第九章 終わらぬ悪夢 六話
ダロルドは訝しい瞳を遺体に向け、何かを思案していた。
「この銃創は、まさか、我が軍で使われているライフル?」
「え⁉」
「もしかして、軍の誰かがこれを?」
ダロルドが観察結果を口にすると、トードたちは一驚する。
「いや、そう考えるのは早計かもしれない。一度私は武器保管庫のテントに向かってみる。もしかしたら外部の犯人が盗んだ可能性もある」
「分かりました。では僕たちはこのまま捜索を続行します」
「ああ。頼んだよ」
ダロルドの言葉に従ったトードたちは再び捜索を開始する。
しばらく歩いていると、ダロルドが無線で結果を報告する。
「私だ。やはり犯人は外部の人間だ。ライフルが一丁、盗まれている。それに不可解な事に赤外線サーモグラフィー付きのスコープも一つ無くなっている。先程の遺体の銃創の後を見る限り間違いなくライフルによるものだ。木の上なども念入りに捜索してくれ。もしかしたら犯人は、我々の精神を殺しにかかってきている節もある」
「了解しました」
無線からのダロルドの指示に、今まで以上に警戒するトードたち。
「あんたたち、少しは肩の力を抜きなさい。さっきダロルド将軍も言ってたでしょ。相手は私たちの精神も攻撃してきてるって。そんなんじゃ犯人の思うつぼよ」
「うん、分かった」
「ありがとう。ネムイちゃん」
緊張だけでなく、それと重なって恐怖もしていたトードとイムが見ていられなくなったネムイが溜息をこぼしながら口にする。
そのおかげで、少し肩の荷が楽になったトードとイム。
しかし、ウイリーはそんなトードたちに狙いを定めていた。
銃口を向けられているが、トードたちは気付いていない。
「あ、靴紐が」
そこで、イムが靴紐が解けている事に気付き、しゃがみ始めた。
その一瞬前だった。
発砲音が一発鳴ると、イムが先程まで歩いていた頭部付近を掠める様にして、弾丸は木を貫通して弾き出された。
その現状をすぐに理解したネムイはトードの頭を掴んで無理やり伏せさせる。
「うわっ!」
「えっ! いま私、狙われてたの⁉」
トードとイムはテンパっていたが、ネムイは撃ってきた先を見てみると、テントが撃ち抜かれていて、すぐにそのテントの前へ走り出す。
「屈みながらこっち来て! 入るわよ!」
「う、うん!」
「ええ!」
ネムイの指示通り中腰でテントの前に進んでいくと、ネムイが合図を出し、一斉にテントの中に入るトードたち。
そこは食料テント。
しかし、探しても誰も居ない。
だが、ネムイはある事に気付く。
それに気付いたネムイはすぐにテントを出て、裏へと回る。
ネムイの不可解な行動に疑問を持ちながらも急いでネムイの後を追うトードたち。
実は、ウイリーは赤外線サーモグラフィー付きのスコープで、テント越しからでもトードたちの動きは熱で感知していたのだ。
ただ、体温でできた人の形を的にしていただけなので、テント越しでも十分に標的を捉える事が出来る。
すると。
ドドドドン!
ネムイが走ってった先。
その先に辿り着くと、激しい銃撃戦が繰り広げられていた。
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