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はらり  作者: 瀬ノ木鮎香
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後編


「ん…?」

目が覚めた。

窓から射しこむのは月明かり、どうやらカーテンも閉めずに眠ってしまったようだ。

そうだ、確か明日は休みだし、たまにはいっかと思ってビールを開けたんだった。

空は大きな月だし月見も乙よねなんて思って…寝てしまったんだな。

うーん、と大きく伸びる。きらっと月光に反射する指。

「何だこれ?」

左手の薬指、指輪がはまってる。

「おもちゃ?」

ピンクのおもちゃの指輪。

よく祭りなんかの露店で売っているやつ。

なんで指に?まったく覚えがない、はずなのに。

「ふふ」

それを見ていると幸せな気持ちになる。

知らない間にはまっている指輪を不気味に思ってもいいはずなのに。

私にはそれがとても大切なものに思える。

大切な……

「あ、れ?」

ぐっと胸が圧迫される感じ。

息苦しさに喘ぐ、息苦しい?違う…この感情は…

鼻の奥がツンとする、目頭が熱くなる。

涙がこぼれる。なんで?

「なんで…」

まったくわけがわからない。なんでこんな気持ちになるの?

大きな声で泣き叫びたい。そうしないと心が壊れそうなほど。

そうか、ビールだ。対して強くもないアルコールが情緒不安定にさせてるんだ。

まだ酔っぱらっているんだ、きっと。

きっと、そうに違いない。

左手の薬指に指輪。

外すことなんて思いつかない、だってこれは大事な『約束』だ。

誰と?知らないそんなの。でも大事なの。

右手で包み込む。硬い感触。

『忘れないで』

聞こえたのは私の声。

忘れないで、私も忘れないから。

でも私は忘れてしまっているんだ。

大事な大事な、誰かを。

罪悪感、焦燥感。

寂しい、愛しい、逢いたい。

逢いたい逢いたい逢いたい……っ

「―――――っ」

口をつくのはただの呼吸。

浮かんだそばから消えるのは誰かの名前だ。

わかっているのにわからない。

「違う、お酒の所為だ」

言い聞かせる。泣きながら。

明日は休みだ。『出かけなくちゃいけない。』

その為にもう寝なくてはいけない。

無理やり身体を横たえる。目を閉じると目尻から涙が流れ落ちる。呆れるほどに。

眠ろう、眠らなくちゃ。

再び闇に落ちるまで……




「ひどい顔だ…」

ショーウインドを覗きこむ。

硝子に映る自分の顔を見て眉をしかめた。

案の定瞼は腫れあがってしまっているし、お肌の調子は最悪でファンデーションもうまく乗らない。

一日家でゴロゴロしてようか、そう思って雑誌を広げて。

ひらり、と一枚の紙が落ちた。

「あ、忘れてた。」

拾い上げる。それはチケットだ。

雑誌を買った時レジの横に置いてあった無料券。

何気なく目に付いたそのチケットの写真が気になって。

雑誌を受け取ると同時に一枚もらってきたやつだ。

「……行ってみようかな。」

チケットに映っている写真は一組の親子の写真。

両手を広げて笑顔で駆け寄ってくる幼い子供を、父親が腰をかがめて同じように両手を広げて待っている。

よくある風景なのに、見ていると温かさを感じる。

それから、羨ましさ?

なんでだろう、この情景を撮った人はきっと羨ましいんだと思った。

羨望、とでも言うのだろうか。

その気持ちが痛いほどよくわかる。

おかしいな、今までこんな風に思ったことなんてなかったのに。

ついに私にも芸術を理解できる日が来たか、なんて思って。

行ってみよう、そう思った。

『行かなきゃいけない』そう思った。

「よし。行こう。」

自分を奮い立たせて跳び起きる。

――――――約束を果たすために。





ぶらぶらと行く当てもなく、ウインドーショッピングを楽しみ。

時計を見て頃合いを図りながら個展会場へと足を向けた。

それほど大きくない会場だけど、私はその場所をすぐ見つけることができた。

大きな窓ガラスにはあの時見かけたポスターが何枚も貼ってあって、間違っていないとわかる。

そのポスターを一つ一つ見ていく。

よく見ればそれは、印刷されている写真が何パターンもあるみたいだった。

それでも圧倒的に多いのが家族の写真。

平凡な日常の中のひとコマで。

それでもきっとその家族は幸せなのだということが伝わってくる写真ばかり。

硝子戸をあける。

たくさん、というほどの人はいないけど、その空間はとても居心地がいいものだった。

一つ一つ写真をみていく。

壁に掛けられた写真は風景だったり、人だったり。

けれどどの写真にも優しさを感じる。

きっとこの写真を撮った人はとても優しい人なんだろう。

その心がまっすぐに写真に出ているんだ。

「あ、れ?」

じっくりと一つ一つ写真を眺めて。

ふいに壁に行き当たった。

壁?って言うか、パーテーションで仕切られた空間。

ひょいっと覗くとそこにも写真がいくつか飾ってあるみたいだった。

でも明らかに特別だという空間。

入っていいのかな?

