しっかりと1話に繋がる第0話
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ちゅんちゅんと小鳥のさえずる声で私は目覚めました。薄いカーテンをなびかせる穏やかな風と部屋いっぱいに差し込む朝日が今日もいい天気だよと教えてくれているようです。
洗面台で顔を洗って、いつもの制服に着替えます。だいたいいつも準備をし終わる時間になると部屋にほのかに芳ばしいパンの匂いが流れ込んできます。
リビングに続くドアを開くともう他の部屋の方も支度をして、食卓を囲んで座っていました。
私は、一番近い席に座りました。
「おはようございます」
「おはようございます、さて皆さん、ランナさんもいらっしゃったようですので、朝ごはんにしましょう、では、皆さん手を合わせて、いただきます」
「いただきます」
朝ごはんの時間は比較的静かです。朝に弱い方や、ご飯をたくさん食べる方、ただシャイな方など、様々いらっしゃるので、静かなんです。
朝ごはんを食べ終わると今日1日の予定が女将さんから発表されますが、催し物がない限りは大体は「いつも通り」とされることが多いです。
「いつも通り」と言っても、することは沢山あります。冒険者さんのレベルを見て、それに見合ったお仕事を割り振ったり、お仕事を終えた冒険者さんに報酬を正確に支払ったり、4日以上帰ってこない冒険者さんの捜索依頼の出したりします。他にも沢山の雑用をさせられますが、やりがいがあって楽しいです。
今日も朝から冒険者さんがお仕事を求めてやってこられます。
ただ、今日の冒険者さんは少し違いました。この街の冒険者さんたちの平均レベルには見合わない重装備をしていて、まるで過去に魔王を倒した伝説の勇者のような格好でした。彼女は私の眼前に立ちました。
「おい、お前はナンラか?」
「冒険者さん、私はランナですよ、ランナ·カーレントです。ほら、この名札に書いてあるとおりですよ」
冒険者さんは私の胸元に付けられた名札を目を皿のようにしてしっかりと見たあと、私の顔をじっくりと見ました。
「おい、私の目は騙されないぞ、お前はナンラだろ、前魔王のナンラ·ユングだろ、私と対峙して戦わずして、負けを認めた最弱魔王のナンラだ。私がこの目でしかと見たからには間違えるはずがない」
「そんなこと言われたって、私はこの集会所の受付嬢の1人でしか無いですよ」
「お前はここで働き始めて何年目だ」
「3年目ですけど……」
「ほらやっぱり、私と戦ってお前が負けを認めて第4次魔王政権が崩壊した時と時期がかさなっているじゃないか」
「たまたまですよ!そんな、私が前魔王だなんて、ある分けないじゃないですか!」
私と重装備の冒険者さんが言い争っていると、集会所の女将さんがいらっしゃっいました。
「何やってるんだい、他の冒険者に迷惑だろ、出ていきな!」
「お前は私が誰か分からないのか」
「わかりゃしないね、どうせ昔新人だったランナに報酬の計算を間違えられて、思っていた額よりも少ない報酬だったんだろ、そりゃ、ランナだって悪いけどね、間違ってるのが分かってたならその場で受け取る前に抗議するなり何なりすればよかったじゃないの、受け取り後に気づいたとしたって、うちの集会所の契約書にはしっかりと報酬受理後の報酬の変更、訂正は認めないって書いてあるんだから、恨みっこなしでしょうが」
「ばかもの!そんなケチなことではない!ほら!私が誰かわからせてやる!」
彼女は冒険者カードを見せてきました。その称号の欄にはしっかりと「伝説の勇者」と書かれていました。