13話
アキラたちがファミレスで話してる頃、知多学園の生徒会室に複数の男女が集まっていた。
その人物達は全て知多学園の生徒であった。知多学園の最高学年三年生の内、四峰祭参加資格を有する五人。
生徒会長『天体運行』遠野 幸信
『雷帝』アルフレッド・ヨハン・フリッシュ
『殺人人形』エレナ・クルス
『ゴルゴーン』ローザ・ステイトン
副生徒会長 毒島 佐和
生徒会長用の本革の椅子に深く座り込んだ痩せぎすの男子生徒。遠野幸信が重々しく口を開く。
「君達。またこの時期だ。夏休みだ。合宿だ」
「合宿と言うほど常日頃時間を共にするわけではありませんが」
幸信の言葉に彼の隣に立った青み掛かった黒い長髪の少女、毒島佐和が言葉を返す。
「そこはどうでもいい。重要な事じゃない。問題は合宿の最終日に何をやるかということだ」
「えっ、待って。そう言うのって生徒会で話すことだよね!? なんでワタシ達呼ばれてるの? 関係なくない?」
幸信の話した内容に生徒会長用の机の前に置かれた応接セットのソファーに腰掛けたそばかすが特徴的な明るい髪色の少女が言葉を返す。
「エレナそう言うな。お前だって合宿参加者なんだ。関係ないは言い過ぎだ」
「う、ご、ごめんなさい」
「まぁ。エレナ気持ちもわかる。俺も逆の立場だったらそう言ってるだろうしな。でも、そこはそれ。俺を助けてくれ」
「サワ。翻訳」
エレナの横に座った整えられた金髪の男子。アルフレッドが佐和に言葉を投げる。
「普段、生徒会のあまり無い仕事を他の役員に押し付けてる手前、生徒会の仕事でもないことを期日が近づいてきた今更役員に押し付けられない。なので、特訓参加者の皆さんの力をお貸し下さい。おおよそそんなところでしょう」
「ユキノブ。言うことは?」
「ごめーん! 力貸してぇ! 俺も先輩達みたいに合宿最終日に皆になにか仕掛けたいの!!」
その言葉にその場の反応は様々だ。意識して無表情に務める者。苦笑する者。溜息をつくもの。我関せずと出されたお茶請けを食べ続けるもの。
「それでやりたい案はなにかあるのか」
「実はまだない。去年と同じだと二年の奴らは覚えてるだろうからな」
「だろうな。去年はまぁ、酷かった。記憶から消えないだろう」
言葉こそ酷いが思い出しながら語る口調は楽しげであった。
「あぁー。あれは? 鳳の代表呼んで練習試合するの」
「今から声をかけても首を立てには振らないかと。去年はかなり前から話を投げて調整していたらしいですから」
「この時期に試合をするのはデメリットも多いからな。調子の良し悪しが図れるし、この一年かけて磨き上げた技を見られるというのは大きい。正直俺個人としては反対だな」
「わざと代表メンバーじゃない生徒を出したり、去年は盤外戦も行われてらしい。それに他の学園との練習試合なら先生の協力も必要になるだろうからそこまで大きいことはするつもりはないんだ」
「む、むずかしいね」
「日本には夏に行われる伝統的行事がいくつかあったな?」
「あぁ、花火大会とかだ」
「他には肝試しでしょうか?」
「ア、ローザアレ知ってマース! ショウロウナガシ!」
今までお茶請けを食べていたローザがやっと会話に入る。
「また凄いところが出てきたなぁ。でも、今回は見送りだ」
「ブー。ザンネンデース」
「でも方向性は良いぞ! その調子でばんばん頼む!」
「まかせてクダサーイ!」
否定してもフォローは忘れない。ローザは一度機嫌を損ねると治るまで長いのである。
「あっ、皆でバーベキューとかどうかな?」
「有りだ!」
「……流しソーメン」
「アルフがやりたいだけだな? 候補には採用だ」
「スイカクラッシュ!」
「海じゃないぞー」
「ブー」
「合宿終わったらこの5人で海に行こう。そこでやろうな」
「イエス!」
