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1.プロローグ

腹黒元王子から情報省長官になったセリウスと野猿な悪役令嬢のリーリアとの子供のお話です。

 魔法の発達したランダード王国。

 現国王ルシェール・ランダードの王弟であるセリウス・ランダードは、ランダード王国でも重要な仕事を担う情報省の長官をしている。

 そのため、セリウスは人の裏をかく仕事もすることから、密かに「腹黒王弟殿下」と呼ばれている。

 そのセリウスの妻リーリアは、元公爵令嬢であったが、子供の頃から野猿のように木に登ったりとお転婆な令嬢であったため、「野猿令嬢」とおおっぴらに呼ばれていた。


 そんな二人の間に長男が生まれた。


「かわいい元気な男の子ですわ!」と生まれてすぐの産婆の声に、みんなが安心し、誕生を喜んだ。


「くっ、男の子か!でもいいよ。愛する妻のリーリアが無事で、元気な子が生まれたなら!」と言いながら、ちょっとがっかり感が否めないセリウス。

 彼は小さい頃から婚約者であったリーリアが大好きだったため、あの頃よりさらに小さい、小猿リーリアに会えることを期待していた。


 ついに、セリウスは生まれたばかりの息子と対面した。


 まだ生まれてしわくちゃな野猿のような赤ちゃんを想像していたセリウスは、さらにちょっとがっかりした。

 生まれてきた子はセリウスによく似て、輝かんばかりの美しさを誇る赤ちゃんであった。


「あれ?リーリア似の茶髪じゃなくて、金髪であまり野猿っぽくない。僕に似ちゃったか~。

 あっ、でもリーリアと同じ緑の瞳だ!可愛いー!!」と一瞬がっかりしたものの、すぐに機嫌を直すセリウス。


 妻のリーリアは産後で疲れ切っていたが、セリウスのそんな様子に安心し、微笑んでいた。



 しばらくして、ルシェール・パメラ国王夫婦とその息子の4歳になるエミールも、お忍びでセリウスの屋敷にいるその赤ちゃんに会いに来た。


「うわー!わわー!!

 セリウスの赤ちゃんの頃にそっくりだー!!

 可愛い!超かわいい!!」とデレデレとして異様なまでに騒ぐ、弟のセリウスがいまだに大好きなブラコンのルシェール国王。


「「うん、想像通りの反応」」と王妃のパメラと、セリウスの妻リーリアがぼっそと言ったつぶやきが重なる。


 一方、連れて来られたエミールは、無言でじっとその赤ちゃんを見つめていたが、おもむろにベビーベッドによじ登りだしたと思ったら、その赤ちゃんにちゅーっとキス攻撃を仕掛けようとする。


「うわっ!僕の子に何する気っ!?」とセリウスが甥っ子エミールの顔を大人げなく抑えて、エミールから素早く赤ちゃんを引き離した。


「駄目だよ、エミール!私もまだちゅーしていないのに!!」とルシェールもエミールを後ろから抱き上げて、止める。


 後ろから抱き上げられたエミールは蛸のようにちゅーの口をしながら、手足をバタバタさせて、赤ちゃんにたどり着こうとする。


「……ちちうえ、はなして?」とパメラによく似た橙色の瞳を潤ませながら、自分にお願いするエミールに一瞬、怯むルシェールであったが、セリウスからの殺気のために、このまま抑えておかないと息子の身が危ういと思う。


「いいかい?

 赤ちゃんにはむやみに触れては駄目なんだよ。

 すぐに泣いちゃうからね」と、かつて赤ちゃんのセリウスをキス攻撃で大泣きさせたルシェールが説教する。


 赤ちゃんをエミールに近づけさせないようにするセリウスの様子に、一時的にあきらめたエミール。


 しかし、エミールは決意し、宣言した。

「……ぼくは、このこをおよめさんにします!!」


 それを聞いた大人4人は驚きで絶句した。

 エミールはまだ4歳のせいか、普段は大人しく寡黙で口下手なところがあった。

 そのエミールの宣言であったせいもあり、みんなが驚いた。


「こ、この子は男の子だから、絶対に嫁にはあげないよ!!」とすぐに自分を取り戻したセリウスは激怒した。


「そうよ、エミール。男の子だから結婚できないのよ」と優しく諭すエミールの母親パメラ。


「いやーさすが、私の息子!!

 小さい頃から面食いだね。

 でも、いくら可愛くっても男の子とは結婚しては駄目だよ」と笑うルシェール。


(うーん、さすがランダード王家の子、セリウス様似の我が子に反応するとは恐ろしい子!)とリーリアは思っていた。


「……うそ。

 おとこのこ?

 こんなにかわいくてきれいなのに?」とあからさまにショックを受けるエミール。そして、その赤ちゃんが男の子とまったく信じなかった。


「……ほんとうは、おんなのこだよ。

 このこは、ぼくのうんめいのこだよ。

 ちちうえのおっしゃるとおり、ひとめみてわかったもの」と言い張るエミールにみんなが困った。


「残念ながら男の子だよ。

 しょうがないから、あとでおむつを換える際なら男の子だっていう確認をさせてあげようか?」とちょっと哀れに思ったセリウスの提案にも、エミールは首を振って断る。


「……ぼくが、このこをおんなのこにもどしてみせる!」と小さい手を拳に握りしめて、固い決意をするエミール。


「「「「いや、戻すもなにもないから!元々、男の子だからね!!」」」」と大人4人が同時に突っ込みを入れるが、それらをスルーするエミールであった。



 こうして、生まれてすぐに従兄エミールの間違った溺愛対象になってしまった赤ちゃんは、「レイモン」と名付けられて、大切に育てられることになる。

 そして、彼は腹黒なセリウスに似ていて、元野猿令嬢のリーリアとの間に生まれたことから、きっと「腹黒小猿」になるだろうと、周りから言われるようになった。


 ちなみに、この後のエミール王子は、4歳にして魔法や医療で性転換ができないかと、誰よりも熱心に学び、研究し始めたため、特に魔法や医療の知識や実技に優れた王子へ成長することになる。

 周囲は、そんな向上心のある優秀な第1王子にとても期待しているが、その裏事情を知る数人の大人と当事者のレイモンはいつも思っている。


 大丈夫か、未来のランダード王国!?

野猿な悪役令嬢の番外編で投稿しようか迷いましたが、色々と書きたくなり連載にしました。

すっきりせず、無駄に長くてもご勘弁を!

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