思わず周りを見渡す。でも特別なチケットがいるって感じじゃない。

もう一度中を見る。

……どうしてだろう。中に入らなくてはいけない気がする。

私は吸い込まれるように中に足を踏み入れた。




「これは…」




飾られたいくつかの写真。

それは今まで見てきた写真とは明らかに違っていた。

今までの写真たちは大きく引き伸ばして額に飾ったりしてあったのに。

ここにいるのは普通の写真サイズだ。

足を進める。一つ一つをじっくりと見てみる。

「これって…花?」

ピントがぼやけている。かろうじてその姿形から正体がわかるもの。

それは景色だったり人だったり。

まるで素人が撮ったと言ってもいいくらいの出来栄えだ。

一体ここはなんだろう?

壁を見渡すと、小さな紙が貼ってあるのがわかった。

「初めてで、大切なもの」

コレがテーマのようだった。

初めて、ってことは写真を撮り始めた時のものってことだろうか。

なるほどそれなら納得いく。

入口にあった広告をみる。とそこには作者の簡単なプロフィールが書いてある。

前島浩之というのがこの写真を撮った人みたい。

カメラを手にしたのは…5歳の頃?

ああ、だからこんなにピントが合わないのか。

それでも一つ一つの写真が純粋な気持ちを伝えてくる。

きっともともと素質があったのだろう。

枚数を重ねるごとにだんだんとピントが合い、鮮明な風景を伝える。

その中に現れてきた一人の男の子。


「……な、んで…」


まあるい頬。細められた瞳。満面の笑顔。

こちらに向かって伸ばされる手はカメラを触ろうとしているのか。

―――苦しい…

思わず胸を掴む。苦しい、息が詰まる。でも、目が離せない。

何枚も何枚も同じ男の子の写真。

正面から、横顔。後姿。

熱心に絵本を読む姿。

そのどれもが胸を締め付ける。

そして。


「え―――……?」


ある時出てきた一枚の写真に映っていたのは。


「わた、し?」


その男の子と手を繋いで歩く少女。

小さな男の子に微笑みかける横顔はまさしく、今よりはほんの少し若い自分だった。

食い入るように見つめる。

小さな男の子と一緒に手を繋いで。

男の子は少女を見上げて嬉しそうに笑って。

少女も男の子を見つめて優しげに微笑んでいる。

仲睦まじい一組の写真。

「―――っっ」

声が漏れそうになって慌てて口元を両手で押さえる。

焦ったように次の写真へと目を移す。

そのどれも同じ人物。

小さな男の子と少女。

たぶんカメラになんて気づいていない。

お互いがお互いだけを目に映している。

まるで……恋人のように。

やだ、どうして…

瞼の裏側に涙の気配。

あ、と思った時にはすでに限界を超えて涙がこぼれてきた。

ぼたぼたととめどなく溢れる雫は拭っても拭っても止まらない。

滲む視界に苛立つ。

もっとしっかりと見ていたいのに。見たいのに。

何度も何度も目を擦って、涙を振り払って。

一枚一枚を丁寧に見つめる。

ふと写真の列が途切れた。少し離れて一枚の写真。

これだけが唯一この空間で額に小さくおさめられていた。

それは山。

―――あの時の、写真だ。

なぜかそう思った。あの時、なんていつか分からないのに。

遠くに霞がかった一つの山。うっすらと姿は白く見える。

まっすぐにただひたすらに。

その山だけを映し撮った写真。

ああ、あの時彼の瞳にはこう映っていたのか、と思う。

そこにあるのは『無』だった。決して悪い意味ではなく。

これからが終わりこれから始まる。

終わりと始まりの境界。

よかった。きっと彼は私の思う通りに立ち向かい乗り越えることができたんだ。

安堵にホッと胸をなでおろした。

そこで写真は終わっていた。

私はわけもわからない気持を抱えたままでその空間を出口に向かって進む。

外へ足を一歩踏み出そうとして。

「きゃっ」

どんと何かにぶつかった。

その拍子に身体がぐらっと後ろに倒れそうになる。

おっと、と足を踏ん張ろうとして、ぐいっと腕を強く掴まれた。

助けてもらったんだ、と思って顔を上にあげる。

「ありがとうございま…す…」

お礼とともに顔を上げて。

そこにいたのは背の高いがっしりとした男性。

とても驚いた顔で私の顔を食い入るように見つめる。

まるでお化けでも見るような顔だ。

思わずむっとする。

ちょっと!初対面の女性の顔をそんなにじろじろ見るなんて失礼じゃない!?