勝手に夏休み中の予定が決められたことには誰も文句を言わずにやりたい事候補が連ねられていく。
幸信の横からアルフレッド達の後ろに移動していた佐和がホワイトボードに挙げられた候補を書き上げていた。
議論もだいぶ白熱しやりたい事候補もかなりの数が上がっていた。
「よし。皆のおかげでだいぶ候補も出たし、ここからやることを絞っていくぞ」
「オー!」
「佐和。お茶請けの追加頼む」
「はいはい」
議論の後半いつになくローザが話に参加してくれていると関心していた幸信であったがどうやらお茶請けを食べ尽くしていたらしい。
「ローザ、おかわりは要求していいからな」
「ヤッター! ありがとデース」
「で、この中から出来そうなこと」
「バーベキューや肝試し。花火大会は先生の許可が必要になりますね」
「エレナ、バーベキューは焼き肉に変更してもいい?」
「うん。いいよー」
「よし。最終日は皆で焼肉屋にいくか。流しそうめんは最終日近くの昼食で購買部にお願いしよう」
「なんだ。結局するのか」
「したいんだろ」
「密かな楽しみだった」
「やったな。叶ったぞ」
「……」
「……」
「ヨシ!」
「よし!」
ぐっと親指を上げ合う二人を横目に佐和が話を戻す。
「花火大会は微妙ですけど花火なら申請したら許可が下りそうですね。花火は購買部に言えば用意してくれるでしょうし」
「お、花火もやるか。肝試しは準備が大変そうだし、ビビらないやつの方が多そうだし今回は見送りだ」
「結局、これだけ出して採用は三つですか」
「まぁ、実際のとこ合宿のスケジュールもあるし、確実にやりたい事が出来るかは分からんしなぁ。まぁ、この三つくらいなら確実にできる」
「ユキノブ。まだスケジュールを把握してないのか?」
「まだ何も聞いてない。アルフは?」
「お前が知らないなら俺なんてなおさら知らんさ」
「そうか」
「去年とあまり変わりなさそうですよ」
「サワさん知ってるの?」
「職員室に行った時にスケジュール表をちらっと見ました」
「オォー! オダイリサマ!」
「悪代官な。佐和もピースで返さない」
「ふむ。となると、確かに流しそうめんはありかもしれん」
「去年は午前中体力作り地獄だったもんね。辛かったー」
「佐和の話だと今年もだ。大変だなエレナ」
「ワタシ帰りたいー!」
「安心しろ。皆一緒に地獄巡りだ」
「な、なら良いかな?」
「俺は生徒会長権限で逃げるがな!」
「そんなことできるの!」
「ズルー! ヒキョウモノー!」
「落ち着いてください。二人とも生徒会長にそんな権限ありません。去年の生徒会長もみんなと同じスケジュールこなしていたでしょう?」
「佐和。ネタばらしが早い」
「そんなくだらないこと早くバラして下さい」
「冷たい」
「話も纏まったのなら。俺は帰るぞ」
話も纏まりこれ以上は大きな発展もないだろうとアルフレッドは立ち上がり生徒会室から出ていこうとする。
「あぁ、待ってくれ」
「まだ何かあったのか?」
「今日は生徒会の仕事もなくてさ。折角相談にも乗ってもらったし何か食べに行かないか? あと、生徒会室の鍵を閉める時間だけくれば何か奢るけど」
「イクー!」
「……それは俺だけじゃなくてこの場の全員か?」
「勿論」
「分かった。それならもう少し待ってよう」
「よし。じゃ先に玄関で待っててくれ! 片付けたら鍵を職員室に返して来る」
「ワタシ達も手伝うよ」
幸信の言葉にエレナが自分たちが飲んでいたティーカップなどを運び始める。
この五人で生徒会室を利用して話をするのは今回が初めてではなかった。そのため話が終わったあとの片付けの担当がなんとなく決まっていたのだ。
そうして片付け終わった生徒会室に鍵をかけ、幸信は職員室に、アルフレッド達は昇降口に向かうのだった。




