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第十章 向けられた目 十話

 ネムイはデスクに着くとその机の上に乱雑に置かれている紙を見るが、先程アッシュが言ってたように、これと言った事も書かれていない、入院患者や通院患者のカルテぐらい。


 何も成果がない事にがっかりするネムイ。


 しかし、諦めず今度は引き出しを見てみる。


 一つしかない引き出しを開けてみたが何もなかった。


 再び肩を落とすネムイ。


 しかし、ふとある異変に気付く。


 それは引き出しの箱の高さだった。


 引き出しの底まで、約3センチの高さ。


 しかし、立体的に見てみると、引き出しの外から底まで、高さが7センチもあった。


 異変に気付いたネムイはすぐさま皆を呼ぶ。


 「ねえ、何かおかしいわよ。この引き出し」


 どれどれ、と言った様子で、集まるアッシュたち。


 「ん? 確かに変だな」


 再び確かめたアッシュもそれを感じ取った。


 「二重底だな」


 「ああ。おそらくこの二重底の中に何か隠してるのかもしれない」


 確信の答えに、ネムイが一重目の底を引きはがそうとした。


 「待て。もしかしたら罠の可能性もある」


 「たしか、無理やり取ろうとしたら発火したり爆発するとか、そう言うの映画で見たことあるぜ」


 カズイがネムイを静止させ、思った事を口にすると、アッシュが納得したかのようにコクコクと頷く。


 手を止めたネムイを横に、ライアが引き出しの底を注意深く観察する。


 「あ、なんか外側の底の方に小さい穴があるぞ」


 「穴?」


 訝しい目で底を観察する一同。


 すると、カズイが顎を摘まみ、思案する。


 その五秒後、カズイは何か閃いた。


 カズイは怪訝な目で自身の胸元のポケットに目を向ける。


 その胸元にあるのは、ボールペンだった。


 「それ、医学生時代に支給されたボールペンよね」


 「ああ。このボールペンは当時から普通のボールペンと少し違いがあった。やたらと細く、インクの芯をただセラミックで加工したと言うよりも、ただ芯の上セラミックを貼った感じに近いイメージのボールペンだ」


 「もしかしたら、これのギミックを解くための? でも、こういうのって、特定の人に与える物だろ? こんな重要そうな仕掛けを解くための特別なボールペンを、全員に支給するレベルの物に、価値何てあるのか?」


 「分からない。だが、この底の穴と、このボールペンの幅はピッタリと一致するはずだ」


 「まあ、見て明らかだしな」


 「試してみる価値はあるわね。これ以上、何も浮かばないし」


 各々が懸念する中、出した答えは満場一致。


 だが危険を感じるのも事実。


 危惧しながらも、ボールペンをゆっくりと穴に入れていくカズイ。


 すると、カチッと音が鳴り何かにはまったボールペン。



 その後は、蓋が片側から上に向かって開いていく。

 

 「よしっ」


 小さくガッツポーズをするライア。


 その二重底に隠されていた物は、一枚のくたびれた様なグレーの紙。


 カズイが手にし、折りたたまれたその紙を開く。


 四人一同、目が嫌でもその紙に向いてしまう。


「……最終試験……合格?」


「何の事?」


「……さあ」


 四人は揃って、紙に書かれている、「最終試験合格」と言う文面に怪訝な面持ちを滲ませる。


 すると


 パチパチパチパチ


 「「――ん⁉」」


 突然、出入り口の扉から拍手する音が聞こえ、一同は驚愕してその方向に顔を向ける。


 そこには、なんとダージュがスッキリした面持ちで拍手をしていた。


 「合格だ。ようやくな」


 「だ、ダージュ、先生?」


 ダージュの意味深な言葉に脳がバグを起こすかのようにフリーズする一同。


 ゆっくりとアッシュたちに近付いてくるダージュ。


 その表情は、まるで仕掛け人のような面持ち。


 「これはどういうことですか?」


 アッシュが睨みつける様にダージュに向け口にする。


 「文面通りだ。お前たちは私の最終試験に合格した」


 「最終試験?」

 

 あたり前の事を聞いてきてるみたいに振舞ってくるアッシュたちに思わずほくそ笑むダージュ。


 一体全体どういうことか、理解が追い付かない状況の中、ダージュが近くにある椅子を手にし、アッシュたちの前に置くと、その椅子にゆっくりと腰を落とす。


 「私は長い間、待っていた。知力、技術、戦闘能力、度胸、経験、この全てを満たす逸材を」


 不敵な笑みでアッシュたちを見るダージュ。


 ますます意味が分からず困惑するアッシュたちだが、その中で一番冷静なカズイが「そうか、そう言う事か」と真実に辿り着いたような意表を突かれた様な面持ちで俯く。


 「カズイ、何か気付いたのか?」


 ライアが動揺しながら恐々と口を開く。


 「いや、全てではないが、ここまでのダージュ先生の言葉で分かった事がある」


 「なに?」


 カズイが気持ちを落ち着かせながら口を開くと、ネムイも少しだけ落ち着きを取り戻す。


 「それは、まだ俺たちは試されていた。もっと言うならダージュ先生の何かに加わる最終カリキュラムをクリアしていなかった。だがそれもこれで晴れてクリアになった。違いますか? ダージュ先生」


 獰猛な猛獣を見定めるかのような目をダージュに向けるカズイ。


 すると、ダージュは鼻で笑う。


 「大体はあってるな。だがまだその何かに加わると言うまでは流石のお前でも読めんか?」


 「それはそうですよ。何と言っても材料不足だ」


 「確かにな」


 二人はスムーズに話してるつもりだが、それでも状況が読み込めないアッシュたちは、その真相を一番知っているダージュに睨みを利かせる。


 「そう睨むな。お前たちがこの状況を理解してないのも頷ける。なので順を追って説明してやろう。だがそれは移動しながらでもできるだろ。場所を変えるぞ。付いてこい」


 不敵に笑いながらそう言って立ち上がったダージュは、アッシュたちに背を向け、再び出入り口の扉まで歩く。


 是が非でも真相に辿り着きたかった一同は覚悟を決め後続する。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回で第10章は終わりです。

次章からも是非ご一読ください。

よろしくお願いします。

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