15年
あなたの今まで生きた人生はどんなものですか?
7月、蒸し暑い体育館に全校生徒を集めて
ある芸能人が講演会を開いた時。
唐突にこの質問が投げかけられた。
まだ若い高校生には少し早く、かなり硬い質問。
持参した小型扇風機で髪を靡かせる生徒や
足を崩し、首を上下に振りながら寝る生徒。
おそらく真面目に話を聞いてる者は少数派だ。
15歳の私はその少数派にいた。
しかし、私はこの類の質問にめっぽう弱い。
包み隠さず『退屈でした』とでも言えばいいのだが
この類の質問をする奴は必ずといっていい程
『小さいことでもいいから』と
私の人生に主題を持たせようと粘ってくる。
そういうのが面倒で、
なんだか自分が惨めになるから、
私はこの類の質問が嫌いになった。
『退屈でした』なんて、達観して
余裕があるような口ぶりをしているが、
別に今の退屈な生活に満足しているわけではない。
できれば友達も彼女も欲しいし、
【普通の青春】というものを味わいたい。
ただ、そんなものは夢のまま終わるのだろう。
高校1年の1学期で友達を作れなかった奴は
卒業までずっと1人ぼっち。
そんなことは馬鹿な私でもなんとなく勘付いてた。
体育館の外ではやかましく蝉が鳴いていた。
もうすぐ夏休み。
他の奴らは友達や彼女と遊ぶのだろう。
内心、それが羨ましくて仕方なかった。
私は、奴らに負けない思い出を作る為に、
自分を少しでも変える為に、旅に出ることにした。
積乱雲の立つ夏の青空の下、
負け犬が大きな計画を立てた。