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第九章 終わらぬ悪夢 十一話

 誰もが沈黙を余儀なくされた。


 そんな中、ベンチで座っていたネムイが、突然立ち上がり、鋭い目をアッシュたちに向けていた。


 「落ち込んでても仕方ないわ。こうなったら、ギゼン国やグイリバナ国だけでなく、トードたちの弔い合戦よ。それに他にも多くの人たちが、ダージュの手によって葬られてきた。今こそ、償わせなきゃ」


 力強く、どこか淀みがありながらも、嘘偽りない心根を、宣言するネムイ。


 その目には覚悟が見受けられていた。


 言葉から伝わる、果てしない欲望と言ってもいい。


 そこには憎もあるが、アッシュたちに取っては些細な事。


 気にはしない。


 むしろ、自分と同じ志を持っている、その思いが伝わったからこそ、アッシュたちの目にも覚悟が刻まれていた。


 「だな。このままじゃトードたちに顔向けできねえ。必ず世界の医療界を変え、亡くなっていった奴らのためにも報わないと」


 「そうだな。それに未来には子供たちが大人になるビジョンもある。今の、そしてこれからの子供たちの将来のためにも、ある程度クリーンにこの世界を見てもらわないとな」


 アッシュとカズイが頬に笑みを浮かべながら意気投合していた。


 ライアも拳を手の平に叩きつけ、気合を入れる。


 ダロルドは、自分の先を行く、子供たちを目の当たりにして、どこか自分を情けなく思いながらも、アッシュたちを愛おしく思えてしまう。


 そんな中、別の覚悟を持っていた人物が、ふと、暗い表情で意味深な言葉を呟く。


 「……今回の一件、恨むなら私を恨んで。トードたちだけでなく、他の人たちの命を、弄んだ罪は……私が背負うわ」


 そう言うのはネムイだった。


 「え?」


 ライアは鳩が豆鉄砲でも撃たれたかのような表情でネムイを見る。


 すると、ネムイはフラフラとした足取りでその場を去ろうとする。


 それを目にしたライアは、何となく、ネムイの腰回りを見る。


 そこには、ウイリーが先程まで手にしていたハンドガンが。


 そこからライアはある事を察してしまう。


 察するや否や、飛び出す様にして前に出ると、ガサツにネムイを背後から強く抱きしめる。


 「待てネムイ。お前だけに背負わせられねえ。そんなのどう見たって可笑しいだろ!」


 愛する妹を優しく宥める様に口にするライア。


 すると、ネムイの目から涙がこぼれ始める。


 「駄目よ。綺麗なままで居られない。誰かが汚れて責任を取らないと。こんな姿、トードたちには見せられないわ」


 泣きじゃくりながら必死に言葉を繋げるネムイ。


 ライアの言動からアッシュとカズイもある事を察してしまう。


 そう、ネムイは自殺しようとしたのだ。


 自分を責めていた。


 どうしようもなく、嫌気が差すほど。


 だが、それは違う。


 こんなのはダージュの関係者とはいえ、一、医学生に背負わせる物では断じてない。


 それを知っているからこそ、ライアは飛び出したのだ。


 ネムイを想いながら、アッシュとカズイもネムイの元にまで近付いていく。


 「あのさネムイ。俺、ちょっと前まではトードたちの事は気に食わなかったんだ。でも、あいつらの直向きな志と決意を前にしたら、自分がどれだけ汚れているのか痛感させられた。だから皆で背負わないか? みんな同じさ。みんな汚い。汚いなりに一緒に足掻こうぜ」


 アッシュはどこか清々しい気持ちで口にする。


 それは自分がどれだけ前まで愚かで浅慮な人間なのかを自覚し、自戒してでも是正しなければいけない事だと分かったからだ。


 だからこそ、アッシュは打ち明けた。


 打ち明けると、どこか清々しい気持ちに自然となってしまう。


 そういう時は、たいてい人は本音で言うものだ。


 それはネムイにも分かっていた。


 続けて追い打ちをかける様に、カズイもどこかクールな表情になる。


 「君が綺麗? 冗談だろ? 言っておくが、今も昔も、君が責任を取れるほど身を潔白にしたことがあったか? 周囲の事などお構いなしに跋扈し、少しでも自分に敵意や好意を向けて接してきた相手には威嚇し、攻撃する。そんな人間のどこが綺麗だって言うんだ? 安心しろ。君は既に、自分や他人の汚い所を見て、蓄積し、吐き出している。罪なんて、等の昔から背負って生きてるさ。だからここから先は、汚い人間同士、友愛で行こう。友よ」


 キザな台詞だが、カズイなりの温かい言葉。


 相手を罵っているかと思ったその言葉は、むしろ、自分の心の炭を洗い流してくれているかのような矛盾。


 それこそ、ネムイがブレーキをかける言葉となった。


 「みんな、ごめん、ごめんなさい」


 「違うだろ。こういう時は、ありがとう、だぜ」


 泣きながら謝罪の言葉を口にするネムイを優しく抱きしめながら、ライアは満面の笑みで温かい言葉をかけ続ける。


 その様子を見守っていたダロルドの目にも思わず涙が。


 皆が一丸となった結果は、悲惨な結末ではあったが、同時に始まりとなった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回で第九章は終わりです。

次章からも是非ご一読ください。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
第九章の書き上げお疲れ様でした ^^) _旦~~ 末尾のとおり、悲惨は始まりを呼んだ、そんな雰囲気がどんどんひろがっていくページだなと思いました。 これまでにないネムイの様子が伺えたのもまた、あらたな…
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