表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/43

第三章 もてなし 三話

 トードも医者の端くれ。何度も縫合や糸を解く練習を積み重ねていたため、これくらいなら容易でもある。


 「待ってくれ!」


 「……懲りないわね。本格的に縫合するわよ」


 諦めない姿勢で果敢に、ネムイを呼び止めるトードだったが、ネムイは辟易とした態度で足を止め振り返ると、鋭い目つきで糸を通した針を見せつける様に構える。


 「い、いや、少しだけでいいから話を聞いてくれ。僕にも譲れない物がある」


 「あら、少しは気概はあるのね。何かしら?」


 トードがやたら真剣な眼差しな物だから、ネムイは意外そうな表情で、少しはトードを見直し、話を聞いてやる事にした。


 「さっきアッシュも言っていたけど、お人好しのままでいると殺されると言うのは百も承知だ。けど、カズイがこう言っていた。患者とは心を寄り添ってこそ、医者の本懐だと。だから僕は、一人の医者として、人間として、他人との繋がりを大事にしたいんだ」


 真剣な眼差しで訴えるトードに、安保らしいと言わんばかりに鼻で笑うネムイ。


 「それはカズイだからこそ言える妄言よ。あのチビ紳士は知識、力、経験は、私たちの同期の中では群を抜いている。けど、凡人の様なアッシュや貴女の様な人種は、綺麗ごとだけでは生きていけないわ。それに見合う対価を払ってこそ、発言する資格がある。貴女の様な人間は、卑怯と言う矛を持ってこそこの業界で、やっとの思いで生き残れるのよ。理解してるの?」


 嘲笑うかのように、吐き捨て口をするネムイ。


 しかし、トードは怯むことなく、ネムの前に堂々とした態度で立っていた。


 「なら今の僕は? 君の言う卑怯な方法を使わなくても、今、こうして生きて、学問に専念している」


 キリっとした目で言い放つトード。


 それに対して少し、意外そうな表情をするネムイ。


 すると、ネムイは相手にするのが馬鹿々々しくなったのか、鼻で笑うと、トードに背を向け去っていった。


 言い返せなくなり去ったのか?


 それとも、ネムイなりのロジックがあり、言うだけ馬鹿らしく思えたのか?


 真実はネムイだけが知るまま、トードは少し憂鬱になってしまった。


 ネムイやアッシュの言う事も一理るのだ。


 現に、ダージュは知識、経験だけでなく、そこに武力と言う力を望んでいる。


 全く、無意味とも思える事だが、後に語られる真実が、その答えとなる事を、トードも理解していた。


 一体、ダージュが新たに実装した新システムとは?


ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回で第三章は終わりです。

次章からも是非ご一読ください。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんにちは* 投稿、いつもお疲れ様です( ^^) _U~~ ネムイの言葉は興味深いですね。 含みがある立ち去り方、彼女の事はとても気になってしまいます。 カズイの言う事も、トードが目指したいとしてい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