5-8.SURRENDER
ボーン ボーン
5時の鐘が鳴る。
『こんな時に…』
「イッキ!早くこっち!」
バタン!
ダイニングから廊下へ出た俺とヅカ。廊下の窓から外を見ると、鍛冶屋がフェンリルにしがみ付いている。
「鍛冶屋さん…」
『ヅカ、よく見ろ』
外の寒さと吹雪により、鍛冶屋の体は半分凍っているのが遠目にもわかる。
『行こう…』
トイレと浴室に誰も居ないことを確認し、奥のワインセラーへ入る。
「お婆さん!!」
ヅカが大きな声を出す。
「ほっほっほ。どうじゃ、絶望からは逃れられそうか?」
『あの、今までどこに行ってたんですか?』
「この下の部屋じゃよ。音楽家が入って行くのを見たもんでの」
この部屋に地下があるのか。でもどうやって…
「どうやって行くのか?という顔をしとるのう。ワインの奥にあるスイッチを押すだけじゃ」
「本当だ。ここにスイッチがある」
ヅカがスイッチを押すと、床が開き、降りる階段が現れた。
『地下に何がある?』
「何にもない。ただの地下室じゃ。行ってみるか?」
「行ってみよう」
俺たち3人は地下室へと階段を降りる。何もない殺風景な部屋に着いた。
「ほらな。何も無いじゃろう」
『またスイッチがあったりしませんか?』
「無い無い。わしも散々探したが、この部屋は何にもない」
ズガァァァン!!ズガガァァァン!!
上で凄まじい音がした。ログハウスが壊れる音が続く。
「イッキ、ここに居れば安全かも」
『あぁ、そうかもな』
ドゴォォォン!!ドゴォォォン!!ドゴォォォン!!
地響きと共に地下へ降りてきた階段が塞がれた。ログハウスが完全に崩壊し、地上へ戻る事が出来なくなった。
「あれまぁ。これじゃどうにもならんわい」
「イッキ!どうする!このままじゃクエストから出られないんじゃ」
『そうだな。もうフェンリルの顔も拝めそうにないし』
「お主らはどうするつもりじゃ?」
『そうだな。そろそろクエストを終わりにするかな』
「え?」
「ほぉ。どうやって終わらせるんじゃ?」
『ヅカ、その婆さんを捕まえてくれ』
「え?どういう事?」
『このボウガンを見てくれ。もうボロボロで使い物にならない。残る武器は、そこにあるピストルだけだ』
「いやいや、そうだとしてもお婆さんを捕まえるって意味がわからない」
「まったくじゃ。さっきから何を言っておる。お前さんたちを仕留めてこのクエストは終わりなんじゃよ」
狩人は俺たちに銃口を向けた。
「どういうこと?あの銃に弾は入ってないんじゃ?」
『確かに最初は入ってなかった。でも、今はどうだろうか』
「それってかなりマズくない?」
「気にしなさんな。一瞬で終わりじゃ」
『ヅカ!』
俺は咄嗟にボウガンを投げつけた。
パンッ!
狩人が引き金を引いたが、間一髪外れた。
「危ないよ。お婆さん」
ヅカがピストルを蹴り上げ、そのまま狩人を羽交締めにした。
『さすが。鍛え方が違うな』
「任せて。しっかしびっくりした。一体どういう事?」
「放せ!年寄りをなんだと思っとるんじゃ」
狩人は必死にもがくが、ヅカはびくともしない。俺は落ちたピストルを拾い、弾を確認した。
『1発しか入ってなかった。それで2人相手は初めから無理だろ』
「はっはっは。もうお主はわかっているのじゃろ?」
『それじゃあ、答え合わせといきますか』