私の腕を掴んだまま離さない彼にしびれを切らした時。

「――――――紬ちゃ、ん…?」

「え?」

名前が呼ばれた。

なんで?私の名前?

思わずまじまじと彼を見上げる。

知らない人…、でも…?

どこか見覚えがある。でも記憶のどこにもいない。

誰、だっけ?

そんな私の心を表情から読み取ったんだろう。

目の前の男の人は寂しい笑顔を浮かべた。

「わからない、か…、そうだよな。」

そっと溜息をはいて。

ポケットから一枚の名刺を出した。


『カメラマン  前島浩之』


名刺にはそう書かれていた。

前島浩之、ひろゆき…

『紬ちゃん。』

ふいに声が聞こえた。

首から大きなカメラを下げた小さな男の子。

大きな悲しみを私が与えてしまった男の子…

「……ヒロ、くん…?」

信じられなくて、小さな声で呟いた。

目の前にいた男の人は自嘲するような顔で頷く。

「うん。久しぶり………紬ちゃん。」





「まさか本当に逢えるとは思わなかった。」

私に缶コーヒーを渡しながら彼―ヒロくんは私の隣に座った。

私に『話したいことがある』と言って個展の最中なのに、スタッフの人に一言告げて出てきてしまった。

私はなんだかまだ信じられなくて、呆然としたままヒロくんに腕を引かれて近くの公園までやってきた。

一つ思い出すと、あとはもうずるずると芋蔓式に記憶が溢れてくる。

あの夢のような不思議な体験。

事故にあった男の子。彼は私を女神と呼んで慕ってくれた。

まっすぐな愛情。ただただ純粋な綺麗な心で。

私は。嬉しかった。

向けられた愛情に喜びを感じていた。

優くんは私を女神と呼んだけど。決して何かの軌跡を期待しているわけではなくて。

私がそこにいることだけを望んでいた。

優くんと過ごした数カ月、私は本当に楽しかった。

突然やってきた別れに、私は予感がしたんだ。きっとまた逢えるって。

そうきっと…

「ねぇ。優くんは?元気?」

そう聞いた私に、ヒロくんはびくりと大袈裟に肩を揺らした。

「ヒロくん?」

どうしてそんなに驚くんだろう。だって絶対私からそう聞かれることはわかっていたはずじゃない。

彼は手の中にある缶コーヒーをぎゅっと両手で握りしめる。

どくり、と心臓が鳴った。

どうしてか、不安が押し寄せた。

どくどくと妙に心臓が急きたてる。『聞いてはいけない』

私は戸惑いに視線をめぐらす。

何故かヒロくんの顔が見れない。

怖い…

「優は」

「あっそういえばさ、ヒロくんていくつなの?私より年上に見えるけど」

思わずと言った感じに私はヒロくんの言葉をさえぎった。

「紬ちゃん」

「あの時はさ、私の方が年上だったじゃない?」

「紬ちゃん」

「そういえばさ、あれはなんだったんだろうね、なんで私」

「紬!!」

大きな声だった。

びくっと肩が揺れて口が閉じた。

閉じてしまった。

恐る恐る隣に座る彼を見上げた。

きっと今の私は不安に子供みたいな顔になっていることだろう。

だけど、そんなこと取り繕うことなんてできない。

ねぇ、どうしてそんなに苦しそうな顔で私を見るの?

「聞いて、ちゃんと。」

そっと私の二の腕を掴む。

逃げないように、という意味もあったのかもしれない。

でも支えるように、とも感じた。

「優は、いない。」

「…え」

いない?

答えがわからなくて、私は首を傾げた。

そんな私に一瞬痛ましげに視線を向けて、逸らした。

そうしてそのままポケットに手を突っ込んで何かを取り出す。

それはパスケースだった。

見ただけで結構な年気が入っているとわかるほどの。

けれどもとても大切にされていたんだとわかった。

「これ、優がずっと大事にしていたんだ。」

そういって私に手渡す。

私は手を差し出した。その手は知らない間に震えていた。

パスケースを見て、ヒロくんを見上げる。

私を見てヒロくんは一つ頷いた。

視線を手の中に落とす。

茶色のパスケース。二つ折りになっていた部分をそっと開く。

「これ…」

少し色あせてしまってくたびれているけど。

そこにあったのは私の写真だ。

満面の笑顔が写真いっぱいに広がっている。

あ思い出す、あの別れ際。

カメラを向けたヒロくんに私は笑った。

笑顔で別れたかった。笑顔を憶えていてほしかったから。

そうしてまた逢えた時に笑顔で逢えるように、と願って…




「死んだんだ。18の時に。病気で…」




「え―――」

「だからもう、いない。」

死んだ?え?

