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RATE  作者: 恵 奏香
2章
11/19

2-1.ENTRY

「イッキ・・・ イッキ・・・」


ん?誰かが呼んでる?


「イッキ イッキ」


次第に声がハッキリしてきた


「イッキ!起きて!」


眠たい目を擦りながら、俺は声の主を確認した。


驚いたことに、そこにはヅカが立っていた。


「やばいよイッキ!大変だ!」


何のことを言っているのか、さっぱりわからない。


しかし、ヅカの慌て方が尋常ではない。それにしても、いつの間にヅカは俺の家に来たのだろうか。ヅカに聞こうとしたその瞬間、俺は察した。



ここは何処だ。



俺の部屋ではない。壁もレンガ造りで西洋風の内装。しかし、なんとなく見覚えがあるような気もする。


するとヅカが真剣な眼差しで俺に説明する。


「たぶん、というよりはかなり高い確率で、ここは【RATE-ON-LINE】だと…」


何を言っているのだろうか。夢?


まぁ無理もない。ここ2、3日はRATEの事ばかりだったからな。夢くらい見るだろう。


「ちなみに、これは夢じゃない」


見透かされたような言葉。むしろ夢であってほしい。嫌な予感しかしない。


「家に帰ってねたはずなんだけど、目が覚めたら此処にいたんだ。そしたら横のベッドにイッキが寝てて…」


なるほど、俺と同じだ。


しかし、まだ此処がRATEだと決まったわけじゃない。俺はヅカに一旦外へ出ようと提案した。


部屋からでると、見覚えのあるお婆さんがカウンターにいた。


間違いない。【RATE-ON-LINE】の宿屋にいたお婆さんだ。


俺たちに気付いたようで、深々と頭を下げ言った。


「またよろしくお願いします」


建物から出て振り返ると、宿屋の看板があった。


やはりRATEの中なのか。


西洋風の建物がいくつも立ち並ぶ街並み。そしてたくさんの人。


その中に泣いている子どもの姿があった。思わず駆け寄った。


『どうしたの?』


現状がわからないだけに、こんな言葉しか出てこなかった。


「パパとママに会いたい…」


その子は涙声で言った。


『名前は?』


修斗しゅうと


歳をたずねるとまだ12歳だという。


『いつからここにいるの?』


「わからない・・・」


そう言うと、修斗は一瞬笑顔になり去っていった。


追いかけようとしたが、少年の姿はすでになかった。


「なんだったんだろう」ヅカが不思議そうに言う。


少し話を聞くつもりが、少々急ぎ過ぎたようで反省した。去り際に表情が一転したのも気になったが、今はそれどころではない。


此処がどこなのかをハッキリさせなければ。


少し歩くと【集会所】と書かれた看板が見えた。やはりRATEと同じだ。


ヅカと相談し、入ることにした。

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