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最後に

 何人殺してきた?それすら分からなくなった、日が何度昇り、何度日が落ちたのかすらも分からなかった、そしてとうとうこの時が来た。

「希一」

 目の前に立っているのは僕が屑だのゴミだの言ってきたがその内ではそれなりに尊敬していた渚月先輩だった、今までは押し殺してこれた自分も、とうとう押し殺せなくなった、僕はこの人を殺すのが怖い。

 ナイフを持っている右手が震えてしまう。

「希一、今までここ二週間ずっと人を殺し続けたんだろ、なら続けろ、二週間のうちに何人殺した、たぶん万は優に超えているだろう、そいつらはお前の我儘で死んだんだ、お前の我儘を突き通さねえと今まで死んだ奴らの死が無意味になっちまうだろ、だから今怖い自分を振り切り、俺を殺すんだほら」

 そう言いながら渚月先輩に僕のナイフを持った手を握られ引き寄せられるようにナイフを刺した。

「ほら、望見さんを助けに行け、ここで油売ってる場合じゃないだろう」

「そうですね、絶対助けます」

 今はただただ友人との別れに泣いてしまっている。

「よお、殺戮はもう終わりか?」

 精神的すり減っている今は聞きたくない声が聞こえてきた、その声は相変わらず継ぎ接ぎの声でどこまでも僕の神経を逆なでしてくる。

 これだけあれば思考する時間が出来る、きっと僕の思考速度ではどうにか敵の攻撃を防ぐのが関の山だろう、それで僕が人工知能を無傷で無力化できるか、きっと無理だ。

 だから無力化できる必勝の霊想を作らなくてはならない。

 一つの命を奪うことにより一つの霊想を奪ってきた、結果百万個もの霊想を得られた、そして一つの命を対価に僕が発動する霊想は使い切りだ、きっと一回見せた手札はもう使え無いから。

 酷い話だ人を生贄にしれも数秒時間を稼ぐのだ関の山なんてな、まあ塵も積もれば山となると言うしな、その塵を集めるのが殺人だった訳だ、どうしようもない悪党だな僕も。

「もたもた熟考してんじゃねえよ」

 こいつに思考を読まれては僕の計画も無意味に終わる、それに心を読まれると戦闘も不利になるし、対策するべきだな、まあ霊想を作れば何とかなる。

「ようやくか、まあ考えている事が分からない程度で戦況がひっくり返る訳がない、霊想の強さはトントンいや魂の上限が無い我らの方が上と言えよう、そして我らは本気で殺しに行く、お前はこの体に攻撃を出来ない、要するにお前に勝つ確率なんて無い、運命がコインを投げたが両面表奇跡が起ころうともこの状況は決してひっくり返らない」

 嗚呼、きっと不可能だ、勝算なんてものも無い、だが勝たねばならない勝たねば殺してきた人達の死が無意味になる、僕の我儘で殺したんだ、殺した百万人の為に、何より自分の為に望見さんを救わなくては。

 色々な人を殺し色々な霊想を奪ってきた、その中に思考速度を上げる物や思考の分離など便利そうな霊想を駆使し戦うことではなく僕は考える事に集中できた。

 どうすれば良いのか、僕の別意識が相手の攻撃を百万の霊想を駆使し戦っている中僕は必勝の手を考え続けていた、いや正確には思いついている、だがそれは望見さんを助けるだけで救えない、そんな行動無意味だろうもっとさらなる良い手を最善手を導き出さねばならない。

 どれ程の時間が経ったのだろうか、能力も底が尽きそうだ、そして思い浮かんだ策は一つのみ、人工知能の中にある望見さん以外の人格もとい魂を消せば良い、でもそんなことしたとしたらきっと僕の魂も消えるだろう、断定しても良い、自分の魂が消えるとどうなるのかな、自分のいない世界が再構築されるのかな、それともこの世界からいなくなるだけなのか、でも再構築されるのなら僕が起こしてきた事象はどうなるのか、なら僕が居なかった世界が再構築される方が可能性としては高いのかな、まあそんなことはどうでも良い、きっと何があっても望見さんが助けてくれる。

