5-6.SHOW
「おい!皆見ろ!」
鍛冶屋が叫んだ瞬間、全員が状況を察した。時計の針を壊しても秒針が進んでいた時点で、ここの誰もが予想はしていた。そして鐘が鳴った。
「触ったらダメだよ!!」
薬師が皆に注意する。触れてしまえば音楽家のように粉々になるだろう。
「やはり時計とカード番号が一致すると、氷像になるという仕組みのようですね」
「いやはや、それでは次はそれがしの番でござるな」
大工が放つ言葉を冷静に占い師が受け止める。
「何か防ぐ方法は無いのかよ!」
「占い師の次は僕ってことじゃんか…」
鍛冶屋と薬師も狼狽える。
「イッキ、何かいい方法はない?」
『占い師さん。ちょっといいかな』
「どうしたでござるか」
『この状況、そしてこの後の展開を占って欲しいんだけど』
「分かり申した。では、こちらへ」
占い師はダイニングテーブルにマットを敷いた。ポケットからタロットカードのようなものを出し、シャッフルする。
「それでは行きますぞ」
1枚、また1枚とマットの上に左から順に並べていく。
時計、氷、家、狼、薬、死神、太陽のカードが並んだ
他のみんなは沈黙したまま、占い師の出すカードを見ている。
「大まかではござるが、時計と氷はやはり繋がっておるようじゃな。家は逆さまに表示されているので、破滅や崩壊を暗示していることになる。狼を薬で仕留める事でその先は明るい」
「じゃあ、薬師が狼を倒す薬を作れば良いって事だな!」
「いやいや、僕はそんなもの作れないよ。それに狼ってどこにいるのさ」
「さっきの大神ってやつがやっぱり怪しいよな!」
鍛冶屋が薬師に早く薬を作るよう急かす。
「祟りじゃ。祟りじゃ」
狩人は両手を擦り合わせ、何かを祈っているようだ。
『占いの結果に沿うなら、まず狼を倒す薬を作ろう。ここは薬師、お前の協力が必要だ。どんな材料が必要だ?』
「わかったよ。やってみる。適当にキッチンの材料を見繕って作るから大丈夫」
『そうか。助かる。何か必要なものがあれば言ってくれ』
薬師は薬作りに取り掛かる。その間に何かできることがあればいいが。
ヅカが俺の耳元に囁く。
「あのさ、狼ってなんだろ。もしかして人狼?って事は、この中に氷像を作る犯人がいるんじゃ?」
俺もその線は考えていた。時間になったと同時に氷像になる。密室故に外部からのアクションがあるとは考えにくい。
『あぁ、俺もそう思ってた。誰かがスキルで凍らせてるんじゃないかって。でも、それを言えば完全に混乱状態になるはずだから、余計に犯人の狙い通りになるんじゃないか?』
「確かに。まず犯人の狙いと方法を見つけないとな」
『あぁ。それじゃあ、俺は薬師と大工を見ておくから、ヅカは鍛冶屋と狩人から目を離さないように頼む。占い師はこのターンで氷像になるかどうかで判断できる』
「オッケー。了解」
ヅカは親指を立て、任せろという表情をしながら、少し離れた場所に移動した。
ボーン ボーン
3時だ。
やはり占い師は氷像と化している。
「やべーぞ!薬師、まだ薬はできねーのか!」
「まぁ、子どもが頑張ってくれているのだから、もう少し待ってみましょうよ」
「祟りじゃー。祟りじゃー」
薬師、鍛冶屋、大工、狩人が残っている。番号も4〜7と、このまま行くと次で半分消える事になる。
「お待たせー。やっとできたよ!って…」
『あぁ、占い師も同じ状態だ』
「でもこの薬があればたすかるんだよね?!」
『あぁ。きっと大丈夫。これを狼に飲ませさえすれば…」
ビューーーーーー
ビューーーーーー
建物の外はさらに吹雪が増している。
[時計、氷、家、狼、薬、死神、太陽]
「大体、狼なんかおらんぞ!」
「同感ですね。狼が出てこない事には、薬も飲ませられない」
鍛冶屋と大工は頭を抱えている。そんな時、
「ワオーーーーーーーーーン!!!!!」
「!!!!!!」
一同は目を見開いた。確かに狼の遠吠えらしきものが聞こえた。
ビューーーーーー
ビューーーーーー
風の音と聞き間違いかとも思ったが、全くの別物だった。
ドガーーン
『え?』
ビューーーーーー
突然壁に穴が開き、そこから風が吹き込んできた。そして穴からは大きな目が、こちらを見ている。
ビューーーーーー
凄まじい風の勢いで、ダイニングテーブルに置いてあった皿やグラスが飛び交う。
カシャーーーーン
皿が占い師の氷像を直撃。すると一瞬で粉々に砕け散った。シェフの氷像も風で倒れてしまい、跡形もない。凍てつく吹雪が室内の温度を下げ、体温もどんどん奪われていく。
『なぁ、ヅカ。3時の瞬間、鍛冶屋と狩人は怪しい動きしてたか?』
「いや、全く問題ない。変わった様子はなかった」
『って事は、さっきの遠吠えが狼で決まりって事だな』
「そうなるね。しかし、あれって狼にしては大きすぎない?」




