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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無意識殺人

『嫌いじゃないけど好きでもない。』

 嘘ではない。本当の事だ。

 一緒に居ることが当たり前になり過ぎて、好きだ嫌いだなんて考えて生活したことなんてなかった。

『むしろどうでもいい。』

 これは嘘。

 ただ、どうせ俺がお前のことをああだこうだと気にしたって、お前はいつもみたいに俺の隣で笑っていてくれるんだろうと思ったから、つい口から出てしまったんだ。


「……オイ、何してんのさ?」

 仕事を終えて、帰宅したマンションの寝室の中心に、天井からぶら下がるお前が居た。

 返事は無かった。

「おーい、返事しろー?」

 ポストから出して持ったままのダイレクトメールの束で、ペチペチと頬を叩いてやる。

 返事は無い。

 不意に足もとがヌルついてることに気づいて、視線を落とすと、カーペットがぐっしょりと濡れていた。カーペットにポタポタと垂れる水滴の元を辿ると、天井からぶら下がったお前に辿り着いた。

「きったねーなぁ。勘弁してくれよ。」

 お前の顔は真っ青で、紫色に変色した唇からは泡を吹いていた。目や耳、鼻からもどろどろの液体を垂らしている。股間のあたりも濡れている。

「おいおい漏らすなよ。お前いくつだよ。もう二十歳こえてんだぜ?」

 何も言っても動こうとはしないお前。

 とりあえず、いつまでも寝室の中心で、みの虫ごっこされては邪魔になるだけなので、天井からお前を吊り下げているロープを切って下ろしてやった。下ろしたお前の体をベッドに寝かせる。

 寝るならベッドで眠ってほしい。わざわざぶら下がらなくたっていいだろう。

「後でちゃんと掃除しとけよな。」

 そう言って俺は寝室を出て、扉を後ろ手に閉めた。

 瞬間。俺は床に崩れた。

 冷たいフローリングの床に両膝から崩れる。

「マジかー…」


 ああ、恋人が死んでしまった。

 俺の隣の笑顔が、消えて逝ってしまった。


 嫌いじゃないけど好きでもない。


 それ以上に、愛してたのに。



【無意識殺人】

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