第七章 駆け引き 二話
しかし、答えは決まっていた。
「貴様らに用はない。あるのは医療セットのみ。危険分子は排除だ」
カチャ。
一難去ってまた一難。
トードたちは絶体絶命。
そこで、ライアは持ちうる限りの材料で哄笑しようとした。
「良いのか? 俺様たちを殺して? そっちに真面な軍師も数少ないだろ? ここで俺様たちを殺せば、助かる者も助からないぜ。なんせこっちは今、ダージュ・バイソンに命じられた最終試験の真っ最中だ」
「なに! あのダージュ・バイソンの教え子⁉ 最終試験すら一握りも居るかいないかと言われるくらいの課題を、お前らが⁉」
この状況下で、ライアは薄っすらと笑いながら、馬鹿な子供でも見るかのように挑発すると、兵士たちは動揺する。
「ああそうだ。因みに俺様たちの最終試験は、今回のギゼン国とグイリバナ国の戦地に、ゲリラ部隊として配属し、負傷した兵士を治療しながら七日間生き残るのが課題だ。だからもう一度あんたらに聞くが、本当に良いのか? ここで千載一遇のチャンスを逃して? 自分で言うのもなんだが、ここまで生き残れた俺様たちのような逸材は、そっちの部隊にいるとは思えないけどな」
揺さぶり、交渉するライア。
その頼もしさに、思わず口を開けてしまうトード。
すると兵士たちが話し合いをしていた。
「どうする?」
「うーん」
中々答えが決まらない兵士たち。
すると、一人の兵士が暴走し始めた。
チャカリ。
なんと、トードの蟀谷に銃口を押し付けたのだ。
「何をしている⁉」
「見ればわかるだろ。俺らを試験の道具の様に扱おうとしてきた蛮族どもを殺すんだ。お前らもそうは思わないか? 俺たちは大統領の名の元、命を懸けて戦場に居る。それを、こんなガキどもの試験内容で都合よく使われてると思うと、腸が煮えくり返るんだよ! なあ! おい!」
最初は冷静だったその兵士は、突如、凶変でもしたかのように、トードに強く銃口を蟀谷に押し付け、怒涛の勢いで憤怒していた。
トードは正座させられ、ガクガクと、全身に悪寒が走る。
生きているのかも分からない窮地。
ライアは、完全に狂っている、とその兵士をそう判断し、思わず殴りかかる勢いで走り出そうとした。
だが、そのイカレタ兵士は「あばよクソガキ。あの世でお勉強の続きでもしてるんだな」と冷徹な言葉を吐き捨て引き金を引こうとする。
ドン!
そこで、一発の発砲音が鳴る。
ライアはトードが撃たれたと思った。
誰だってそう思うはず。
しかし、違った。
撃たれたのは、そのイカレタ兵士だった。
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