第二十五話「みつどもえ」
「……何してんだろ私」
弱音が次々と頭の中を駆けめぐり、ぼそぼそとその言葉がもれている
私はもう何もしたくない、もういっその事負けて楽になってみようかな
心をなくせば何も感じなくてすむからそっちの方がいいかも
「うあああああああああ! 違う! 違う!」
「心!? どうしたんだ!」
「スズメなんでもない、うんそう本当に」
「大丈夫なわけないだろ! お前!」
「いや! 大丈夫だって!!」
「いやいや! その目! 片方赤くなってる!」
「えっ?」
私は、洗面所に走った
そこで私は自分の目の異変に気づいた
「……嘘でしょなにこれ」
泣いたわけじゃないし、それになんで片方だけこんなんになってるのよ
「スズメどうしよう! なんかの病気!?」
「大丈夫だ心! それなんか能力の進化に伴った体の変化みたいだぞ!」
「はい? 説明をしてくれないかしら?」
「能力が本人の精神の変化に伴って何らかの変化があった時に起こる現象だ」
「滅多にあることじゃないし、忘れてたぜ」
「そうなんだ……」
「なんか変わったことあるか?」
「心の声は相変わらず聞こえるわ」
「でもいつもより多い気がする……」
「もしかして今まで聞こえなかった人間の声まで聞こえるようになったんじゃないか」
「そうかも」
「……でもそれだけなら体に変化なんて起こんないよなぁ」
……目に変化か
目に能力が宿るってことあるわよね
メデューサの魔眼てきな物なのかな? ちょっと使ってみるか
「ねぇスズメちょっとこっち向いて」
「なんだ?」
「マインドコントロール」
私は赤くなっていた右目だけを開け、スズメを見つめた
するとどうだろうスズメの目から光が消え、体も棒のようになってしまった
「思った通り、やっぱ目に力が宿ってたわね」
「それで心を操る能力か……」
「心さんただいまー」
「おかえりお使いご苦労さま」
「……スズメ固まってるけどどうしたの?」
「うわっ! 忘れてた! 解除!」
「なぁ心……俺あんな怖い能力初めて」
「ごめんってスズメ」
「俺本番まで絶対心と目を合わせないようにするって決めたからな」
「あはは本当にごめん」
「そうだ右目を隠しとこう」
「そうだな、今日はお前のことをよく知った奴らとの戦いだ気を引き締めろよ!」
「……そうね」
「辛気臭い顔しないでよー! これから楽しい戦いだよ?」
「うおっ!? 霧雨驚かすなよ!」
「さすが霧雨ね、いつも同じスタンスだわ」
「あれっ? 心ちゃん驚いてない?」
「慣れちゃったもの、それに辛気臭い顔じゃないわ後ろから来てる奴に対しての苦笑いよ」
「あれれー私もバレてる?」
「仁美その心の中で溢れてる声を消しなさい、そうじゃないと私にサプライズなんて無理よ」
「無理な話だよ、私に心ちゃんへの愛を止めることなんてできない!」
「はいはい」
「緊張感ない奴らだよ、まったくお前達は……」
「そんな緊張しても仕方いよスズメ」
「これはいずれやってくる事だったんだ」
「それが少し速まっただけさ」
「まぁ僕は勝っても負けても、僕が感じられる良好な感情がまってるから結果はどうでもいいんだけどね!」
「でも負ける気は無いよ!」
「あなたのその神経の図太さすごいと思うわ絆」
「えっ!? 心ちゃん僕のこと名前で呼んだ! 呼んだよね!」
「呼びましたけど何か?」
「心ちゃーん!」
「霧雨絆! 心ちゃんに近づくんじゃないわよ! バトル前に消すわよ!」
「ええー消されるのは困るなぁ、それじゃあ本番前にやっとく?」
「馬鹿やってんじゃないわよ、絆と仁美」
「はーぁい!」
「それと私も負ける気なんてないからね」
「そうじゃないと困るよ、それにいつも勝つ気じゃないと心ちゃんらしくないしね」
「私は心ちゃんの為なら負けれるから、今日は程々に頑張るね!」
「デビュー戦がそんなんじゃだめだよ! 仁美君!」
「うるさいわね、私の勝手でしょ!」
「僕はみんなで本気で戦って! 恨みっこ無しの凄い戦いがしたいんだけど!?」
「心ちゃんもそう思うでしょ!?」
……私は
「レディースアンドジェントルメン!」
「あっ! 始まった! ワクワクするなぁ!」
……やっぱり私はできないや
自分の心を見放すなんて馬鹿な真似は
「今回は3人のバトルロワイヤル」
「豪華なメンツでのバトルとなってますお楽しみください」
「紹介いっちゃう? してほしい? うんうんしてほしいよね!」
「このゲーム始まって以来のバーサーカー! 霧雨絆!」
「新人の恋する乙女!? 西野仁美!」
「そして最後はこの女! ノースウォッチングゲームの最強娘!」
「相澤ぁああああしいいいいいん!」
戦いの火蓋は切って落とされた
それぞれの思いを抱いて、始まるゲーム
さぁ楽しいゲームをごらんあれ