言葉の意味がわからなくて私は目を見開いたまま視線を落とす。

視線の先に見えたのは自分の手。

きらりと綺麗に光を弾くおもちゃの指輪が誇らしげに輝いている。

優くんの、くれた…

優くんが…いない?


「う…そ、でしょう?」

呟いた声はなんて頼りない。

「ヒロくん、冗談、上手、なんだから…」

笑おうとして頬を上げる、でも。

「でも、そんな冗談…笑えないよ…?」

「紬ちゃん…」

彼は静かに首を振った。

嘘ではない、と。

冗談ではない、と。

「冗談、だよね?」

縋るようにもう一度。

だけど彼は答えるより私を抱きしめる。

大きな身体。太い腕。

あの頃は私が彼をすっぽりと抱きしめていたのに。

今は私の方が彼より一回り程小さい。

「ヒロくん…?」

「ごめん…」

何に対する謝罪か分からなかった。

ただただ私を抱きしめる力を強くする。

「ごめん、優に会わせてやれなくて…俺で、ごめん」

「っ」

切ない響きだった。

そんなのヒロくんの所為じゃない、わかってる。

ヒロくんだってそんなのわかってる。

でもそう言われてしまえば、私は。

「優くん!優くん!!」

叫ぶしかない。

また逢おうって言った!

また逢えるって思ってた!

なのに、なんで?

何か間違えた?どこで?

どうして?

今ここにいないの…?

