#魔女集会で会いましょう
真っ二つに折れた箒を抱え、見習い魔女のシャーロットは途方に暮れていた。
町中のありとあらゆる店を当たってみたが、自信を持って直せると返事をする者は、一人として居なかったのだ。
シャーロットは重い足取りで、実りの森へと向かった。この箒は、彼女の祖母が、いつか立派な魔女になれるようにと見繕ってくれた、上等な品だった。
それなのに。悔しくて悲しくて、シャーロットはぐっと下唇を噛んだ。
初めはごく些細な物だった。服のボタンを外すだとか、筆記用具を壊すとか、ノートや本を破るという、実にくだらないイタズラだった。
「魔女なら魔法で直せば良いでしょ!」それが、いじめっ子達の決まり文句だった。シャーロットは相手にしなかった。
そんなシャーロットの態度が気に入らなかったのか、イタズラはどんどんエスカレートしていった。箒が壊されたのは、そんな矢先だった。
人間のいじめっ子が、面白がって壊したのだ。何故なら、シャーロットの何よりも大切なものだから。
変わり果てた姿の箒を抱えて泣きじゃくるシャーロットを見て高らかに笑いながら、いじめっ子達は叫んだ。「魔女なら魔法で直して見なさいよ!出来ないの?」
シャーロットは、実りの森の柔らかな土を掘り返し、そこに箒を埋めてみた。人間の本を読んだ時に見た、挿し木というやり方を思い出したのだ。
木から伸びた枝を土に埋めることで、新たな木を増やす方法だ。
箒は元々木で出来ているし、上等な箒の魔力と、この不思議な実りの森の力を使えば或いは┉┉。
長い月日が経ち、半人前でいじめられっ子だったシャーロットも、もはや立派な一人前の魔女である。
安物の箒に乗って、シャーロットは実りの森に向かっていた。
実りの森では、元は折れた箒だったとは到底思えない大きな木のバケモノが、枝のあちこちに止まった小鳥達と、くすぐったそうに笑っている。
シャーロットがしなやかに箒から降りると、“箒“だったバケモノが、唸り声を上げる。シャーロットが、自分以外の箒を持っているのが気に入らないのだ。
シャーロットが箒を差し出すと、枝のような腕で掴んだ。そして、その深い闇のような口へと放り込み、バリバリと憎しみを込めて噛み砕く。
邪魔な箒さえなくなれば、安心するので、“箒“はシャーロットに甘えるようにすり寄った。
「私の大切な“箒“、もっと面白いものを壊しにいこう」
シャーロットの言葉に、“箒“は嬉しそうに身を揺すった。枝に止まっていた小鳥達が驚いて飛び立ち、町の方へと消えていった。
忌々しい、いじめっ子達のすむ町。いじめっ子達の大切なものは、なんだってある町。
“箒“はシャーロットを枝に乗せ、町に向かって力強く歩き出した。
「思う存分壊していいのよ。大丈夫、私『直せる』から」
シャーロットが楽しそうにわらうので、“箒“も得意気に体を揺すった。