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昔のインターネットのコワイ話  作者: 鳥遠かめ
「蝕」の章

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ビンテージビデオ

***ビンテージビデオ***


 ハンドルネーム「マナツ」さんの話だ。

 この話はマナツさんの性癖にまつわる描写が多いため、注意してほしい。



 ……えっちなビデオって、好きですか?


 私、そういうのが昔からけっこう好きで、気に入ったやつがあったらダウンロードして保存しちゃうんですよね。


 ただ、ちょっと変わったフェチがあるんです。


 ある条件さえ満たせば、もろの十八禁でも、微エロでも、一般的には非エロなものでもイケちゃう。


 その条件っていうのが、「古そうなビデオ」ってこと。


 画質や音質が悪かったりノイズが入っていれば加点、もちろんビデオテープに録画してエンコードしたものがベスト。


 今はあんまり見かけなくなったけど、動画サイトが現れだしたあたりでは、まだそういう取りこんだ動画もけっこう出回ってました。


 きっかけは、ある芸能人の行為を撮った……とされる流出動画です。

 画質も音質も最悪で、ホントに〇〇? って区別がつかないくらいの。

 その芸能人には憧れてたんで、私、その子に自分を重ねて楽しんだんです。

 画質とかが悪いほうが重ねやすかったんだと思います。


 あとは、海外のえっちなサイトで見た援助交際の動画かな。

 私より少し前の世代の子が、お父さんくらいの男の人と行為をしている。

 ちょっと気持ちは理解できなかったんですけど、なんとか自分と重ねられた。

 最初の動画つながりで、けっこう使えました。


 アニメ系なんかも、「ザ・セル画」な雰囲気だといい感じです。

 正直なところ、これは「戻ってきた」感じですね。

 最初はぴんとこなかったんですよ。昔のアニメはデフォルメが強いですから。

 たんにビンテージ感があるだけでオッケーになってからハマりました。


 次に手を出したのは、昔のテレビ番組やCMの録画動画。


 夜中にやってるのようなのはもちろん、ゴールデンタイムに有名な芸人さんや俳優さんが出ているようなのでも、モザイクも黒塗りもナシにおっぱいが出ているのがあってびっくりですよね。

 これはもう重ねるとか関係なくて、それまで見て来た古い動画に雰囲気が似てるってところでいけました。

 レンタルビデオ店にもけっこう通いましたけど、録画のエンコード動画の手触りがいちばんでしたね。


 そうこうしているうちに、たんに画質が悪いだけで、えっちでもなんでもない動画までオカズになるようになって。

 最近のマイブームは、懐かしいCMを集めた動画です。

 物によりけりですけど、AIに作らせた昔風の動画も、まあまあイケます。


 動画掘りが日課になっていると、いろいろな動画に遭遇するんですよね。


 今だとポルノ扱いにされそうな、子供の運動会やお遊戯会を収めたもの。

 何かの会合で集まったお年寄りが、歌を披露しているもの。

 どこかの会社で内部向けに作られた、制度説明の動画なんかも。

 どれも再生数が多くて二桁とか、そういうのです。

 あと、画面下の端のほうに「1994.5.14」とか日付が入っている。


 もちろん、肝試しを撮った動画もありました。あれはよかったです。

 今みたいに動画配信者とかのいない時代の、ハンディカムで撮った動画。

 雰囲気だけでけっこう怖いんで、そのどきどき感でも盛り上がれるんですけど、何より手振れや歩くときの上下の画面揺れなんかが、すごくえっちで。


 えっと、私のオカズ遍歴の中でもとりわけヤバいのがありまして。

 あんまり熱中してしまったもので、私生活にも影響がでちゃったくらい。

 今回お話させていただいたのは、これを紹介したかったからです。


 内容は「遺言状」。


 おじいさんがまっすぐとこっちを見て、遺産がどうとか、知り合いの誰々には気をつけろとか、そういうことを話すものです。

 おじいさん、やたらと謝るんですよね。

 どうも、おじいさんのせいでお孫さんが亡くなっちゃったらしくて、遺言ビデオを録画したのも、それを後悔してのことらしいんです。


 で、その中でもいっちばん盛り上がるところがありまして。ずばり、ラスト。


 おじいさんが「ジュウヤ、すまんかった、いま逝くぞ」って言って、上を向くシーンです。

 目をつぶって口を半開きにして、小刻みに震えて、最期は「ジュウヤ、ジュウヤ」って呼ぶんですよ。ほんと、すっごい。


 その時の表情が、まるでイってるときの顔みたいで、いやまあ逝ってるんですけど(笑)、とにかく、すごい。


 どうやって逝ったのかといったら、おじいさんの首にロープが掛かってるんですよね。

 叫び終えると同時に白目を剥いて、ぶら~~んってわけです。

 ジュウヤコールは気持ち的に勢いをつけるためだったのかな?

 でも、自分で吊ったくせに、必死に首元のロープに指が絡みつくんですよ。


 しかもですね、おじいさんがぶらんぶらんすると同時に、画像が乱れ始めて、ノイズなんかが、ばーっと広がって最後は砂嵐なんですよ。

 ロープの軋む音や、くぐもった息の音がゆがんでいく。


 ぎっ、ぐっ、ぐぎっ、ぎっ、ぎ、ざーーーっ。


 これにシンクロすると、とにかくイイ。もう、イスも床もびっしょびしょ。

 気づいたら足元でグッズががたがた音を立ててる。

 時計を見たら時間がトンじゃってる。


 ところで、イク瞬間に視界がいっしゅん暗転した後、ちかちかするの、ちょっとノイズっぽくてよくないですか?

 それに気づいちゃったらもう、セルフ発電まっしぐら。


 あんまりその動画を使いすぎたせいで、ただのおじいちゃんとか、誰かがまっすぐこっちを見てるとか、その程度でうずくようになっちゃって。

 介護士の資格を取って老人ホームに勤めようかと思っちゃったくらい。

 そんなことしたら生活できなくなっちゃうから、やめときましたけど。


 でも、日常生活をしていたら、お年寄りなんてどこにでもいるし、一対一で食事とかしたら遺言ビデオと同じ構図になっちゃうし。


 そのたびに、「こいつ、白目剥いて逝かないかな~」なんて。


 今度ですね、アップロードする側になろうと思うんですよね。

 オークションで古いカメラやテープを集めて、エンコーダーも買ってあります。

 カメラに向かって遺言を語って、最後はもちろん「ジュウヤ、すまんかった、いま逝くぞ」って叫びます。

 同じ趣味の人はまだ見つかってないから、演者は自分自身になっちゃうんですけど、そこはちょっと引っかかるかなって心配です。


 だって、「ジュウヤ」って、私の本名と同じですからね。


 やっぱり、相手が自分の名前を呼んでくれると興奮しますよね。

 あの動画は、本当に運命の出会いだったと思います。


 でも、いつかは超えたいですね。

 あなたはどうです? うちに来ません?

 

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