「優―――っっ」

声の限りに叫んで。

ふ、と目の前が暗くなる。

「紬ちゃん…?―――っ、紬ちゃん!!」

遠くで私を呼ぶ声。



―――紬ちゃん―――



うん。

今、会いに行くから…






「紬ちゃん」

突然現れた私に、ほんの少しだけ目を大きくして。

けれども驚くこともせずに笑った。

私の目の前にはベッドから半身を起した男の子。

その顔には面影があった。

「優、くん…?」

「うん。また会えたね。よかった。」

月光の中でさらに青白い顔で。

「きっと会えると思ってたんだよ。」

待っててよかったと彼は笑う。

最後に会ったのより随分と大人になって。

丸みを帯びていた頬はすっきりと精悍になって。

大きくなった骨格はしっかりとした青年だ。

けれどその顔には生気がない。

優くんは私に手を伸ばした。

その手に導かれるように私は彼の側に行くとベッドの端に腰かける。

ギ、と軋んだ音。

間近で見る彼の顔は。

陶器のように白い。

そっとその頬に指を伸ばす。

くすぐったそうに目を細めて、私の手に頬をこすりつける。

随分と大人になった。

随分とやつれている。

「多分、今夜会えると思ったから。無理言って一人にしてもらったんだ。」

私の手を取ると指をからめる。

「あの頃はぼくより随分背が高かったのに。なんだか変な感じだね。」

背中に腕を回すと弱い力で引き寄せられた。

そのまま胸に頬を寄せる。

ひんやりと冷たい身体。

耳に聞こえる鼓動は頼りない。

私は恐る恐る見上げる。

優くんは子供のころと変わらぬ優しい頬笑みで私だけをまっすぐに見つめていた。

「あなた…死ぬの?」

「うん、たぶんね。」

私の言葉にあっさりと頷いた。

だってここは病院だ。

彼がいるここは病室。

でもそれを抜いたってわかる。

彼の命はもう乏しい。

「ね、キスを教えてくれない?」

唐突に優くんは言う。

「え?」

「キス。したことないんだ。僕のファーストキス上げるから。」

おどけるように、笑いかける。

だから私もわざとおどけたように返す。

「なによ、それ。それって女の子の方から言うセリフじゃないの?」

「絶対に最初は君としたいと思ってたから。健気でしょ、だからご褒美に、ね?」

「うーん。なんかそれって男の子としてどうかと思うんだけど。」

「だめ?」

そう聞いた顔は幼い頃よく見ていた子犬みたいな縋るような表情。

懐かしさに頬が弛む。

「―――いいよ。」


僅かに唇を突き出すような形で私は目を閉じる。

彼の手が頬を押さえる。

近づいてくる気配を必死に掴む


「―――。」


ほんの少しの重なり。

触れてすぐに離れていく。

それでもキスだ。

私達の初めてのキス。

目を開ける。

間近で私を見つめる。

もう一度目を閉じれば、再び重なる唇。

今度は少しだけ、長く。

離れたとおもったら。

目を開ける暇もなく再び重なった。

何度も何度も啄ばむように唇を合わせて。

「っ」

私が手を伸ばすのと、彼が私の頭を押さえるのとどちらが早かっただろう。

深く深くキスをする。

僅かに開けた唇から舌が滑りこむ。

本能のままに私は彼の舌に絡みつくように舌を這わせた。

「…んっ、ん…」

「っ、はっ…」

息を漏らして、喉を鳴らして。

互いの唾液を舐めあいながら。

「な…んで…!」

キスに涙が混じる。

「本当に?本当に、死んでしまうの…っ」

こんなに側にいるのに。

「…うん。」

ちょっとだけ苦笑して彼は頷く。

その仕草が私は許せなかった。

「なんで…っなんでそんな簡単に頷くのよ!!」

「え…?」

私は叫んでいた。

「なんで死にたくないって、言わないのよ!!一緒にいたいって言わないのよ!!なんで…死ぬってことを受け入れちゃうのよ!!」

言ってよ、もっと。

「生きていたい」って。「死にたくない」って。

「諦めないでよ!生きたいって思うことを諦めないでよ!私との未来をそんな簡単にあきらめたりしないで!!」

いつの間にこんなに彼に惹かれていたんだろう。

私の左手薬指にはあの時はめられたままのピンクのおもちゃの指輪。

そして、彼の首には私が上げた指輪がチェーンに繋がれてぶら下がっている。

その傷み具合からずっと大切に身につけていたんだろうことがわかった。

「っ!!」

彼が初めて笑顔以外の表情を見せる。

心の奥底を抉られたような痛みを我慢する表情。

ひどいことを言っていると思う。

きっとこんな笑顔を浮かべるようになるまで彼だって苦しんだはずだ。

彼の未来はもっとあるはずなのに。

その理不尽さを誰よりも嘆いているはずなのに。

「そんなこと言ったって…しょうがないだろ!!」

初めて優くんが叫んだ。

「僕はもう死んでしまう、どんなことをしたって無理なんだ!もう未来なんか…っ」

苦しさや哀しさをぶつけるように急いて彼が叫ぶ。


「生きていたいさっ、死にたくなんてない!!なんで僕が…って思うよ!誰か代わりになってくれればいいのにって何度願ったか…っ簡単だって?…ぜんぜん簡単なんかじゃなかったさ!!」

夜が怖かった。

このまま眠ったらもう二度と目が覚めないんじゃないかって思えて。

もう二度と…彼女に逢えないまま終わってしまうんじゃないかと、恐怖で身体が震えた。

それでも無理に自分を納得させた。

仕方がないことなんだからって…。

「だけど…っ、もう、無理なんだ…。」

自分の未来は決定してしまった。

覆ることはない。

どんなに願っても。どんなに恨んでも。

どんなに祈っても…。

受け入れるしか、もう…。



「―――じゃあ、私の命を上げる。」



「…え」

「私があなたの代わりになる。だから私の代わりに生きて。」

きっと私はとても綺麗に微笑んだ。

そんなことできるわけないってわかってた。

私は神様じゃない。もちろん優くんが信じていた女神様なんかでもない。

でも彼が望むんならそうしてもいいって思えた。

「―――紬ちゃんが死ぬのに、僕が生きているの?」

キョトン、という表現が当てはまるような表情で私を見る。

「うん。」

「紬ちゃんがいるから僕がこんなに生きていたいと願っているのに?」

透明な瞳で私をまっすぐに見る。

小さなころとまったく変わらぬまっすぐな瞳。

逸らすことができない視線に、私はたまらず顔を歪めた。

「―――だって」

だって私何もできない。

あなたが苦しい時に傍にいられなかった。

すごく苦しんだでしょ?痛かったでしょ?それをあなたは一人で耐えたんでしょう?

悲しみも癒せてあげられない。

絶望だって 孤独だって、なにも!

私は何もできない!!

