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RATE  作者: 恵 奏香
1章
10/20

1-9.BATTLE

「しっかし探すといっても他のキャラクターすら居ないんだよなぁ」




ヅカは独り言のように呟く。




「とりあえず外に出てみない?」




陸が言う。




確かに陸の言う通りに、俺たちは城下町の門を抜け、外へ出た。




そこには平地がただただ広がっているだけの景色だった。




しばらく周辺を探索すると、何か動いているものが見えた。するとその何かはどんどん近づいてくる。




「なんだあれ」




ヅカも気付いたようだ。




近くに来てやっとわかった。モンスターだ。人型だからプレイヤーかと思ったが、上部に【!】マークがついている。




更に近づいてくると、頭上に【傭兵】とあり、名前の下には【100/100】と書かれた青いバーが確認できる。




最初の敵だけにそれほど強くないだろう。




すかさずメニューからカードを選び、バトルカード【黒服の男 アーサー】を選択。




俺のキャラクターは空にカードをかざす。すると少し先に魔法陣が描かれ、キャラクターの前に【黒服の男 アーサー】と頭上に書かれたキャラクターが現れる。名前の下には【300/300】の表示。バーの色は同じく青い。




この数字はたぶんHPだ。傭兵より多いので有利な気がする。




するといきなり傭兵は斧を振りかぶり襲い掛かってきた。




しかしアーサーは軽く身をこなし避ける。というより武器を持っていないので、避けるしかないようだ。




すぐにメニューからウェポンカード【美容師のハサミ】を使った。




先ほどより小さな魔法陣からハサミが出てきて、アーサーの手元へ飛んで行った。




アーサーはハサミで攻撃する。




【傭兵 50/100】




50のダメージを与えたようだ。相変わらず傭兵の攻撃はアーサーに当たらない。アーサーすごいな。かなり良いカードを引いたのではないだろうか。




すると突然、傭兵が倒れた。




横にはエプロンをした男性が、鍋を振り下ろしていた。




アーサーと同じ【C】のマークがついている。名前を見ると【見習い料理人 マモル】と書いてある。




「余裕だったね」




どうやらヅカが手助けしてくれたようだ。




「あ、俺にカードがきた。ごめん」




そういえば俺とヅカはパーティーではないはず。すると最後の一撃を決めた人にカードの獲得件があるのだろうか。




助かったので問題ないと伝え、パーティーを組もうと提案した。




メニューを開くと、カードの項目下にパーティーというコマンドがある。選択後、対象を選ぶカーソルが出てきたので、ヅカを選ぶ。




俺とヅカの頭上に【P】のマークがついた。




「これでパーティーを組んだってわかるわけだね」




ヅカは妙に喜んでいる。確かに1人よりは心強い。




そういえばヅカの獲得したカードは何だったのだろうか。




「なんだこれ、普通すぎる」




ヅカは俺が聞く前にカードを確認していた。




・【薬草】アイテム レベル1 ノーマル




まさにアイテムの基本だ。最初の敵だからそんなものか。効果はおそらく回復だろう。しかし、カードの効果について一切記載がないのがRATEの不親切な所だ。ある程度、名前と絵を見ればわかるけど…




【黒服の男 アーサー 100/300】




なんだ?突然アーサーのHPが減ったぞ。




【見習い料理人 マモル 100/250】




「うぉ!減ってる」




ヅカのバトルキャラクターもダメージを受けている。




周囲を見渡すようにアングルを変えると、そこには先ほど倒したはずの傭兵が立っていた。




「なんだこいつは!」




マモルが傭兵を攻撃した。




【傭兵 150/200】




なんてことだ。傭兵のHPが増えてる。




「さっきアーサーの攻撃は50のダメージだったから、今回はそれじゃ倒せない!次喰らったらやられるぞ!」




陸が冷静に分析する。




確かに。これでやられては俺もヅカもカードが1枚になってしまう。俺とヅカのキャラクターにはHPが無いので、恐らくバトルキャラクターがやられればアウトだろう。




ヅカにそれを伝えようとしたが、すでに理解しているようで俺と目が合うと頷いた。




そして2人ともセフィラムへ向かって逃げる。




何とか無事、街についた。どうやら傭兵は街に入れないようだ。




「助かったね。まさか起き上がってるとは思わなかったし・・・それよりも回復しないとだなー」




回復なら宿屋だろうと、ヅカは歩き出した。




カードの回復ならカード屋だろ。そう思ったが、とりあえず俺も宿屋へ向かった。




ん?そういえば、俺達にはHPが無い。それならカードを出さなければダメージを喰らう事は無いのでは?むしろバトルを回避できるかもしれない。




いや、逆だ。HPが無いという事は、一撃でも喰らった時点で倒されるかもしれない。どちらかハッキリしないうちは、リスクを考えるとカードは使うべきか。




宿屋はすぐに見つかった。中に入ってみると、カウンターにお婆さんがいた。このお婆さんもNPCだ。




さっそく話しかけると、「いらっしゃい。4名だね。1泊の支払いはノーマルカード1枚だよ」




召喚しているカードは人扱いか。それなら回復もできそうだ。しかもカードで支払いか。俺のノーマルカードはバトルとウェポン、それとリベンジ。支払いに使うのは惜しい。




「それなら俺の薬草を使おう」




そういうとヅカはNPCに薬草を渡す。




「それじゃあ、薬草をもらうよ。ついでにセーブするかい?」




宿屋でセーブできるのか。俺とヅカは一旦セーブし、ゲームを中断する事にした。




「普通のゲームだったな…」




陸は不満そうに言った。




確かにそうだ。『Life』で噂になっているようなものではなかった。




カード集めをしたり、もう少しプレイすれば何かわかるかもしれないが、ヅカも陸もあまり寝ていない為、ひとまず解散することにした。




帰りはヅカと一緒に駅へと向かった。




「ほんとうにハジメもオンラインしたのかな?」




ヅカは考え込む。結果として、オンライン自体は何も無かった。また帰って試してみようと話をした。




駅に着くと、お互い違うホームへ向かった。帰る方向が逆なので、向かいのホームにヅカの姿が見える。




電車が来るまで携帯で『Life』を見るが、特に目新しい情報は無かった。




ようやく電車が来たので乗り込む。ヅカが向かいのホームから手を振っていたので、俺も軽く手を振り返し、帰路についた。




自宅に到着した俺は部屋のベッドに横たわり状況を整理する。




人が消える噂。これについては不明。現に俺とヅカは消えてはいない。




ハジメの行方。もう1週間も家に帰っていない。陸はRATEが原因というが、あくまで噂に状況を重ねただけ。事故などであればすくにわかるだろうし、ただの家出なのか?しかし家出については陸が否定していた。結局、ハジメの手がかりも無し。




RATEの目的。普通に考えれば収益だろう。しかし、カードが無料で送られてくるならそれも違うことになる。そもそも、そんな情報はどこにもなかった。




考えても何もわからない。




色々と考えているうちにいつの間にか眠っていた。




そして俺はようやく気付く。




そう、RATEはまだ始まっていなかった。

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