第九章 終わらぬ悪夢 五話
後に続いて武装する準備を始めるトードたち。
その光景を目にしていたダロルドと、居合わせた二人の兵士が、ただ、ただ、見ていた。
あまりにも義理堅く、強く優しい勇士たちの言動に惚れ惚れとしていた。
「分かった。ならば着いてきてくれ」
「「了解!」」
ダロルドの指示のもと、声を揃えてウイリーが居る元へ走っていくトードたちだった。
「ぐわっ!」
一方、ウイリーは駆けつけてきた兵士たちを皆殺しにし、トードたちを探していた。
そう、ダージュがこの試験に置いての狙いの一つに、武を求めていた。
どんな状況下でも、物怖じしない精神と肉体、医療に一切関係ない物が殆どだが、これはダージュの考えた医療界の法。
過去のダージュにも何かがあるため、必要以上に、武力を磨き上げる何かがある。
ただの私欲、偏見、我儘。
そう思われても仕方ないが、ダージュには狙いがあった。
武を求める狙いが……。
トードたちが武装し終え発砲音が鳴ったと思われる場所に急いで駆け付ける。
そこには無残となった兵士たちの遺体が。
「誰がこんな事を?」
「分からない。だが異常な人格者だと言う事は明らかだ」
イムが恐々としながら口にすると、カズイが遺体となった兵士たちを睨みつける様に語る。
すぐにダロルドが指示で、トードたちに何班かに分かれて捜索する事に。
必ずスリーマンセルでチームを組ませ、警戒しながら遺体となった兵士たちの周囲を捜索するため歩き出す。
トードはイムとネムイと組んでいた。
砂利道をザクザクと音を立たせながら目だけでなく音にも意識を集中させてアンテナを張る。
冷や汗が止まらない。
テントや岩場をの陰からいきなり出てくるんじゃないか、と恐怖しながら周囲を警戒する。
息を呑みながら前へと、横へと少しづつ歩いて行く。
すると、テントを曲がろうとした時、何者かと、遭遇した。
チャカッ!
素早く銃口を向ける先には、ライアとカズイ、アッシュが居た。
アッシュたちも逼迫した表情でトードたちに銃口を向けている。
「何だ。アッシュたちか」
「で、どうだ? 何か不自然な物でも落ちてたりとかは?」
「いえ、無かったわ。そっちは?」
「同じく収穫無し。ただ神経が削られていくだけだな」
糸を斬らない様、慎重に伸ばしていくかの様な緊張感。
そんな危機的状況化で、再び発砲音が。
ドン! ドン! ドン!
「銃声⁉」
「行くぞ!」
カズイが先導して急いで銃声が鳴った場所に走っていく。
すると、医学生の三人が、顔を撃たれ遺体となって倒れていた。
流石にヘルメットを被っていても、顔までは隠せない。
「くそっ!」
「周囲を警戒して!」
アッシュが悔しそうに苛立ちの詰まった言葉を地面に叩きつけると、ネムイが的確な指示を出す。
顔を撃たれているため、今まで見た遺体と比べても、かなり惨たらしい物だった。
周囲を見渡しても誰も居ない。
そこへ、ダロルドたちも走って駆け寄ってきた。
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