第43話 となり町とお客さん
そういえば、俺、電車でここに来たんだっけ。
「ひじりさん、となりの駅ってどうなってるんですか?」
「え?知らないよ。すぐるくんが知らないなら、見えるところまでしかないんじゃないの?」
「え?そうなんですか!?」
「うん。」
今度、かぐやにも確認しよう。
「そういえば、あの赤い電車、一両しかないな…。」
「すぐる~!連れてきたよ~!!」
「おー!!いい風吹いとるな~!」
「かぐやの世界綺麗だね。」
向こうのほうから、関西弁のお姉さんと、かぐやと同じくらいの男の子が歩いてきた。
「こんにちわ。初めまして。」
「こんにちわ。かなえとゆうんや。」
「僕は、みことと言います。」
「よ!会議ぶりだな。」
「ってことは、ひじりさん、お二人とも神様なんですか?」
「そうや。」
「そうだよ。」
「わては武神の神、かなえ。武神といっても地球で言うスポーツやな、スポーツ。」
「僕はL-111023の世界の神様。まだ新米で、かぐやと同い年なんだ。」
「よろしゅうに。」
「よろしくお願いします。」
「かぐや、この星の名前は?」
「あ、はい。夢の世界と登録してしまいました。」
てへっと舌を出している。
「そ、そうなんだ。名前、登録できたんだね。」
「俺、はんこ押しちゃった。」
「え?ひじりさんが?」
「そう。」
ひじりさんの承認でいいのか。
「俺、中神さんだから。小神と上神の真ん中。上神もはんこ押してたよ。」
そうなんだ。
「ワンワン!」
「あ、そうそう。かぐや。電車って、どこかに繋がってたりするの?」
「いいえ。すぐるを呼ぶためだけに作っちゃいました。」
「じゃあ、となり町に電車で行ってみようと思うんだけど、いいかな。」
「電車って何ですか?」
みことが尋ねた。
「今から行ってみる?」
「はい。」
俺たちは駅に向かった。
「じゃあ電車に乗ろうか。動けって念じれば動くかな?」
「はい。すぐるさんが念じれば、動きますよ。」
「ひゃっほー。」
「ワンワン。」
「みんな乗ったかな?じゃあ、動かすよ!」
ガタンゴトーン、ガタンゴトーン…!!
「「わー!!うごいた!」」
かぐやとみことは大喜びしていた。
「ワン!」
「風がきもちいいねんな。」
かなえが窓を開けた。
「この辺はビーチと岩なんやなー。水面が青く澄んで、キラキラしてて絶景やわ~。泳ぎたくなる。」
「いいなぁ。ぼくも海欲しいなぁ。」
みことが言った。
「かぐや、海ってあげられるの?」
「はい。もちろんです!」
「え?くれるの?」
「ああ。海の切り取り方なんて分からないから、かぐやにお任せだけどな。」
「やったー!!」
みことが大喜びしていた。
「すぐる、このあたりの茶色っぽい岩は、みことがかなえ様に頼んで貰ってくれたものなんですよ。」
「じゃあなおさら、好きなだけ切り取って欲しいな。かなえさん、みことくんありがとう。」
「いやいや、えーんやって。これだけ綺麗な世界見れるのも久しぶりやし。」
「秋葉原もいい町だろ?」
「ひじりが言うように、秋葉原とはまた違った雰囲気やな。」
「かなえさん、秋葉原来たことあるの?」
「ああ。大阪のたこやきが好きなんけど、東京も好きや。来年オリンピックやし。いろんな星や世界があるけど、まぁ地球はなんだかんだ安定感があるわな。」
「そうなんだ。」
そんなこんなで、となり町まで着いた。
「おー!海の目の前!ほな、泳ぎに行くで!!みこと!いくで!」
「かなえさまー!待って~」
着いて早々泳ぎに行ってしまった。
何もない駅だな。
そう思っていると、
「となり町の感想はどう?」
「何もないですね。」
「そんなことないですわ。」
海をはさんで向こう側には、野原が広がり、山までの景色が広がっていた。
「あ、ちょうちょ!あれ、たんぽぽ?」
かぐやが嬉しそうにしていた。
「何もないが、何もないからこそ、君の心が反映されてるよね。」
と、ひじりが言った。
「ん?どういうことですか?」
「綺麗な景色じゃないかってことだよ。」
あまり良く分からないが、みんなが喜んでるからいいか。と思うすぐるだった。




