第九章 終わらぬ悪夢 八話
少しして、進んだ先で、コンテナの中の扉が一つだけ開いていて、そのままさらに進んでいくと、最前列にいる事が分かる。
首を傾げるトード。
ネムイも何か見落としがあったのか、と推測しようとする。
と、その時。
バン!
一発の発砲音が背後から鳴った。
急いでネムイとトードは音が鳴った所に目をやると、いつの間にか背後を取っていたウイリーが一発撃ち終わった所だった。
すぐにネムイが発砲を開始する。
しかし、トードは嫌な予感がして撃たれた先を見てみる。
すると、そこには横たわって右の胸を撃ち抜かれたイムの姿が。
「イム⁉」
トードは急いでイムの元に駆け寄る。
「ご、ごめん。多分、ウイリーは、コンテナの中の扉から外に出て上で待機してたのよ。わ、わたし、窓が開いていながら気付けなくて」
弱々しく喋るイム。
一つのコンテナの中には、窓が左右に二つづつある。
「喋らなくていい! 今すぐ降りよう! 幸いなことに、もうすぐでギゼン国の町に入る! そこで治療を!」
バン! バン!
トードが必死な相好で話していると、ウイリーがトードとイムに向けて発砲をしてくる。
しかし、ネムイがウイリーに発砲を続けていて、そのせいで銃口や足元をおぼつかせ、邪魔をしていたため、上手く狙いを定めさせずにいた。
「トード! 今はこの女を無力化させることが先決よ! 生きてギゼン国の町に入れたとしても、この女が生きていて武器を手にしている限り、治療は妨害されるどころか、皆お陀仏よ!」
鬼気迫る顔で訴えてくるネムイの言葉に、トードは「ごめん、待ってて」とイムに悲し気に語る。
「うん。貴方なら、私だけでなく、全てを救えるわ」
イムも辛そうにしながらも笑みを浮かべ、トードを見送る。
すぐにネムイに合流し、ウイリー目掛け銃を撃つトード。
すると、形勢が悪くなったと思ったウイリーは、窓から外に出るや否や、コンテナの上の取っ手を掴むと、アクロバティックにグルんと体を宙返りでもさせながら、コンテナの上に立つ。
すぐにトードは上に行こうとしたが、ネムイが「このままあの女を追っても狙い撃ちにされるわ」と言ってトードを静止させる。
その間、上ではウイリーがマガジンを装填していた。
ネムイは、腰かけていた手榴弾を手にすると、窓から身を乗り出し、手榴弾のピンを抜き、斜め上に向け、コンテナの上に投げた。
その刹那。
ドカン!
コンテナの上、ウイリーが要る付近で爆発が起きる。
列車がギゼン国の町に入るまで後、数分。
その間にウイリーを先頭不能にする必要がある。
もしかしたらウイリーは、ギゼン国の人間も皆殺しにする可能性もなくはない、と判断していたネムイ。
ネムイは爆発が鳴ると同時に「行くわよ!」と鋭い一声をかけると、二人は別々の窓からコンテナの上にのぼる。
のぼると、爆炎で視界が悪いが、これで仮にウイリーが生きていても、視界の悪い中、のぼった所を狙い撃ちされる可能性は低くなる。
それを見越したネムイは、上がった先でトードに煙が立っている方向に銃口を向ける事を手で指示する。
トードも頷き、銃口を煙が立っている方向に向ける。
走っていたためすぐに煙は晴れた。
しかし、晴れた先にはウイリーの姿は無かった。
「あれ?」
呆けていたトードを叩き起こす様な音が鳴る。
バン!
「え?」
なんと、コンテナの中から聞こえたくもない銃声の音がする。
血の気が一気に引いていく思いで、トードは最悪な想像をしてしまう。
「イム⁉」
狼狽でもしながらそれでいて僅かな理性を働かせ、急いでコンテナの中に戻ろうとするトード。
「は、はやく! 私ごと殺って! 早くーー!」
すると、けたたましいイムの声が、コンテナの中から喚き上がる。
何がどうなっているのか理解できないトード。
バンバンバン!
そんなトードを置き去りにするかのようにまたもや数発の発砲音が鳴る。
すると、コンテナの中の窓から、白衣を纏った人の腕が飛んでいった。
中でとんでもない事が起きていると、嫌でも想像してしまうトード。
「ごめんなさい。イム」
声を枯れさせるようにして、ネムイは残りの手榴弾を外から窓の中に投げ捨てる。
その行動を目にしたトードは、パニックになりかけていた。
「貴様――!」
コンテナの中では、ウイリーが鬼気迫る声を高らかと上げる。
そして。
ドカーーン!
耳を痛くするほどの爆音がコンテナの中から響き渡る。
衝撃で一瞬、宙に浮くトードとイム。
しかし、そんな事はどうでもよかった。
急いで逼迫した思いで中に入るトード。
慌ててネムイが止めようとするが、トードはネムイの声など聞きもしないでコンテナの中に入っていく。
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