こんなことを言ったって結局は自分の自己満足でしかないのはわかってる。

けれども言わずにはいられない。

「―――死なないで」

死んでほしくなんかない。生きて。

「また会えると、そう言って。欲しいのはさよならじゃなくて、再び会える約束なの…っ」

あの時はまだ希望があった。

きっとまた会えるだろうって。直感的に分かった。

まさかこんな出会いを予感していたなんて…っ

でも今は違う。

これは永遠の『さよなら』だ。

「死なないで…っ、生きて、いて…私を、一人にしないで…っ」

「―――うん。」

「側にいて。好きなの、大好きなの。」


「愛している。」

「愛しているの。」


重なった言葉は祈りだった。

叶わないと知りつつも叶うようにと唇を合わせる。

お願い神様。私の命を半分彼にあげて。

長く生きたいなんて思わない、でも死ぬ時は彼と一緒がいい。

こうして手を繋いで目を閉じる最期の瞬間まで。

ただ側にいられればそれでいいの。

私の命が流れ込むようにと祈りながら何度も何度も。

繰り返し繰り返しキスをする。

「――もう少し元気だったら、この先に進めるんだけど。」

吐息がかかる距離で彼が悪戯に囁く。

「…元気になればいいじゃない。いくらだって付き合ってあげるわよ。」

軽口をたたき合いながら、でも涙が止まらない。

流れる涙に唇を寄せて、吸い取って。

彼と私は額を合わせる。

「それはいいことを聞いた。でも…今はちょっと疲れちゃったかな。」

「………なら。少し休んでいいよ。―――こうして抱いていてあげるから。」

「うん…ありがとう。」

そうして彼は私を抱きしめるようにして肩に頬を寄せた。

「すごく、幸せ。」

「―――うん。」

私も彼に頬を寄せる。

柔らかな髪からは彼に不似合いな消毒の匂いしかしない。

それがとても哀しくて。

閉じた瞼から零れた涙が彼の髪に落ちる。

はぁ、と彼が息を吐く。

それはまるでとても幸せな吐息に聞こえた。

「このまま…こうして…ずっと…。」

彼の手が私の背中をそっと撫でる。

私の涙を知っていて、慰めるようにそっと上下に動いて。

ゆっくりゆっくりと動く。

「うん。ずっと、こうしているから。」

同じように彼の頭を撫でて。

私は幸せに微笑む。

「ありがとう…本当に君を愛してる。出会った小さなころから……ずっと。君は僕の――運命の人――だから…」

「知ってる」

あなたと出会ったのは運命だった。

私はあなたの運命の人、だった。


あんな幼いあなたに。

ただただまっすぐに愛情を向けてくれるあなたに。

いつしか私は恋をしたんだ。

こうして、時間を超えてしまうほどに。

たとえあなたが私の運命の人ではなかったとしても。

心から、本当に。

あなたを、愛した。


「また…逢える?」

呟く言葉は願いだ。

「うん。…きっと。」

答える言葉も願いだ。

今の私達には願いしかない。

願いを口にして、約束を残す。

それが今できる私達の精いっぱいだ。

そうして私達は再会の約束をして…

二人、どちらともなく微笑んだ。

ほぉ、と一つ呼吸が、とまる。

ストン、と背中に回って腕が音もなく落ちた。

「また会おうね。約束だよ?そうしたら今度はちゃんとプロポーズして。指輪は…これでいいから。」

きつく抱きしめる。

私の左薬指にはピンクのガラス玉。

私はそっと彼をベッドへ寝かすと、その首にかかっている鎖をはずして指輪を取り出した。

そっとキスをすると優くんの左手薬指にはめた。

あの日、ぶかぶかだったその指輪はあつらえたようにぴったりと彼の薬指にはまった。




嘘、プロポーズなんかいらない。




あなたであるなら私は何も望まない。

ただ側にいられればそれだけでいい。

契約も形もいらない。

この指にはまった小さな指輪があればそれだけでもう満足だ。

だから…だから…

「―――それまで、私を忘れないで…っ」

月明かりに照らされた顔はまるで眠るように。

僅かに口角を上げて、微笑んだ顔で。

触れればまだ体温はあるのに、その胸に脈打つ音はない。

頬を撫でる。あなたは最期まで泣かなかった。

小さい頃からそうだった。あなたは私の前ではあまり泣かない。

だからその分、私が泣くの。

「―――っ!!あ、ぁぁああああああああっ」

堰を切ったように涙がとめどなく滝のように流れ落ちる。

目一杯声を上げた。

死なないで、逝かないで。

ずっとそばにいて、私を一人で平気な女だと思わないで…っ

あなたの手が必要なの。あなたがいてくれればそれでいいの…っ

私は女神様じゃないから、あなたの命を守る事ができない…っ

それなのに、どうして会ってしまったの!?

どうして私をあなたの『運命の人』にしたの!?

疑問だけがとめどもなく浮かぶ。どうして、どうして、どうして!?

どうして彼が死ななくてはいけないの…っ!!

