第十章 向けられた目 五話
そして、卒業生退場と言う弾幕が断たれ、各々が独断で会場を去っていく。
ネムイたちは横一列になりながら、自分たちの寄宿舎に戻ろうとする。
「はあー。散々な卒業式だったな。てかあの女、何者だ? カズイが躱してたとはいえ、あのスピードを捕らえて撃ってくるなんて」
納得がいかない面持ちで語るライア。
「それは分からないけど、少なくとも、学生じゃない。多分、ダージュ先生が雇った傭兵とか、そっちの類じゃないか」
アッシュは先程の会場を見るかのように後ろに首を回し、危機としていた表情をする。
「それにしても、ネムイはともかくとして、カズイまでダージュ先生をあの場で殺そうとしたのか? 正直、肝が冷えたぞ」
胸を撫で下ろすアッシュ。
「はあー? 私はともかくですって? 失礼ねあんた」
ネムイは不機嫌になりながら肘でアッシュの二の腕をどつく。
「だってそうだろう。ネムイが一番、ダージュ先生に恨みを持ってたのは俺たちが一番、良く知ってるし」
「まあ、ネムイが銃を手にしていたのは驚かなかったが、やっぱりカズイがナイフを懐に隠し持っていたのは意外だったな」
アッシュとライアは、当然の様にして言うと、何故かネムイは恥ずかしそうに少し赤面していた。
「まあ俺が持っていた理由は、備えあれば患いなし、見たいなもんだ。少なくともダージュ先生をあの場で殺そうだなんて考えてなかった。結果論に聞こえるが、俺にそう言う意図はない」
前を見据え、淀みなく語るカズイ。
「まあ、あんたはそうでしょうね。どちらにせよ、さっきの卒業生は、私たち以上に、ダージュを恨んでたでしょうに」
切ない表情で、憂いるようになるネムイ。
それを聞いたアッシュたちも、表情のどこかに憂いを滲ませていた。
こうして、卒業式は、とんでもない結果となった。
初めて相まみえたマチルダとカズイたち。
ダージュを葬る事を旨とした芯を心に抱かせながらも、危機を奥底にしまって、明日を歩く。
間違いなく、ネムイたちはダージュに目を付けられている。
それは想定内ではあったが、ダージュの真の目的を目の当たりにするその日は、意外と近かったことを、この時のネムイたちはまだ知らない。
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