第四章 緊急時の緊急 一話
その日が無事に終わり、何とかトードたちは無事生き残った。
今日だけで医学生たちは三十人余りが落第してしまう事になった。
どう考えても、そんなペースでは、候補者とも言える医学生たちは消え去るのでは? と思うかもしれないが、ダージュが医療界のトップに君臨してからと言うもの、医者や外科医には、高額な給料が供給されるのだ。
そのため、医学生や外科医を目指す人たちがひっきりなしにその道に足を運んでしまう。
百人中、最終的に生き残れるのは僅か一桁。
それに反論しようものなら、政府が黙っていない。
これには政治的な問題が含めれていた。
この世界の秘密とは?
そんな日が続く中、とある研修中だった。
「大変だ! 近くでビルで爆発テロが起きて、死傷者が大勢出てる!」
一人の医学生が、研修室に居るトードたちの部屋に大慌てで入ってきた。
「それで急患患者は何人こっちに搬送されるの?」
イムがコップ一杯の水をその医学生に差し出しながら落ち着かせる。
医学生の男はその水を一気飲みし、一度深呼吸をする。
「死亡者は八十人以上、重症の患者が五十人以上、軽傷者八人くらいだ」
「ならあれが来てもおかしくないな」
「ああ。またとないチャンスだ」
近くに居た医学生たちが、何か悪だくみでも考えているかのようにヒソヒソ話をしていた。
それにトードはうんざりする様にして、自分自身を恥じた。
実は、緊急時による患者が、十人以上一つの医療機関に搬送される際、現時点の外科医だけでは数が足りない。
なので、緊急時にのみより、医学生たちが患者のオペを一任されるのだ。
だが、実際は主に助手だが、ライアやカズイの様に、有能な医学生たちは、一人の患者にメインとしたオペが任されるのだ。
それらは仕事と見なされ、上手く立ち回れれば、報酬が貰えるだけでなく、一気に卒業試験にまで上り詰めることも出来る。
トードたちは、まだ二年の研修期間があった。
だからこそ、少しでもダージュに、有能と判断されれば、一気に卒業試験にまでこぎつけられる。
だからこそ、トードは自分を恥じたのだ。
患者は助けたいと言う反面、卒業試験にまで上り詰めたいと言う欲望が脳裏に過り、そんな自分を自嘲したくなる気分に。
「ライア・ペンサー! カズイ・コーター! ネムイ・スペンサー! ダージュ先生がお呼びだ! 今回の救急搬送された患者の処置に当たれと言う事だ! 今すぐ現場に出頭しろ!」
「「ウイッウイー!」」
三人は素早く起立し、姿勢を正し、教官のウイリーに敬礼する。
鋭い眼光を向けたまま、ウイリーはその場を去っていった。
「んじゃ行って来るな」
「ああ。三人とも、武運を祈ってるよ」
「おう」
ライアはこれから死地に向かうと言うのに、ニンマリした元気な笑みを向け、別れの言葉を継げると、トードが身を引き締め、言葉を返す。
カズイも落ち着いた様子で返事をし、ドアに向かって行く。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回の投稿はここまでです。
次回からも是非ご一読ください
宜しくお願いします。