第45話 かぐやとみこと
「みこと、電車で帰る?」
「うん!水族館も見せてよ!」
「じゃあ、俺も仕事たまってるから帰るわ。」
ひじりが言った。
「さみしいやーん。」
「かなえは、自分の仕事終わらせてきたんだろ?」
「そうなんよ。さくさくーっとな。」
「終わらせたら、また戻ってくるから。」
「そうか。じゃあ、またあとでな。」
ひじりも行ってしまった。
「じゃあ、戻ろうか。」
電車に乗った。
ガタンゴトーン、ガタンゴトーン…!
ゆれが気持ちよかったのか、かぐやとみことは寝てしまった。
二人ともこっくり、こっくりしている。
「かわええなぁ。」
ふあああ~。
かなえもあくびをした。
『ムーンの砂浜前駅』
に着いても、二人は寝ているので、
「ムーンお願いや。わてはみことをおぶるさかい、かぐやお願いしてもいいか?」
ムーンは、ぐぐぐぐーんと大きくなって、かぐやを載せた。
「とりあえず、あの、赤い屋根に運んだらええか?」
「ワン!」
「ふ~。ムーンわてらも、昼ねしよか。」
赤い屋根のお家に着くと、三人と一匹は、すーすー寝息をたてて寝てしまった。
しばらくすると、かぐやが、
「あれ?ねちゃった。図鑑でも読んで待ってましょう。」
と、本を読んでいると、
「むにゃむにゃ。あれ、かぐや。おはよー。」
みことが目をさました。
「何読んでるの?」
「地球の図鑑だよ。」
「見せて見せて。わー。さっき見たお魚さんがいっぱい載ってる。」
「こんなのもあるよ。お花の図鑑とか、車の本とか、見てもいいよ。」
「地球っていろんなものがあるんだねー。」
「ふあ~。お、本読んでるんか。偉いな~。」
かなえが起きて来た。
「かなえ様、僕、水族館に行ってみたい!」
「そやな、いくか。かぐや案内してくれるか?」
「はい。」
「ワン!」
「こっちです。」
かなえの右にはみこと、左にはかぐやがいる。
早く早く!と言わんばかりに手を引っ張る二人に、
「ちょっと、待って-な。」
「あ、あそこの洞窟か?じゃあ競争や!!」
「あ、洞窟は滑るから気をつけてください!!」
つるーん。すってーん。
「あはは。転んでしもたわ。みことは気をつけるんやで。」
「おー!」
「すごーい。」
石灰石の棚には、いつも通りお魚がいた。
「あ、これ、図鑑に載ってた!サンマっていう魚ですよね。」
「ぷらんくとん、と、いかさんを餌にしているらしいですわ。」
えっへん!とかぐやが言った。
「すごーいお魚さんが、たくさんいる!!」
窓越しにキラキラ魚が輝いていた。
「よー、こんなん創ったな~。すごいわ~。」
「グー…。」
「まずい、おなかすいてしまったわ。」
「さんま美味しかったですよ。」
「さんま、食ったんか。じゃあ、四尾もらってくわな。イカももらってくわ。わて、花より団子みたいやなー。」
みことは、もう少しここにいたかったが、お腹もすいたので、みんなと赤い屋根の家に戻ることにした。
かなえがキッチンに立つと、冷蔵庫を開けた。
「すごいやん。食材たくさんやん。」
トマトとイカを炒めて、サンマを焼いて、ホットケーキも作った。
「かなえ様、お料理上手!」
「いいなぁ。食材いっぱいあって!」
「収穫していきますか?」
「やりたい!」
口のまわりを真っ赤にしたみことが答えた。
「じゃあ、食べ終わったら収穫手伝って。」
リビングには気持ちいい風が流れていた。




