第七章 駆け引き 三話
後頭部から撃たれ絶命した。
その背後には、銃口から煙を立ち上げさせていた人物が、厳つい面持ちで立っていた。
「貴様は、貴重な人材を偏見で決める気か? 死して己の過ちを償うがいい」
「「しょ、将軍⁉」
誰を隠そう、イカレタ兵士を撃ったのは、グイリバナ国の将軍だった。
トードたち全員が、目を引ん剝く。
「貴様らも銃を下ろせ。その者たちは我らの中枢部を支えてくれる柱だぞ」
将軍が威厳良く口にすると、銃をすぐさま下ろす兵士たち。
すると、将軍は何の警戒もなく、トードたちに歩み寄ってきた。
「グイリバナ国の兵士のトップとして謝罪させてくれ。すまなかった。怖い思いをさせたな。私はグイリバナ国軍、陸軍部隊の将軍、スイン・ボルデーゼだ」
笑みを浮かべながら右手を差し伸べてきてくれるスイン。
トードとライアはキョトンとした面持ちで見合うと、気持ちを切り替え、緊張した面持ちで「トードと言います。こちらは同じ医学生のライアです」とスインの手を握る。
ライアも「ど、どうも」と少し戸惑いながらもスインと握手を交わす。
「トード君にライア君か。早速で悪いが、負傷した兵士たちを見てもらえないか? 我々の中にも医師はいるが、何せ、負傷者の数が多すぎるうえ、医療道具も不足しがちなのだ。君たちの様なダージュ先生に認められた医師の人たちが治療に当たってくれると、とてこ心強い」
胸に手を当て、親身になって話してくれるスイン。
それに対し、トードたちの答えは決まっていた。
目を輝かせ、トードとライアは「「是非、お願いします!」」と感謝の思いを込め口にする。
すると、スインが微笑みながら「それはこちらの台詞だ。よろしく頼むよ」と言うと、すぐに兵士たちに医療テントに案内させる。
「あ、そうだ。スイン将軍! 一つ、お願いしたい事があるのですが?」
「ん? なんだね?」
トードは重要な事を思い出し、スインを呼び止める。
「実は、僕たち以外の医学生たちが、まだこの森林の中に居ると思います。なので申し訳ありませんが、僕と同じ生徒たちを保護してこちらに寄こしてくれませんか? 彼ら彼女らなら、必ずこちらの負傷した兵士の皆さんの力になれると思うのです」
「なるほど。願ってもない要請だ。すぐに捜索に取り掛かろう」
「ありがとうございます!」
スインは顎を摘まみ、納得した面持ちで承諾すると、トードは深々と頭を下げる。
そして、すぐに行動に移したトードたち。
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