2-5.VERSUS
オサムという男がバットを振り回しながら走ってきた。
「どうするよイッキ。2対1なら俺らのほうが有利っぽいけど」
人数だけならこちらが有利。しかし、オサムの手の内がわからない以上、油断は禁物だ。
「キェェェー!やってやるゼェェェー!!!」
オサムは奇声を発しながら攻撃してきた。
しかし、俺はすんなり避けた。
良い所で【華麗なるフットワーク】のスキルが発動した。
プレイヤー戦は極力避けたいと思っていたが、とても話が通じるような相手ではなさそうだ。とりあえず説得を試みたが、全く聞いてはくれない。
更に攻撃を仕掛けてくる。
「カードをよこセェェエー!!キェェェー!!!」
しかし俺に攻撃は当たらない。今度はヅカに向かっていく。
オサムがバットを振りかぶったその時…
「ギャァァァー!!!」
オサムは地面に倒れた。すると魔法陣が現れ、オサムは吸い込まれていった。
ふと後ろを見ると、そこには薙刀を持った女性と、その後ろに男性2人が立っていた。
「志乃さん!」
ヅカが驚いた表情で言う。そう、その女性は集会所でアドバイスをくれた志乃さんだった。
「大丈夫?随分と危ない感じの人だったから、つい加勢しちゃった」
志乃さんの武器は薙刀か。リーチが長く、多少離れていても攻撃ができそうだ。
「いえいえ、助かりました」
ヅカは軽く会釈をした。
「紹介するわ。この2人は私の仲間。今もパーティーを組んでるの」
1人は背が高く、志乃さんより年上っぽい。もう一人はヅカと同じくらいの身長で、年齢も俺たちと変わらないくらいだろう。
「背の高いほうが志楼、そしてもう一人が志々真。仲間というよりは、兄弟なんだけどね」
「最初に弟の志々真がRATEに入っちゃって、私と兄が探しに来たってわけ」
なるほど、同じ境遇か。しかしよく見つけられたものだ。
「どうやって合流できたんですか?」ヅカが尋ねる。
「RATEの中には【ギルド】っていう組合があって、たまたま所属したギルドに志々真が居たの」
『そのギルドってどうすればいいんですか?』志乃さんに思わず聞いた。
「ギルドは既存のギルドに入る方法と、自分で新しいギルドを作成する方法の2種類あるの。既存のギルドに入る場合はお金が必要になる。自分で作る場合は、いろんな条件を満たす必要があるの」
「お金を払う場合も、条件を満たす場合も個人差があるから明確ではないんだけどね。私の場合は1,000ゴールドで加入できたけど、兄さんは15,000ゴールド必要だったわ」
「ギルドは【アリス】にある【ギルド連合】に行けばわかるよ。詳しく教えてくれるから行ってみて」
『ありがとうございます』
「ちなみに私たちがいるギルドは【OZ】っていう名前だから、気が向いたらおいでよ」
【OZ】か、覚えておこう。
「そういえば、さっき倒した人はどうなるんですか?魔法陣に引き込まれて消えましたけど・・・」
完全に忘れていた。オサムは何処に行ったのだろう。
「あぁ、あの人はセフィラムに居るはずよ。バトルで負けた人は近くの街に強制送還。そして手持ちカードは残り1枚になる。」
ってことは、アイテムやウェポンだけになっても絶望的だな。
「ちなみにウェポンが残るなら運が良い。自分で装備すればバトルの時に使える。一撃受けたらアウトだけどね」
「ウェポン1枚しかない状態で攻撃を受けるとアウト?」
「ウェポンを装備した時点で手持ちが0枚になるでしょ?その状態で負けちゃうと復活しても0枚スタート。というより、実質ゲームオーバーね」
実質ゲームオーバーって、この世界から抜け出すことも出来ないし、カードを集める事もできないじゃないか。そんな状態になれば、このゲームの住人として生きていくしかない。
ウェポンはバトルできるだけマシってことだな。
「あと、カードのトレードはそのカードに見合ったゴールドが要求される。良いカードが残ればそれをトレードして、ゴールドを増やした後、カード屋である程度揃えたりできるかな。ちなみにカードのトレードは出来るけど、譲渡はできないから」
トレードというよりは、カードの実質売買だな。そしてバトルで負けた時のリスクが大きすぎる。




