7話
「ただの他人の空似じゃないと思ったんだ、なぜならお前と出会った瞬間、私の全身が強ばったからな、久々に戦慄を感じたよ、そして嬉しかったんだ」
「嬉しかった…ですか?」
「ああ、嬉しかったんだ、お前を倒して、新魔王が誕生してからの2年間ずっと疑問に思ってたことがようやく解決すると思ったからだ」
「疑問って?」
「もしかしたら、元魔王のナンラは人間界を支配するつもりが無かったんじゃないかという疑問だ、ナンラは魔王として君臨するだけで、実際のところ、人間との共存を図りたかったんじゃないかと思ってな、もし、支配するつもりなら今日見たいに指定有害種を各地に送り込めばいいだろ」
「それでも、モンスターが街道に出る以上、支配するつもりはあったんじゃないですか?モンスターが出るせいで少なからず、怪我を負ったり、最低、死に至る冒険者さんだっていると思います」
「それも、理由があるんだと思う。不確実だが、私の推測では、魔王としての立場を維持するためと、魔物たちの支配を今まで通り継続するためだと思ったんだ、魔界にも、人間界と同じ社会が存在するならありえない事じゃない」
すごく、飛躍のある推理だと思いましたが、なるほど、確かにこの人はすごいと思いました。
自分の経験を元に私の思考を読み取るなんて想像出来ることじゃないことは分かりました。レーンさんは若しかすると信頼するに足りる人物なのではないかと思いました。
「では、そしたらなぜ、あなたと対峙したとき、元魔王さんは共存を提案しなかったのでしょうか、共存を求めるならそういう提案があってもおかしくないんじゃないですかね」
「それは……わからない。しかも今までも全て自分の持論だ、確証はない」
私はこの時点で、レーンさんには私を捕獲する使命などなく、逆に元魔王にお願いをしようとしているのではないかと思いました。
どれもこれも、私が元魔王だと睨んでのことでしょうが。
「……その理由をお教えしましょうか?」
レーンさんは俯いた顔をあげて私を見ました。口元は緩み、嬉しそうな表情さえ、見せそうでした。
「やはり、お前は元魔王ランナなんだな」
「そうです、正解です。そして、あなたの推理もだいたいあってます。あと、最後の理由は……」
レーンさんは私の言葉を遮るように私の肩をすごい力で掴みました。
「頼む…!この世界を救ってくれないか!」