ゴブリン村
最初に来た地点から少し歩いて行くと子供くらいの大きさの敵MOBが出てきた。いわゆるゴブリンというやつだろうか。MOBなんて単語がさらっと出てくるあたりこの世界にだいぶ馴染んだんじゃないだろうか。すぐにリストバンドが光り頭の中に敵MOBのステータスが表示される。
・ゴブリン Lv 1 HP5
スピード2 パワー1 最大MP1/1
装備 棍棒(小) スキル すり
よし倒せる。俺はゴブリンに殴りかかった。
何度か殴るとあからさまにやられた感満載な悲痛な叫びをあげてホログラム化し、空気中に砕け散った。
なるほど。グロテスクなものにあまり耐性のない俺にはありがたいシステムだ。
ちなみにドロップ品はこれ↓
・棍棒(小)・10G
まあザコキャラに相応しい報酬だ。街に行ってこのゴールドでどんなものが買えるか楽しみだ。それとこの棍棒(小)。一応バチより強かったのでこちらを装備させてもらった。
しばらく歩いて行くとゴブリンの出てくる量が増えてきた。この先に村でもあるのだろうか。もっと進んでみよう。
10分後
はいやらかしたー。今俺は完全にゴブリンに包囲されてる。村に入った途端に村の門が閉められあっという間に袋の鼠というわけ。数としては五十体くらいだろうか。明らかに敗色濃厚だ。するとなかからリーダー格のようなゴブリンが出てきた。MOB表示によると、
・ゴブリンロード Lv5 HP 20
スピード 5 パワー15 MP3
装備 棍棒(小) スキル すり
うん。間違いなくこいつ単体でも勝てないわ。どうしようか模索していたらそのゴブリンロードが話しかけてきた。
「おい貴様。ずかずかと入ってきおって。どういうつもりだ。」
「いやどうもこうもこの世界には来たばっかでまだよくわかってないんだよね。入ってきちゃまずかった?」
「人間がこの村に来るということは侵攻以外のなにものでもなかろう。嘘なんかつかずに諦めて死を受け入れるのだな。」
「この世界の人間ってひどいんだな。前の世界ではむしろ他民族の言葉を覚えてまで交流しようってやつもいたのに。ってかなんでお前らと俺でコミュニケーションが取れてるの?どういうこと?」
「ふむ。まだこの世界のことを知らんというのは本当のようだな。我々この世界のものは直接話はせず念話をして相手の脳に直接話しかけておる。言語などないのだ。よし、選択肢を与えてやろう。人間とはもう交流できないことを覚悟して我々の村に住み込むか。それともここから立ち去るか。この二つから選ぶがよい。」
(うーん。こいつらの話を聞いてみたい気持ちもあるが…。やはり人間と交流できないのは辛いなー…。そうだ!!)
「人間と交流を持つことはできないか?」
「何を寝ぼけたことをっ!我々は殺しあう仲なのだぞ!しかも人間どものところに我らがいったところで今のお前のように囲まれるのは目に見えている!そんなことをするわけにはいかない!」
「じゃあ俺が取り次ぐよ。俺なら人間だから平気だろ?しかも嬉しいことに前の世界の記憶も残ってるんだ。前の世界の記憶も使ってこの村をもっと文明的にするんだ。そうすれば交渉もうまくいく!」
「つまりお前は我々のことを知るだけでなく干渉すらしようというのか!」
「まあいきなりきたやつに政治を任せるのは不安なのはわかるが俺は人間も好きだしゴブリンの村に興味もある。両方とも死んでほしくないんだ。」
「…少し考えさせてくれ。」
そう言うとゴブリンロードは幹部と思われるゴブリン達を引き連れてどこかにいった。俺はその間、ゴブリンなりのおもてなしを受けることになったが…
食文化の違いというのは怖いものだ。出てきたお茶は変に酸っぱいし出てきたお茶菓子もそれはそれはひどいものだった。ここに住ませてもらったらまず食文化をどうにかせねばな、と心に刻んだ。
少し待っているとゴブリンロードがまた顔を出してきた。
「そなたの意見まことに面白かった。君を歓迎させてもらう。我の名はコルバスだ。よろしく頼む。」
「ショウだ。よろしくな。」
こうして俺は無事ゴブリン村を拠点として使うことができるようになった。とりあえず食事の改良からだな。
・ショウ Lv1 HP10
スピード1 パワー1 最大MP0/1
装備 棍棒(小) スキル 発明家
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