はじめに
※初回は前書き+3エピソード公開します。
わたしがインターネットに触れたのは、二十一世紀に入ってからだった。
いくつもの重大事件が重なり、九十年代からひとびとの頭上に立ちこめていた暗雲をいっそう濃くしていた時代だ。
オカルト方面でもノストラダムスの大予言が外れ、コンピューターの普及により心霊写真が廃れと、ひとつの大きな時代の終焉を迎えつつあった。
しかし、同時にインターネット文化が花開いた時期でもあり、それまでは一部のビジネスやディープな趣味(と言ったら先輩方は怒るかもしれないが)でしか利用されていなかったインターネットが、学校の授業や大衆の遊び場など、身近な存在になっていった「普及期」でもあった。
学生だったわたしもまた、個人用のコンピューターを手に入れ、遊び道具やコミュニケーションツールとしてインターネットに触れ、某匿名掲示板、フラッシュ動画やゲーム、チャットやお絵描き掲示板、個人運営のサイトやブログなどにどっぷりとハマっていた。
しょうもない動画を友人と共有したり、個人サイトのチャットや掲示板で喧嘩をしたり、釣りかもしれない掲示板のスレッドに張りついたりと、飽きずに毎日パソコンモニターと向き合っていたのは、今となってはいい思い出だ。
もちろん、この時代のインターネットはアンダーグラウンドだった。
法整備や警察の介入なども遅れていて、違法なデータを入手するのも簡単だったし、ウイルスでパソコンを壊されるのもよくあることだった。
また今と違って、ネットで知り合った人間と現実で会うことや出会い系サイトというものが危険と隣り合わせでもあった。
ん? 今とやっていることはたいして変わっていないような……?
しかし、ひとつ違う点がある。
情報の量と確度だ。フェイクニュースの注意喚起が叫ばれる昨今だが、それを差し引いても、当時は「真偽不明なこと」だらけだったのだ。
つまりは、それだけ奇妙な噂や、新たな怪異も多く誕生したということだ。
本書では主に二〇〇〇年代のインターネットを舞台として、あるいはネットがきっかけで起こった、わたしや知人の体験したコワイ話、奇妙な話を記していきたい。
ジャンルは怪談、ヒトコワ、鬱な話といったところだろう。
基本的にはパソコンを使ったインターネットの深く関わる話が中心となる。
ケータイサイトについては、ほかに譲るとしよう。
この年代にインターネットに触れていた方には蛇足だが、インターネットが手のひらに収まってから触れた方にも話を楽しんでいただくため、サービスや文化の解説めいたことをするかもしれない。
これについては、懐かしさと引き換えに目をつぶってほしい。
あるいは読み飛ばしてもらってもいい。
なお、登場人物のハンドルネームは仮名で、実在のサイトやサービスを舞台とする場合は名前なども伏せ、フェイクを挟んでいる。
それと大事な注意書きだ。
体験者や登場人物が違法行為をおこなっているシーンが多く描写されるが、本書はこれを推奨するものではないことを断っておく。
ウェブサイトやサービスなどで、ほんらい意図されない操作をおこなうと規約違反になる場合があり、内容によっては不正アクセス禁止法などに抵触する可能性がある。
体験談中にあるような不誠実な行為を現代のSNSでおこなえば、風説の流布や名誉棄損などに問われるかもしれない。
本書を読んだことによる犯罪の誘発、人間不信、精神疾患、呪術の発露、怪異の出現などには筆者はいっさいの責任を負わないものとする。
それでは、昔のインターネットの話を楽しんでくれ。
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※初回は前書き+3エピソード公開します。




