ラッキースケベなんか必要ねぇんだよ! 1
日中こそ陽気が地上を満たしていたが、夜になるとまだまだ冷え込む時分だ。竃にはオーブリーさんが昼に割っていた薪が僅かにくべられており、小さな火が屋内を温かく照らしていた。
オーブリーさんの家には窓らしいものはなく、土壁と木の柱で成り立っている。RPGでよく見る赤い煉瓦と丁寧に加工された木材から成り立つ建築ではなく、どちらかというと日本の古民家のイメージに近いだろうか。オーブリーさんが土間で調理を進めており、俺はと言うとさっきから正座したまま貧乏ゆすりを続けていた。
理由は言うまでもない。これからプラムさんが来る。
「ははは、勇者様も初心ですな。一緒に夕飯を摂るというだけでしょうに」
火かき棒で竃の温度を調節していたオーブリーさんが振り向き、居間にいる俺へと笑いかけてくる。熾されている火の上では青銅製の鍋が熱されており、蓋との隙間からは白い湯気がときたま零れては天井に昇っていく。
「いや、やっぱりその……あれだけの美少女ってなるとやっぱり落ち着かないですよ」
決して女性経験が乏しいから、そわそわしている訳ではないのだと言外に虚勢は張ってみたものの、さすがに年季が違う。オーブリーさんは俺の薄っぺらい見栄など見抜いた上で、微笑みを絶やさなかった。くっ……こういう時はアフロが恋しい!ツッコんでもらってさっさとオチをつけたい!
ぶっちゃけた話、同年代の少女が気兼ねなく付き合ってくれるというだけで、彼女いない歴=年齢の俺としてはたまらなく嬉しいのである。ましてそれがとてつもない美少女で、心優しい子となってくると異性として意識しないはずがない。
最もこれが恋心なのかと言われれば微妙なところだ。好みの違いはあれど、美少女を見ればみんなかわいいとは認識するだろうし、自分と親しく接してくれる相手であれば、複雑な事情が無ければ誰だって悪感情はまず抱くまい。
いわゆる気になる子ってやつ……あれ、やっぱり恋じゃね?
「ごめん下さい」
天井に上っていく湯気を眺めながら悶々としていると、ついに玄関の向こうから澄んだソプラノボイスが聞こえてきた。いうまでもなく、プラムさんの声である。俺はびくりと肩を強張らせた。
「やぁ、よく来たね。プラムちゃん」
「いえ、こちらこそお邪魔します」
オーブリーさんに招き入れられて、プラムさんは一礼して屋内へと入ってくる。手には大きめのバケットが下げられており、彼女はそれを台所の一角に置いた。恐らくはパンケーキの材料が入っているのだろう。
そこでふとプラムさんと目が合った。はにかんだように彼女は微笑み、俺は余計に気恥ずかしくなって目を逸らす。おかしくね?俺がヒロインだっけ?
くっ!しかし、私はグラマラスエルフ美少女とロリータドワーフ美少女とハーレムを作らねばならぬ身!恋は許されぬのです!肉欲のままに私は生きねばならぬのです!
「あ、こちらの台をお借りしますね」
「どうぞどうぞ。今のうちに生地を作って寝かせておけば良い塩梅になるでしょう」
そんな俺の桃色脳内を知る由もなく、プラムさんとオーブリーさんは地に足のついた、生活的かつ和気藹々としたやり取りを交わしていた。仮に俺の脳内を知っていたところで、彼らは同じ会話をしていた気がしてならない。俺だってそんなことを考えているヤツを見つけたら、存在しないものとして扱うだろう。
一人だけ居間に座り込んで調理風景を眺めているというのも居心地が悪かったが、俺はラノベ主人公特有の謎の家事スキルは有していない。料理男子が持て囃される昨今ではあるが、せいぜいインスタントラーメンに四等分したハムを乗せるのが俺の限界だ。手伝おうとしても俺に料理を教える手間が加わるであろうことは間違いないので、せめて邪魔にならない道を選ぶことにしたのである。知識チート?クック○ッドがあっても材料が現代と同じと思うなよ。
「イズルさんはのんびりしてて下さい。この村のお客さんですしね」
落ち着きのなさが顔に現れていたのかも知れない。プラムさんは俺にそう声をかけてくれると、持ってきたエプロンを身に着け、慣れた様子で豊かな黒髪をホーステールに結い上げた。白いうなじが後ろ髪からちらちらと姿を見せ、その健康的な色気にまた俺はドキッとさせられる。
手際よく作業を進めながらも、オーブリーさんと楽しげに話している彼女はとても家庭的な魅力にあふれていた。その様を見ていても、恩だとか義理だとかを抜きにして、心から俺を持てなそうとしてくれてるのが分かる。少なくともあまり人間好きとは言えない、俺がそう信じたくなるくらいの温かさを感じる。
居心地の悪さはすっかり忘れて、その代わりただ彼女の姿に見惚れていた。
なにJ〇JO?ストックがなくなった途端に更新ペースと文字数が目に見えて落ちている?
それは無理に更新するものだと考えるからだよ。
逆に考えるんだ。もう失踪しちゃってるんだと考えるんだ。




