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君のおかげで  作者: 乃亜


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ラスト・エピローグ

ご主人――りょうの生活は、クロがいた頃よりもずっと明るくなった。

朝の光の中、ゆっくりと歩き、湯を沸かし、お茶を入れる。

その所作には、かつての影はなく、穏やかさが漂っていた。

ときどき、窓辺に小さな黒い影がふわりと現れるような気がして、

りょうはふっと微笑む。

「クロかな……」

その声が静かに部屋を満たすたび、胸の奥があたたかくなる。

それは、遠くに行ってしまったはずの友達が、

今もそばで見守ってくれているような、そんな感覚だった。

クロが残した小さな奇跡は、りょうの中で生き続けている。

忙しい日々の間にも、朝の湯気の立つカップに手を止め、

光と匂いに包まれたひとときを、しばし楽しむ。

そして、ふと立ち止まる瞬間に思うのだ。

――ぼくはひとりじゃない。

あの黒い瞳が、静かに、やさしく見守ってくれている。

クロの存在は、もう過去の思い出ではなく、

今も未来も続く“心の光”になったのだと。

部屋に差し込む朝の光の中で、りょうはそっと笑った。

そして、クロもまた、その光の向こうで小さく喉を鳴らしている気がした。



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