法を使いこなしている場合、どうしても後手に回り続ける事になる。

 最も、これに関してはアルフレッドが異常なだけで、後手に回り続ける羽目になるような相手はそうそういないだろう。

 四峰祭本戦が始まってもアキラの目算ではアルフレッド以外には居ないだろう。

 そして何より、単純な火力の押し負けが大きいかった。

 戦い方の問題は何とかなるだろうが、火力に関しては一朝一夕ではどうにもならない。

 火力に関しては個人の魔力保有量や一度に放出できる量が決まっているからだ。

 放出量に関しては訓練次第で伸びないこともないが、それでも大した伸び幅は無いため、実質生まれつきの資質と言える。

 そのため、魔法使い(レプリカント)はレプリカの使用熟練度を上げてレプリカの内部術式調整機能により出力上昇を図るのだ。

 だが、アキラのレプリカにはその機能は無いに等しかった。

 アキラのレプリカの能力は対戦相手の魔法を真似する魔法であるが、出力に関しても相手の出力より少し上の出力を真似するレプリカだからである。

 勿論、上限は存在する。それは、アキラ自身の出力上限である。

 今回の場合、アルフレッドの出力がアキラ自身の出力上限を上回っていた。


(初めて、負けたわね)


 これからどうすればいいのかは分かっているが、やる気が全く起きなかった。


「……はぁ」


 出てくるのは溜息ばかり、沈んでいく夕陽がアキラの心情を表しいるようにも錯覚してしまう。


「大きな溜息だな」


 そんな折、突如後ろからかかった声に振り向くと、そこに立っていたのは、夜鳥葛だった。


「──笑いに来たの?」

「笑ってほしいのか?」


 葛はアキラの横に腰を下ろし話を続ける。


「お前が急に緊急治療室から居なくなったから一部で大騒ぎだ。全く面倒くさい」

「……そう。そんなレベルか」


 苦笑いしながら他人事のように話すアキラを見て葛は笑う。


「迷惑をかけておいて他人事とは良い御身分だ。流石は魔王様だ」

「なんでここにいるの?」

「うるせぇ下手くそ。治療室にかけた幻術も人払いの結界も中途半端。お前らしくもない。どうせなら完治するまで治療受けておけば良かっただろうが」

「確かにね。考えつかなかったわ」

「どうせ負けたのが恥ずかしくて逃げ出したいとかそんな所か? 変な所は人並だな」

「そうか……そうね。確かに逃げね」

「……」

「ふふっ。これが逃げたいって感情なのね」

「あぁ? 今更なに言ってる」

「貴方は今まで私に負けてきて同じ感情になったことないの?」

「喧嘩売ってんのか?」

「無いの?」


 怒り混じりの表情を浮かべる葛に対し見つめ返すアキラの視線は真っ直ぐだった。

 その視線を受けて葛は怒りを鎮める。


「ねぇよ。一度も」

「本当に?」

「ウソ言ったってしょうがねぇだろ」

「……なんで?」

「変なこと聞くな。お前は私の立場わかるだろ?」

「知ってるけど、それが何?」

「はっ、お嬢様は想像力が足りないな」

「……何よ?」


 ムッと表情を歪めたアキラを意に介さず葛は言葉を続ける。


「私は逃げたくても逃げられない。逃げたら終わりだ。夜鳥の召使いにでも降ろされちまう。そんな選択肢最初からねぇよ。まぁ、思ったこともないけどな」

「……そう」

「まっ、逃げたいなら逃げればいいさ。許される立場なんだろ?」

「そう、思う?」

「そうだから悩んでるんだろ?」

「……確かに、そうね。もう一つ、訊いても?」

「なんだ?」

「貴女はどうして私に挑み続けたの? 魔法から逃げないまでも私と戦わない選択肢はあったでしょう?」

「ねぇよ。下らない事聞くなバカ」

「バ──」

「どうせ挑むなら強いやつだ。そして、私にとってはお前だった。それだけの話だ。何もおかしいことないだろ?」

「……嫌にならなかったの?」

「何がだよ」

「私に負け続けてよ」

「なるに決まってんだろ。それが何だ? 負けたら悔しいし、自分はもっと出来るはずだって後悔もあるさ。それでも、お前と戦うのは楽しかったしな。それまでに努力するのも嫌いじゃなかった。辛かったけどな」

「……」

「でも一番嫌なのはだ。気に食わなかったのは、戦いもしないやつが、お前と戦うのすら諦めたアホ共が、無駄な足掻きをしてると私を嗤うことだ。お前がこのまま逃げるのもいいが、そっち側になるのか?」

「そうね……」

「……」


 葛の問いかけに、一言呟いたアキラを葛は無言で見る。続く言葉を待ち続けた。


「私は負けたけど。貴女はそれでも私を目標にしてくれるの?」

「勝っただろ」

「記録の上ではね。分かってるでしょ?」

「反則は記録されてない」

「……それはね。正直反則するしか勝てなかったから。反則を取られるような真似はしないわ」

「相手と違う魔法で尚且、目に見えない魔法でレプリカを破壊するか、まぁ、負けることはないな。器用に違反検知機に引っかからないように魔法を加工して、よくやるよ、実際。ちなみに、それだけか?」

「黒井さんの魔法も使ったわね。そうじゃなかったら今ごろ骨も残ってないわ」

「まぁ、お前とアルフレッド先輩二人分のマリョクが襲ってくればそうなるわな。二つは私もわからなかった」

「そういう事は得意なのよ」

「しかし、まぁ、そうなるとますます、相手を褒めるしかないだろ」

「アルフレッドさんを?」

「あぁ、お前が初めて反則を使わなきゃ勝てないほどの相手だ。褒めるしかないだろ? それにバレないように反則を使うのも実力だと、私は思うよ」

「……」

「私の教育係がよく言ってたよ。結果が全てだってな。だから、周りがなんと言おうがお前の勝ちだよ」

「……そうね」


 葛の言葉に何か吹っ切れたような様子のアキラを見て葛は立ち上がりながら言葉を投げる


「まぁ、認められないなら本戦で今度はちゃんと勝つんだな」

「そうね。そうするわ」

「私はもう行く。九条先生には私から連絡しといてやる」

「ありがとう」


 葛はその言葉に悪態を返し、屋上から出ていった。

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