9話
「ザードイは私の姉貴分のような存在でした。幼い頃から自分よりも他人の幸せを祝ってくれるような懐の広い女性でした。もちろん、私の周りの方たちも同じようにザードイさんを慕っていました。ですが、ザードイさんは壊滅的に頭が弱かったんですよ。いくらザードイさんがみんなに慕われるとと言っても魔王の素質に頭は必要ですからね、だからその次に慕われていた私が選ばれた訳です」
「ちょっと待て、何故そこでお前が選ばれるんだ。他にも慕われていて頭のキレる強いヤツはたくさん魔界にいるんじゃないのか?」
「それは簡単ですよ。『魔王』は称号ではないんです。『魔王』は……そうですね……こちらで言うモンスター名と同じだと思います。だから魔王は血族からしか選ばれない」
レーンさんは驚いた表情をさきほどから続けていましたが、次第に何かを企んでいるような顔つきになりました。
「ということは、今、現魔王は過去最弱に頭が弱いと言う事だな?ならまだ人類にも勝ち目があるということだよな?」
「と、思われるのが通常だと思います。しかし、問題はそこにこそあるのです」
レーンさんは黙っていました。
「ザードイには私を裏切らせるように仕向けた参謀がいるんですよ」