2-1.ENTRY
「イッキ・・・ イッキ・・・」
ん?誰かが呼んでる?
「イッキ イッキ」
次第に声がハッキリしてきた
「イッキ!起きて!」
眠たい目を擦りながら、俺は声の主を確認した。
驚いたことに、そこにはヅカが立っていた。
「やばいよイッキ!大変だ!」
何のことを言っているのか、さっぱりわからない。
しかし、ヅカの慌て方が尋常ではない。それにしても、いつの間にヅカは俺の家に来たのだろうか。ヅカに聞こうとしたその瞬間、俺は察した。
ここは何処だ。
俺の部屋ではない。壁もレンガ造りで西洋風の内装。しかし、なんとなく見覚えがあるような気もする。
するとヅカが真剣な眼差しで俺に説明する。
「たぶん、というよりはかなり高い確率で、ここは【RATE-ON-LINE】だと…」
何を言っているのだろうか。夢?
まぁ無理もない。ここ2、3日はRATEの事ばかりだったからな。夢くらい見るだろう。
「ちなみに、これは夢じゃない」
見透かされたような言葉。むしろ夢であってほしい。嫌な予感しかしない。
「家に帰ってねたはずなんだけど、目が覚めたら此処にいたんだ。そしたら横のベッドにイッキが寝てて…」
なるほど、俺と同じだ。
しかし、まだ此処がRATEだと決まったわけじゃない。俺はヅカに一旦外へ出ようと提案した。
部屋からでると、見覚えのあるお婆さんがカウンターにいた。
間違いない。【RATE-ON-LINE】の宿屋にいたお婆さんだ。
俺たちに気付いたようで、深々と頭を下げ言った。
「またよろしくお願いします」
建物から出て振り返ると、宿屋の看板があった。
やはりRATEの中なのか。
西洋風の建物がいくつも立ち並ぶ街並み。そしてたくさんの人。
その中に泣いている子どもの姿があった。思わず駆け寄った。
『どうしたの?』
現状がわからないだけに、こんな言葉しか出てこなかった。
「パパとママに会いたい…」
その子は涙声で言った。
『名前は?』
「修斗」
歳をたずねるとまだ12歳だという。
『いつからここにいるの?』
「わからない・・・」
そう言うと、修斗は一瞬笑顔になり去っていった。
追いかけようとしたが、少年の姿はすでになかった。
「なんだったんだろう」ヅカが不思議そうに言う。
少し話を聞くつもりが、少々急ぎ過ぎたようで反省した。去り際に表情が一転したのも気になったが、今はそれどころではない。
此処がどこなのかをハッキリさせなければ。
少し歩くと【集会所】と書かれた看板が見えた。やはりRATEと同じだ。
ヅカと相談し、入ることにした。




