いざ
8月1日 時刻は5:50 天気は快晴。
前日、いつもより早く寝たおかげか
気持ちよく目覚める事ができた。
力いっぱいにカーテンを開けると
目を逸らしてしまうほどの眩しさが部屋に注がれた。
絶好の出発日和である。
食パンとヨーグルトを急いで食べ、
一通り身支度を済ませた私は玄関の扉を開ける。
その刹那、早朝の涼しい風が一気に体に流れた。
夏の香りを運ぶ風は息を呑むほどに澄んでいた。
鍵を閉めた私は、通学用に、と
高校入学祝いで母が買ってくれた白い自転車に跨り、
近場では有名な神社へと向かう。
私という人間の、小さくて、大きな一歩が
家の駐車場を抜けた、6:30。
行動予定表によると、11時には神社に到着。
神社には2時間滞在するとしても、
同じ道を戻るので、遅くとも18時には
家に帰れる計算だ。
一度も家に帰らず何処かで寝泊まりすることも
考えたが、15歳という身分。
補導なんかで警察の世話にはなりたくなかった。
悠々とペダルを踏み、あっという間に
高校の前を横切った。
気分が上がっているからか、不思議と
いつもより速いペースで走れていた。
それにしても、何気ない日常の風景とは、状態次第で
こんなにも綺麗になるのか、と少し驚いた。
前日の大きな水たまりには日が反射して
まるで宝石のようで、見入ってしまった。
高校のスタートとは真逆に、
旅は怖いくらいに順調なスタートを切っていた。