1-8.STAND-UP
作成したキャラクターを選び、ゲームを開始した。
髪型や服装等は変えられず、1種類のみだった。特にストーリーも無く、大きな城の前に突然キャラクターが現れた。
「これって何をすればいいんだ?」
横で見ていた陸が尋ねる。
確かに目的もなく、ただカードを集めるだけなのか?まぁ、普通に遊ぶ為のカード集めであれば、ストーリーも必要ないのかもしれない。単純にカード集めという目的自体はあるわけだし。
しかしだ。月額料金もかからず、カードが送られてくるなんて気前が良すぎるシステムだよな。
そんな事を考えながらもキャラクターを動かしてみた。目の前にある城には入らず、ヅカと合流して城下町を散策することにする。
しばらく歩いてわかったこと。
今いる場所は【始まりの国 セフィラム】というらしい。そしてこの街にある城は【セフィラム城】。実にわかりやすい。
街の中には武器屋や防具屋といった店は無く、一般的なゲームと共通しているのは宿屋くらいだ。他はカード屋と集会所しかない。
何か情報は無いかと集会所に入ってみたが、女性キャラクターが1人居るだけだった。オンラインゲームだから人が沢山居てもいいのに、と思った。
この女性キャラクターはゲーム内のキャラだ。ヅカとは異なり、頭上に【?】マークがついている事から、おそらくNPCだ。
情報収集の為、女性キャラクターに話しかけてみた。
「私の名前はリーナ。お困りの様子ね。何が聞きたいの?1つだけ教えてあげる」
画面には4つの選択肢が表示された。
1.ワールドについて
2.カードについて
3.パーティーについて
4.バトルについて
1つしか聞けないとは心もとない。
1はストーリー関係だろうか。2はカードの入手方法だとすれば、大方予想はつく。3のパーティーとは仲間関係か…
俺は恐らく焦点になるであろう4を選んだ。カード入手にしても戦闘が関与してくる可能性は非常に高い。
リーナは頷くアクションの後、話し始めた。
「戦闘の相手は、大まかに分類すると、対モンスター、対プレイヤーの2種類あるの」
プレイヤーと戦う事もあるのか。
「バトルは所有しているカードを具現化して戦うわ。具現化したカードを戻す場合は、コマンドから『カード化』を選んでね」
具現化したままでは維持できないのか?
「対モンスター戦は、HPが0になると、所有しているカードが1枚だけになり、他はすべて失うの。対プレイヤー戦の場合もHPが0になると、手持ちのカードが1枚になるわよ」
負けた場合、カード1枚からのリスタートって事か。厳しいシステムだ。
リーナは続ける。
「対モンスター、対プレイヤーのどちらも勝利すればカードが1枚獲得できる。もし、パーティーメンバーがいる場合は、ランダムで誰かが獲得するわよ」
1人で倒せば確実にカードを獲得できるが、複数人だと誰が獲得できるかはわからない。しかし、仲間がいた方が戦闘は有利に進められるだろう。
「私から教えてあげられるのはここまでよ。あとは自分で調べてみてね。」
リーナは手を振るアクションをし、話を終えた。再度話しかけても手を振るだけで、会話は無い。
続いてヅカがリーナに話しかけ、「2.カードについて」を選んだ。
俺はヅカが使っているノートパソコンの画面を覗く。
リーナは先ほどと同じで、頷くアクションの後に話始めた。
「カードを獲得するには、いくつかの方法があるわよ」
1.カード屋から購入
2.バトルに勝利
3.ダンジョン等の宝箱
4.トレード
5.合成
「一般的には5つの方法。だた、購入とトレードはゴールドカード(Gold)、合成は素材のカードを失うわ」
もしかしてゴールドカードとは、通貨なのか?そうなるとカードのレアリティとして、ゴールドやシルバーがノーマルより良いとは限らないな。
「次に、獲得したカードを現実世界へ送る方法だけど」
「カード屋で手続きするだけでOKよ。ただし、手続きしたカードはこの世界から消滅するから、また使いたい場合は現実世界からの登録が必要よ」
なるほど。
「最後に、手持ちのカードは50枚までしか持てないから、余分なカードはお店に売るか、手続きをして空きを作ったほうが賢明ね。もし、50枚以上持っている状態でカードを獲得すると、ランダムで1枚手持ちのカードが消滅するから気を付けてね」
そういうと、リーナは手を振った。恐らく再度話しかけても同じアクションをするだけだろう。
「簡単なのか複雑なのか、際どいシステムだなぁ。まずはカード集めと行きたい所だけど、ハジメを探す方が優先かな」
ヅカが難しそうな顔をして言う。
確かにそうだが、今実際にプレイしている俺とヅカに変わった所は無い。このままプレイしていて、突然消えるなんて事があるのだろうか。
ハジメが居なくなった原因は本当にRATEなのか?




