第十話「炎のボールと空気のけん玉」
「ちょっとちょっと! ぴょんぴょんしないでよ!」
「俺の能力はハイジャンプ、高く飛びその落下の勢いでお前を潰してやる」
「もー! くらえ! 空気の力!」
「おっと、そんな攻撃じゃー私にはあたりませんよ」
「おいおい宗光、俺の見せ場をとるなよっと」
京は彼らの戦っているところより少し遠くで、
炎をボールにまとわせて、霧雨に向かって投げた。
ボールはプロ野球選手が投げたスピード並の速さで霧雨に向う!
霧雨は、ぴょんぴょんしている宗光から逃げていてボールには気付かない。しめたと思っている火炎の京は心の中でボールが彼に当たる距離を数えている。
あと1m、あと数cm!
よし!動くなよ、そのままそのままだ。
カキン!とボールが体に当たった音に相応しくない音がその場に響いた。
「えっ.......」
ボールはものすごいスピードで京の方へと戻っていく、あっという間のことで彼はボールを避けられなかった。
「ふごぉ! 馬鹿な.......」
戻ってきたボールは彼の急所に当たり、彼は気絶してしまった。
「あっぶねーまさかこんなのに助けられるとはね」
「けん玉!? こんなのにあいつはやられたのか!?」
「いや、あいつは自滅だよ、自分の攻撃が戻って来るなんて思わないもんね」
何があったのか、このちょっとした時間で何が起こっていたのだろうか。
ちょっとした事だったのである。
ボールの接近に気付いた霧雨は、あえてボールに気付かないふりをして、あの場所を動かなかった。
そして、ぶつかる一歩手前でけん玉の糸を空気でコーティングし金属みたいにして力をこめて振りかぶった!
糸はボールを打ち、ボールは投げた持ち主に帰っていったのである。
「有り得ん有り得んぞ!」
「いやーなんかうまく出来ちゃったんだよね」
「当たり前だ、何たって我の武器だからな」
「けん玉の癖にね」
「そんなおかしな武器私の蹴りで壊してくれる!」
「君こそ飛んでばかりじゃん! それしか攻撃方法ないのー?」
「おいガキ能ある鷹は爪を隠すって言葉知ってるか?」
「俺がこの攻撃しかし無かったのはあいつの策があったからだ」
「だが、あいつが居なくなった今その必要はない!」
「見せてやろう私の本気!」
「話ってなによ」
「心ちゃん僕と一緒にさ、このゲームの運営やんない?」
いきなり何をいってるのかしら、こいつは?
よりによって心の声が聞こえない相手だし・・・・・・
相澤心の能力には欠点がある。
バカなやつ、何も考えていないやつ
そして心本人が恐怖した者の心の声が聞こえないのである。
こういう狂ってるやつは大体が根っからの馬鹿だから考えてる事がろくでもないことばっかなのよね。
「あんたは何でこんなこと聞くのかしら?」
「あんたとかお前って呼ばないでよ心ちゃん俺には、三石翔太郎っていう名前があるんだからさ」
「・・・・・・あんた意外と普通な名前なのね」
「心ちゃん俺のことどう思ってるの!?」
「見た目もやばいし性格もやばい、名前もスレンジャーだしやばい奴」
「ちょっと! スレンジャーって本名じゃないから!」
「で?なんで翔太郎君は私にその奇妙な提案をしてきたの?」
「俺は自由になりたいんだよ」
「このゲームは俺の親父が作ったんだ、で俺はここでこき使われ て働いてるってわけ」
「だから運営を乗っ取ってこのゲームをめちゃくちゃにしたいのさわかるかい?」
「わかったわ。でも自由になって翔太郎君はなにがしたいの?」
「このゲームを好きな様に作り替える」
「いまのつまんない戦いじゃなくて、本当の命をかけた戦いをみ
んなにさせたいんだよ!」
「心ちゃんもそう思うでしょ!?」
「狂ってるわね、私はそんなこといやよ」
「なんで!? 君はあんなに楽しそうにしてたじゃないか!」
「自分の命まで犠牲にして参加するなんて嫌だもの」
「.......つまんないよ心ちゃん」
「そりゃ私はつまらない人間だし」
「まぁいいや、心ちゃんが俺と同じ考えになったらまた声かけるよ」
「一生そんなことないと思うわね」
「じゃあ折角だし君のお友達の戦いでも一緒に見ようか」
「遠慮しとく、あんたといたら気がおかしくなりそう」
「面白い冗談だね、じゃあ今度のゲームでね!」