1-4.セブンスカード
0時50分
もうすぐ陸が迎えに来る時間だ。
携帯が鳴る。
『はいはい?』
家の前に着いたという連絡だった。
俺はすぐに荷物を持ち靴を履く。
「こんな時間にどこに行くんだ?」
タイミング悪く親に遭遇。
『陸の家に泊まるから』
その一言を残し玄関を出る。そして目の前に停めてある陸の運転する車へ乗り込んだ。
『おまたせ』
かるく一声かける。
「じゃあ、行くか」
陸はエンジンをかけ、ショップへと車を走らせた。
俺の家から陸の家までは車で15分ほど。例のショップはそこから5分以内で着く。
実はもうかなり眠たい。少し寝ると伝え、助手席で仮眠をとることにした。
「着いたぞ」
陸に起こされる。携帯電話で時間を確認する。
『ん?4時?』
家を出て3時間も経っている。そんなに時間がかかるはずは無い。時刻設定がずれてるのか?どうなっているんだ…
「おはようさん」
ヅカの声が聞こえる。ここはどこだ。
起き上がって辺りを見渡すと「SEVENTH CARD」と書かれた看板があった。ここは駐車場のようだ。
『お、おはよう』
ヅカの顔が見えたので俺も返した。
「相変わらずの爆睡だったな」
2時間前にはこの場所についたが、俺はずっと寝ていたと陸は言う。
今度はヅカが話し始める。
「それよりさ、陸から聞いたぞ」
すぐにハジメの事だとわかった。ヅカとハジメはプライベートではまったく接点がない。しかし学校では比較的、会話はしている印象だ。
「とりあえずさ、俺も一緒にオンラインするよ。まー、RATEが手に入ればだけどさ」
そうだった。どのくらいの人が並んでいるのだろう。
しかし、二人がここにいるという事は誰も並んでないという事か。一応、聞いてみる。
『もしかして1番乗り?』
ヅカと陸は首を横に振る。
『えっ?じゃあ早くいかなきゃヤバいんじゃ?』
二人は顔を見合わせた。
「もう終わってるんだよ」
陸が言う。何が終わったのだろうか。まだ店が開くにはかなり時間があるはずだ。
「店の前に箱があってさ、その中に自分の名前を書いた紙を入れるようになってたんだ」
なんてことだ。まさかの抽選とは。
何番目に入れたかもわからないらしい。わざわざ深夜に来た意味がない。俺は寝てたわけだが…
『ってことは、俺の分も書いてくれたの?』
「行こう」
ヅカに連れられ店へ向かう。
遠くからでもわかる大きめの箱。街灯がある為、色は銀だとわかった。とても中を確認できそうもない。
箱には一本足がついていて、下のコンクリートに埋まっている。色以外はまんまポストだ。抽選のために設置されたのかこれ…
入口に着くと張り紙に気付く。
【箱の上にある用紙に名前を記入】【書き終えたら投函してください】
と2行書かれていた。
しかし用紙があっても書くものがないぞ、と思いながら箱の上を見ると、当然の如くボールペンが置いてあった。箱と紐で繋がっている。
用紙も箱の上にクリップで束ねられ置かれている。
この紙に名前を書けばいいんだな…
ふと用紙に目をやると、
【必ず本人が記入してください。不正した場合は購入できません。】
と不気味な文字で書いてあった。
RATEの世界観なのだろうと気にせず、名前を書き終え投函した。
あとは開店時間を待つだけだ。
「しっかし抽選とはなぁ」
ヅカが嘆く。情報通のヅカが知らないとは意外だ。
「あとは運次第だな。とりあえず車で寝るか」
陸の提案に俺とヅカは頷く。
8人乗りのワンボックスカーなので3人で寝るにも快適だった。




