第五章 闇の中 一話
その後、無事に手術は終わり、トードとアッシュを残し、残りの医学生は落第と見なされ、手術室から出てきた途端、その医学生は額を撃ち抜かれ、絶命した。
トードやアッシュも目の前で人が殺されたのは幾つも目にしてきたが、流石に、同期の死を目の当たりにして、顔色一つ変えないと言うのは無理があった。
トードは無慈悲すぎる光景に顔を歪め、アッシュは悔しそうに、別の方向に顔を向ける。
研修室に戻ると、ウイリーが待っていた。
「二番、五番、お前たちは合格だ。今度の最終試験に飛び入り参加させることになった。試験内容は追って伝える」
「「ウイッウイッ―!」」
こうして、ウイリーから合格の言葉を受け、トードとアッシュは、納得が良くいかないと言う選択肢など持てないまま、ウイリーの言葉を受け入れた。
ウイリーは伝えたい事だけ伝えると、さっさと去っていった。
「はあー」
大きな溜息を吐いて、椅子にもたれかかる様に座るトード。
そこえアッシュが寄って来る。
「おい、トード。今回の事で一つだけはっきりしたぜ」
「……なんだい?」
深刻な面持ちで口にするアッシュに、トードは怪訝な面持ちになる。
「医療に、動揺や恐怖は敵だってな」
それだけ言うと、アッシュはトードの肩を軽く叩いて離れていく。
トードもアッシュの言っている事はもっともだと思った。
先程、射殺された医学生たちは、ダージュの助手と言うだけで、動揺し、恐怖した。
だからこそ、トードは不必要に思えた。
だとすれば、アッシュやネムイの言っている事は正しいのだろうか?
動揺や恐怖と同様、同情や憐憫は不必要な物なのだろうか?
トードの中であらゆる考えが脳裏で交差する。
頭の中がこんがらかっていくと、オペを終えた医学生たちが次々と研修室に戻ってくる。
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