1-3.予感
『試した?』
予想はできたが、念のため陸に尋ねた。
「たぶんアイツ、オンラインしたんだと」
陸は覇気のない声で言う。
【RATE-ON-LINE】
掲示板「Life」で今1番賑わっている話題。その内容は「ON-LINEは絶対にやるな!!」
人というのは不思議なもので、踏み込んではいけない領域であればあるほど興味をそそられる。禁断の果実を遺伝子が欲しがってしまうからだ。
なぜON-LINEはしてはいけないのか?
答えは複雑なようで単純だ。
【プレイヤーが消える】
熱中しすぎてやめられないわけではない。ログインと同時にそのプレイヤーが消える。
体験したという書き込みもあった。
そんな話が実際あるはずがない。所詮はゲーム、人の創った世界だ。
そもそも消えるのなら何故体験した人がいる?消えたのに現れる?まるでマジックだ。
「…聞いてた?」
色々考えている間も陸の話は続いていた。
『あっ、ごめんごめん』
考え事をしていると時折自分の世界に入ってしまい、周りが見えなくなる。悪い癖だとよくヅカにも注意される。
「だからさ、俺もオンラインやってみるわ」
陸は【RATE-ON-LINE】が原因で、元がいなくなったと断定している。
消えるのは遠慮したいところだが、RATEには興味がある。もちろんオンラインにもだ。
そもそも消えるわけがない。
1人で試すより仲間がいた方が陸も心強いだろうしな。
しかしまずRATEが無い。明日かぁ…
悩んだ末、陸に言った。
『俺もオンラインやるよ。だから明日一緒に並ぼうぜ』
「でも親がうるさいのでは?」と陸は気を利かせる。
問題ないと伝え、明日の約束をし通話を切った。
明日というよりも今日の夜中か。
ヅカとの待ち合わせは午前二時。一時頃に陸が家まで迎えに来てくれる。
陸は18歳になってすぐに車の免許を取っているから、よくみんなの足がわりになっている。さすがに車は親のものだが。




