第十章 向けられた目 二話
一行は、ギゼン国を出て、飛行機でアメリカへと帰国した。
ブラックバイソンクリニックに戻ったアッシュたちは、すぐに卒業式へと移るため講堂へと赴く。
卒業証書を手渡すのは、なんとダージュだった。
アッシュたちは怒りと憎しみの目を、座席から向ける。
「諸君はこれから様々な局面に直面する。患者を治療する者、患者やその家族と真摯に向き合う者。金に目がくらみ、暴挙へと奇行する者、または、患者を救えず、息を引き取るのをただ指をくわえて見送る者」
ダージュは鋭い眼光で重い言葉を淡々と口にする。
そのダージュの目と合ったネムイも鋭い目つきでダージュを睨む。
そこからダージュの話はまだ続く。
「人間は病や怪我とは切っても切れぬ縁でできている。そんなものはごめんだ、と匙を投げてもどうにもならない。人間は導けぬとも、救う事は出来る。それが我々医師だ。病や怪我を命令するかのように黙らせ、その根幹と向き合い続けなければならない。だからこそ言わせてもらおう。人間に後れを取るな。我々、医師はそれよりも先を生きなければならない。患者の前に治療する諸君らが倒れるぐらいなら、いっその事、その全てを捧げろ。この意味は、医師学生だったひよこ以下の諸君らなら納得できなくても理解は出来るはずだ。何のための卒業試験だと言う事にな。私からは以上だ」
スピーチを終えたダージュは、ふてぶてしい態度で一歩後ろに引く。
ダージュの言葉に困惑し始める卒業生たちや、その家族たち、口をポカンと開け、ダージュを見るカメラマンやアナウンサーたち。
しかし、ネムイはダージュの言葉など気にも留めなかった。
あるのはただ復讐したいだけと言う怨嗟の炎。
ただならぬオーラをダージュにぶつけるネムイ。
そして、司会者が卒業生に贈る卒業証書の受け渡しが行われた。
「いよいよだな」
「ああ。君たち、表情に出すなよ。この先、ダージュ先生の懐に忍び寄りたいなら、不穏な気配は押し殺せ」
「分かってる。とにかく今は耐えるしかないな」
「……」
ライアが気を引き締めると、カズイが打ち合わせを再確認するかのような口ぶりになると、アッシュも気を引き締める。
しかし、ネムイだけが、黙ってダージュを睨み続ける。
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