拭ってくれる手を失った涙は。

私の眼から落ち頬を滑り。

彼に落ちる。

そうして私は『彼の』涙を拭う。

何度も、何度も、何度も。

私の涙で彼が泣く。

幸せな顔をしたまま。

逢えない寂しさの涙を。

私は何度も拭いとった。



「ふ…っ」

ぐっと唇をかみしめた。

この涙を止めなくてはいけない。今度は私だけの力で。

だって彼はもういない。

私の涙は彼の指先に拭われるものだから。

どうにか涙を止めて。

月明かりに映し出された彼の顔。

もう苦しみも痛みも感じとることはない。

それだけがよかったと思える。

そっと髪を撫でた。

窓を開けて風入れる。

ふわりと、私の頬を掠めて、何かが外へと流れた。

それはまるで彼の指先と同じ感触で。

私の頬に残っていた最後の涙をそっと拭った。

ねぇ、もう自由に飛べるよ。

あなただけの翼で。

どこまでも遠くに。

いつか。私もあなたの隣に行くから。

「それまでどうか私を忘れないで…っ」



私は彼の携帯電話を手に取った。

いくつかのボタンを押して、耳に当てる。

コール音が1回もなることなく相手は出た。

『はい。』

懐かしい可南子さんの声。

「私…あの…」

多くを語らなくても彼女は全てを察してくれた。

『―――あなたが電話してくるってことは……あの子はもう逝ったの?』

「っ……はい。」

『そう…一人じゃなかったのね。ずっと側にいてくれて、ありがとう。』

「わ、私…っ」

『あの子、ずっとあなたに逢いたがっていたの。最期に逢わせてあげられて本当に…よか…っ』

涙に言葉が詰まる。

本当は側にいたかったんだろうに。

こんな大事な時間を私に譲ってくれた。

お礼を言わなくてはいけないのは私の方だ。

「ありがとう…ございました…。」

あなた達の大事な息子さんを返します。

まだ身体が温かいうちに、どうか抱きしめてあげてください。






















ふと目が覚めた。

たぶん、目が覚めたんだと思う。

気付いたら真っ暗な帳の中、私はベッドの上に起き上がっていた。

きている服はパジャマ。たった今起き上がったと言わんばかりの布団。

カーテン越しに漏れる光は弱い月光。まごうことなき夜だ。

「?」

首を捻った。その途端ぽたりと滴が滑って落ちた。

ぽたりぽたり。

頬に手をやる。濡れている。

泣いているのだ、私は。

「……っ」

認めた途端、襲い来るのは痛いほどの切なさ。

そうして喪失、絶望。

ぽっかりと大きな空洞が胸の中にある。

でもその中心に小さく蹲っているのは愛しさだ。

愛しい、愛しいと何度も。

叫ぶ声が、ひどく哀しい。

「―――っ」

口を開いた。名前を呼ぼうとして。

でも結局私の口から零れたのは息だけ。

名前を―――誰の?

思い出せない。浮かぶ面影もあやふや。

それでもわかる。

この人は私のとても大事な人だ。

その名前も、その面影も。

忘れたくないとても大事な人だ。

なのに、こうして薄れて行ってしまう。

それがとても哀しい。

流れ落ちるのは涙。吐きだすのは音にならない空気。

ずっと、繰り返した。治まるまで、ずっと。

泣き疲れて眠るまで。








そうしてそれっきり私はそのことを忘れてしまっていたんだ。













「紬ちゃん?」

そっと呼びかけられて私は目を開けた。

眩しい光に目を細め。

そんな私に気づいて影になるように顔を覗き込む人。

「ヒロくん…?」

呟いた途端襲い来るのは、あの時と同じ喪失感。

絶望と悲しみ。そして―――抱えきれないほどの愛しさ。

どうして忘れてしまったんだろう。忘れてしまえたんだろう。

今だってこんなに愛しいのに…!!

溢れ出る涙はとめどなく。

拭うことも忘れて私は呆然としていた。

隣でヒロくんの戸惑った気配。

そりゃそうだ。いきなりこんな滂沱の如く泣かれたら。

「紬ちゃん、これ…。」

控えめに差し出されたのは一目で清潔だとわかるハンカチ。

わかったけど、私は受け取ることができなかった。

呆然としたままでそのハンカチを見つめる。

ヒロくんはもう一度受け取るように手を揺らして。

それでも私が受け取ろうとしないから。

その手を動かして、私の頬に当てた。

幼い頃、父親を失った悲しみの涙を私が拭いとった時と同じに。

「―――っ」

思い出して、さらに涙が溢れる。

それをヒロくんは丁寧に丁寧に拭っていく。

何度も何度も。

私の涙が止まるまで。

でも涙腺が壊れてしまった私の涙はそんなに容易に止まらない。

「ごめ…時間…。平気だから、行って?」

「気にしなくていい。紬ちゃんの方が、大事だから。」

個展の最中に抜けてきたのだ。

きっと彼の写真を見る為に集まった人が、ヒロくんを待っている。

この個展はヒロくんにとっての大事な一歩だ。

それを私なんかの所為で台無しにしたくない、そういうのに。

「君の方が、大事だから。」

止まらない涙を拭うことをあきらめたヒロくんは。

小さく笑って私に両腕を回す。

「紬ちゃんを大事にするって、約束したんだ。」

今となってはすっかりおとなの男の人となったその胸は。

私一人簡単にすっぽりと包んでしまう。

「約束…?」

「紬ちゃんが泣かないように。泣いていたらその悲しみを取り除くように。」

優と約束した。

「…え…」

優くんと?

