5-5.SECOND
「私はワインのセッティングはしていません」
なんだって?ワインはシェフが用意したものでは無いのか。
「隣の部屋の奥にワインセラーらしきものがありましたよ」
さわやかな大工が教えてくれた。
「おい、待てよ。俺もワイン飲んじまった…」
「確かに鍛冶屋さんも飲んでいたでござるな…」
『いや、まだワインと決まったわけじゃない。むしろ鍛冶屋も飲んでいたなら、ワインの可能性は低くなる』
「じゃあイッキ。他に何が考えられる?」
『まだ確定では無いけど、数字じゃないかな。音楽家は1番目のカードだった。1時になった瞬間に氷像になった。偶然とは考えにくい…」
「ちょっと待ってくださいよ。そうなると今度は私の番じゃないですか!」
そういう反応になると思い、あまり口にはしたくなかった。だが、今のところ一番可能性が高いのは、カードの順番と時刻が一致するという事。
「本当にそうかな?1番と1時というのは少々都合が良すぎやせんか?」
「ばーちゃんは何か知ってるの?」
子どもの薬師が尋ねる。
「わしゃあ見たんじゃよ。あの娘が別の部屋でコソコソしておったのを。何かを探してるように見えたのぉ。触れてはいけない物に触れた祟りじゃろう」
「また祟りかよ。ばーさん、そんなもんに殺されたら死んでも死にきれねぇ。ワインは俺も飲んでたから違うってそこの兄ちゃんが言ってたから、やっぱり順番だろ」
鍛冶屋は見た目に反して柔軟性がある。
「順番ということは、次はやはり私の番ですね。それでは最後にとっておきの料理を作っておきますよ」
「待て待てシェフどの。まだ助かる方法があるかも知れぬから、諦めるには早い」
『その通り。氷像になる条件が順番、時間だと仮定した場合、時計が2時にならなければ良いんじゃないか?』
「なるほど!さすがイッキ、やるねー」
「2時まであと10分です。まずは時計を止めましょうか」
『あぁ、大工と鍛冶屋で時計の針を折ってくれ』
「あ?壊すって?そんな事して大丈夫か?」
「確かにそうですね。時間の確認ができなくなる上に、針がなければ時間が経過しないという保証もありませんし」
鍛冶屋と大工は乗り気ではない。2人の主張はもちろん想定内だし、言ってることは間違いではない。
「いえいえ、やりましょう。私がやってみます」
シェフは柱時計の前に立ち、時計の針を掴み、全体重を乗せて引っ張った。
「んー!やー!」
シェフ1人ではびくともしない。
「わかったよ。やれば良いんだろ」
鍛冶屋も手伝いに入るが、一向に時計の針は折れることは無い。
「わかりました。私も手伝います」
大工も加わり、3人で時計の針を壊そうと引っ張る。
バキッ!!
分を刻む長針がようやく折れた。短針がもうすぐ2時に辿り着きそう。そして秒針が時を刻む。
「やった。これでシェフを救えるねぇ」
ヅカと一同はホッとした表情をしている。
「皆様、ありがとうございます!」
シェフも不安まじりの表情から一変、安心した様子だ。
ボーン ボーン
2時の鐘が部屋に響く。




