第35話 茅葺き屋根の夫婦
「見事な田んぼですね!おじいさん。」
「そうだな、ばあさん。」
気付けば老夫婦がそこにいた。
「初めまして。すぐると言います。」
「あなたが、すぐるさんですね。宜しくお願いします。」
二人と挨拶した。
「すぐるくん、二人の移住先に案内してくれるかな。」
ひじりさんが言った。
「見事な畑ですね。」
老夫婦は、広い畑にも驚いていた。
「まだ、住人はこのメンバーだけなんですよ。」
俺は、老夫婦に説明した。
「そうなんか。」
おじいさんが答えた。
「あそこに見える茅葺き屋根のお屋敷がお住まいになります。」
「ほーっ。こんな立派な屋敷に住めるのか!婆さん、嬉しいな。」
「本当ですね、おじいさん。」
食べ物なんかは自由にしていいことなど、一通り説明をして、水族館のほうも案内した。
「おや、魚が取り放題だね。」
おばあさんがまたまたビックリしていた。
「ビックリしすぎて、こりゃ、また寿命が縮んでしまうかもな。カッカッカ!」
おじいさんも笑っている。
「それなんだが、すぐるくん、おじいさんとおばあさん、若返らせてあげようと思うんだ。」
ひじりさんが言った。
「そんなことも出来るんですか!」
「ああ。すぐるくんが念じてくれればできるはずだよ。」
「おじいさん、おばあさん、何歳くらいになりたいですか?」
「それじゃあ、欲をかいて、二十歳くらいかな。畑仕事もはかどるじゃろうに。」
「わかりました。」
すぐるは目をつむって、若返るように念じた。
目を開くと、老夫婦が光に包まれ、若夫婦になっていた。
「三郎さん!」
「すみれ!」
二人は大喜びだった。
「また、あなたを愛しますわ。」
「俺もだ!すみれ!」
その二人を俺たちは温かく見守った。
「ちなみに、他に欲しいものはありますか?」
俺は、若夫婦に聞いた。
「そうですね。布だったり、木材だったりでしょうか。」
「じゃあ、最初の材料は僕がプレゼントするよ。」
えい!とひじりさんが、用意してくれた。
「今後の材料のために、林と山と、竹、綿なんかもいいかもね。」
と、ひじりさんが、ウインクした。
「わかりました!」
また、目をつむって念じると、辺りが眩しく光って、山や、林ができた。
動物なんかも、うさぎ、しか、いのししを思い浮かべておいた。
「ひじりさん、ひつじとか、牛、ニワトリなんかも必要かな。」
「そうだな。赤い屋根のお家の側に家畜小屋も作っておこう。」
「動物増えるんですか?賑やかになって、嬉しいです。」
かぐやも嬉しそうだ。
「何か困ったら、赤い屋根のお家へ来て下さい。」
そう、若夫婦に告げ、赤い屋根のお家に戻った。