「いつか再び出会えたら…、いや。いつか再び出会えるから。その時は守ってほしいって。」



『泣かないように守るって約束したんだけど、たぶん僕には無理だから。だからヒロ。君に頼みたい。紬ちゃんに再び出逢った時には彼女が哀しむことがないように守ってほしい。泣いていたら側にいて慰めてあげて欲しい。僕の最期の、お願いだから。』

本当は自分こそが側にいて彼女を守りたかったんだけど。

彼女の涙を拭うのは僕の役目だったんだけど。

たぶん、もう、無理だから。


「優くん…っ」

呟いた名前は、ずっとずっと呼びたかった名前だ。

「優くん、優くんっ!!」

しがみついたその胸は、優くんのものじゃないけど。

聞こえる鼓動は聞きたい人のものじゃないけど。

あなたが頼んだ人だから。

許してくれるよね?

「優くん―――っ」




『人にはね、たった一人必ず出逢う運命の人がいるのよ。年齢も性別も何も関係ないたった一人の運命の人。出逢い方はそれぞれ。街中でただすれ違うだけかもしれない、言葉を交わすかもしれない、友達になるかもしれない。恋人や家族になるかもしれない。けれども必ず出逢う運命にある人。』




あなたにとっての私が運命の人であったように。

私にとってのあなたも、間違いなく運命の人、でした。















『拝啓 優さま。


そちらはどうですか?やっぱり綺麗なお花畑とかあるのかな?

この間可南子さんに会いました。

突然訪ねて行ったらびっくりして、でも喜んでくれました。

なんか全然変わってなかったよ。若さの秘訣はなんですかって聞いたら『秘密』って。

本当に変わってないなぁってなんだか安心しちゃいました。

それから。こう言ってました。

「優の命はあの事故の時に終わっていたのね。

だけど、それだと紬ちゃんに逢うことができないから、だから女神様が紬ちゃんを優に逢わせてくれたんだわ。5歳から17歳までの時間は紬ちゃんと出会って、恋をして。そして―――ちゃんとお別れするための時間だったんじゃないかと思ってるの。」って。

どう思う?私はあながち間違っていないような気がするんだけど。

じゃないとあの不思議な体験は説明がつかないじゃない?

ま、誰に説明するわけでもないけどね。

それから。本当はこっからが本題。

私、ヒロくんと結婚することになりました。

こんなこと言っても優くんはあんまりびっくりしないんじゃないかって思います。

もしかしたら優くんにはこうなることがわかっていたのかな。

それで一つお願いがあるの。

この先、私達に子供ができたなら。

あなたの名前をつけていいかな?

男の子でも女の子でも。

『優』ってつけたいの。

それで私達が体験した、あの懐かしい日々を話してあげたい。

ね?どうかな?ダメ?

ヒロくんは『紬のお願いを優が断るはずない』って断言してくれるんだけど。

ちょっとだけ私もそう思うけど。うん。いいよね。文句は聞かないからね。

あ、でも私達の子供に生まれ変わったらだめだからね。


いつか。


私もあなたの所に行く日が来たら。

あなたが迎えに来て。

その手に指輪を持って。

そうしたらその指輪をして、私はあなたの元に行くから。

これは私の一生のお願いだから。

叶えてね。』


「紬?何してるの?」

「ん?ラブレター書いてるの。」

「―――優に?」

「うん。それに結婚の報告も。」

「そっか。なんか俺殴られそうなんだけど。」

「えー、そんなことないと思うよ。」

そうかなぁなんてブツブツ言いながらヒロくんは部屋を出ていく。

私はもう一度便箋に向かった。

そうして最後に一文をつけたして。

同じ柄の封筒に折りたたんで入れる。

これは後で可南子さんに渡すことになってる。

その後の事は知らない。

可南子さんがどうにかしてくれるって言ってたから私はそれ以上詮索なんてせずにお任せしている。

「紬」

「はーい。今行くから。」

白いドレスの裾を持ち上げて踏まないように気をつけて私は立ちあがる。

そのまま彼が待つ所まで歩いていく。

空は綺麗な青い色。

雲一つないこんな空なら、そこからでも見えるんじゃない?

ふふっと一つ笑って私は歩き出す。

彼の待つ元へと。




―――あなたが私の運命でした。―――




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