繭ノ中、一人佇ム
ちょっと変な話になってしまいましたが
ご了承くださいませ^^
「雛瀬?」
私を呼ぶ声がする
「雛瀬?どこにいるんだ?」
あれは私のお兄ちゃんの声だ
呼ばれているのに
返事さえできない
今の私の身体は不自由だ
何故だろう
声がでなくなっている
私は目を幼い頃
事故で視力を失っていた
それは仕方のない事だった
「あぁ、雛瀬。やっと見つけた」
私を見つけてくれた
でも私にはお兄ちゃんの姿が見えない
お兄ちゃんって呼ぶことすらできない
そんな私をいつも支えてくれて
幼い頃から私の面倒を見てくれているお兄ちゃん
なんで私なんかにかばってくれるんだろう
今、私はお兄ちゃんと共にいる
そばにお兄ちゃんがいる事を
この手で感じている
手を繋いでいてくれている
あたたかくて、大きなお兄ちゃんの手のひら
こんな私の手を握ってくれて
いつもありがとう
-----------------
いつの間にか私は
眠っていたようで
背には冷たい何かが
私の身体を支えている
お兄ちゃんはどこ?
私のそばにいたお兄ちゃんはどこ?
私はまるで
繭の中にいるように
身体が不自由で
動けない状況だった
お兄ちゃん?
私の下にある冷たいもの
それは私のお兄ちゃん?
なんで私がお兄ちゃんの上で眠っているの?
冷たいお兄ちゃん?
それは死んでいる?
死んでいる人の身体は冷たいの?
私には分からない
私のお兄ちゃんは何で死んでるの?
どうして?
教えて?
私の目からは涙が流れなかった
どうして?こんなに悲しいのに
どうして泣けないのかな?
繭の中に一人佇む私
動けない私を置いて死んじゃった・・・?
嘘だよね?
私はもっとお兄ちゃんと一緒に居たかった
それなのに?
----------------------
私を呼ぶ声がする
「雛瀬!雛瀬!おい、起きろよ雛瀬!」
私は目を開ける
弟がそこに居た
「あれ?お兄ちゃんは?」
「お兄ちゃん?姉ちゃんに兄貴なんかいないだろ?
なに寝ぼけてんだよ」
「夢・・・?」
頬をつねったら痛かった
これ夢じゃない
ひりひりと私のつねった頬を撫でて
弟は私を見て笑った
「変な姉ちゃん・・・朝食の準備できてるからな
早く降りてこいよな」
そうか、夢だったんだ
これで、いいんだよね?
私には関係のない事だったんだよね?
うん。きっとそうだ
下に降りて朝食をとる
テレビを見ると私の見ていた夢の内容が
ニュースでやっていた
あの夢が現実に起きていた
私はそのニュースを見て
まったく関係のない話なのに
涙で目を潤ませていた