十章 向けられた目 七話
「誰から行く? やっぱりレディーファーストってことでネムイたちからか?」
ダクトの中に誰が一番早く入るか、何故かこの四人の中でそれを一番深く考えていアッシュは、時間が頃合いと見て口にする。
「「……はっ?」」
思わぬ提案だったのか、それだけでなく、こいつは何を言ってるんだ? 見たいな非常識な人間でも見るかのように、怪訝な面持ちで口を半開きにするライアとネムイ。
ちなみに、ライアとネムイの格好は、白衣の下がスカートになっていた。
四つん這いになって後ろから見たら、かなりの確率でおパンツが見えてしまう。
もう一つ加味させていただくと、この時のアッシュは、心の底からレディーファーストとした紳士道として口にしていたが、どことなく自信がなさそうに口にしていた気もした。
ネムイたちが呆れた怪訝顔をして数秒の沈黙の中、アッシュが何かまずい事でも言ったのか、随分と眉を顰める。
そこで、カズイが「君は人間関係をようやく築いたのだから致し方ないとしても、それはいくらなんでもなあ」とため息交じりに履き捨てる様に口にする。
アッシュはなんのこっちゃ? 見たいな顔をしていたが、ネムイとライアが無言で、アッシュの尻をバチバチと叩き「いて! 何すんだよ! おい! ちょっ⁉」と困惑するアッシュを先にダクトの中に強引に入れようとすると、「やれやれ」と言って呆れながら二番目にダクトの中に入るカズイ。
こういう時の女の子同士の結託には、とことん男は弱いのだ、と思い知らされたカズイだった。
ダクトを通っていると、様々な異臭がした。
しかし、そこまで我慢できなくもなく、一時の根性で乗り切ろうと気持ちを切り替えるアッシュたち。
深夜なため、ある程度、話しても問題ないと思ったアッシュが、少し話を切り出す。
「それにしても、前のグイリバナ国の国民たちは、少し薄情な部分もあるよな。あんなに簡単にアメリカの庇護を受け入れて、アメリカ国になる事を受け入れるなんて」
「その庇護がどれだけ大事なのか、分かってんのかどうなのか知らないけど、確かに少しグイリバナ国に対して、愛着が無いのもあるから、すんなり受け入れたのもあるだろうし」
ライアが後ろから、あまり覇気の無い声で答える。
「どちらにせよ、ギゼン国がアメリカに圧力をかける反面、元グイリバナ国の国民たちは、今のギゼン国に敵対心を向けているのも事実。せっかく寄り添ってくれる隣国の悪口を言われれば、客観的に見ても印象は良くない。元グイリバナ国の国民たちは、もう立派なアメリカ人だ。だからこそ、ダージュ先生は、グイリバナ国をアメリカに売って、何かしらの見返りを貰うんだろうな」
カズイの意味深の言葉に、アッシュが眉を顰め動きを止める。
「ん? ちょっと待てよ。それはアメリカに対してメリットはあるだろうけど、ダージュ先生に何のメリットがあるんだ? 見返りにお金を貰ったとか?」
「アメリカにしてみれば、労動源と資源、物資、土地とかメリット山盛りだろうけど、ダージュ先生は?」
カズイは訳が分からず、同じ質問を繰り返す。
「地位や名誉も違うでしょうね。あいつには何か目的がある。アメリカに恩を売って、後に回収するどす黒い何かが」
ネムイが鋭い眼差しで、ダクトの隙間から見える部屋に、入院用のベットを見つめ深慮深く口にする。
「まあ何にせよ、アメリカは単純明快のリターンを得て、ダージュ先生は分からずじまいて言った所か」
「ああ。今はそうとしか言えない」
ライアが話を纏めると、カズイが同意する。
「ほら、早く進みなさいアッシュ。レディーをこんな所で椅子わせないで。せっかく香水もしないで来てるんだから。これ以上ここに留まってたら、シャワー浴びてもこの異臭が取れないじゃない」
少しした沈黙が流れていたかと思いきや、ネムイはご機嫌斜めの様子でアッシュを急かす。
「はいはい。たくっ、匂いが少し付いた程度、別に気にする必要ないだろうに。俺たち医師は汚れ仕事に近いし、こんな事でうだうだ言ってたら、医師なんて務まらないぞ。おまけにお前ら、レディーって、ぷっ、フフフフ。言動と性別が嚙み合っているのやらどうなのやら。フフフッ」
「「はあっ?」」
またもやレディーにあるまじき発言をしたアッシュは、後ろに居るライアとネムイに敵意を向けさせる。
それにびくついたアッシュは軽く咳払いをして「と、とにかく先を急ごうぜ」と無理やり話を変えるみたいにしてそそくさと匍匐前進を再開する。
「やれやれ、さっきのレディーに対する誠意はどこに行ったのやら」
そんなやり取りを見て呆れるカズイだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回の投稿はここまでです。
次回からも是非ご一読ください。