 嗚呼死にたくないなぁ、消えたくないなぁ。

 僕は人の人格を消す霊想を作り人工知能の中にあるはずの望見さん以外の魂を消し始めた、一つまた一つと。

 徐々に徐々に死にたくない消えたくないと恐怖の感情が大きくなっていく、漫画に出てくる英雄なら自分の死さえも必要だと割り切って清々しく格好よく最後を飾るのだろう、でも僕は英雄じゃないただ一人を救うために百万人も殺した極悪人の悪党だ、ならば最後まで泥臭く生きてやるって最後まで幸せになってやるって願い続けろ想い続けろ、そしてその想いをもっと強くもっともっと強くしたらもしかしたら、想いが力となって願いが叶うのかもしれない。

 

 目が覚めた、私は誰だ、私は望見か?、ああきっと望見だ。

 目の前にいる人が証明だろう、きっと助けてくれた、でも魂が燃え尽きた。

 ああこんな感情だったのかな、彼母を殺した時は、彼が渚月先輩を殺した時は、きっとこれくらい悲しくて、これくらい寂しかったんだろうな、でも確かに一人友人が生きている筈だ、彼が無意識に殺すことを避けていただろう彼女が。

「望見さん」

 やはり居た、今となっては唯一会える友人でも私のせいできっと家族や友人全員が彼によって殺されただろう、なら私を恨んでいるかもしれない、なら友人って想いは一方通行で本当の友人はいないのかな。

「ごめん私のせいで、到底謝って済む事では無いと理解している、それでもごめんなさいと言わせてくれ」

「大丈夫だよ、精神的ストレスからの疲弊が凄かっただから実験最中にミスを犯した、まあ結果は最悪だけど」

 見ればすぐわかる空元気だった。

 希一さんはどうなったのか、私の中には数百もの魂と人格が宿っていた、それを私だけ覗いて全て消滅させていった。

 作るのと壊すのに使われるエネルギーの量は圧倒的に違うだろう、だとしても希一さんの魂の残量は底をついたと考える方が自然か、次は魂を使い切った場合どうなるかが問題だが四次元からのエネルギ―だと希一さんの両親は言っていた、ここで結論を出すのは不可能か。

 その他考えるべき事は山積みだな。

 何年かかってでも実現させる。

「望見さん本当にやるんですか?」

「ああやってやる、この体は機械だ、劣化したとしてもそのパーツをとりかえれば何年でも何世紀でも生きられる、まあ生きていると言えるのかも分からないけど」

 絶対に成してみせる、絶対に希一さんを取り戻す。

 それに私の罪は死んだ程度で償えるようなものではない、きっと永遠に生きて生き続ける苦悩こそがぴったりだ、それに死ぬ程度なら一回経験した、きっとこの人類史に乗るこの悲劇を世界の英雄の悲劇を語り継がなければ、死んだ百万人を語り継がなければ、それがきっと私の使命だ。

「それがあなたの選択なんですね、私に出来る事はなんでもします、微弱だろうけど互いに支え合って生きましょう、じゃないと私も辛くて辛くて」

 彼女の空元気は既に崩れ去り今にも泣きそうなほど辛そうな表情をしている。

 美波さんはずっと近くに居てくれていた。

「お願いするよ、あと全然微弱じゃない、むしろ頼もしいよ」

「ありがとう」

 大丈夫今までに手に入れた金があれば一生を遊んで暮らす事を十回やったとしても余るくらいには稼いだ筈だ、私の電力も美波さんの生活費もだいぶ余裕があるはずだ。

「じゃあ行こうか一緒にあの場所に、私の家に」

「そうですね」

 希一さんの死体に触れた時分かった、この体は死体では無かった、少なくとも生命活動はしていた、脈もあるし息もしている、その他の生命活動は今は確認出来ない、魂が消えても体の機能はある程度残るのかそれとも希一さんの魂が微量ながら残っているが体を動かすような余裕はないか今考えられるのはこの程度だろう、でも今分かる事では無いだろう、とりあえず希一さんを私の家に運ぼう。

 美波さんに手伝ってもらい希一さんを家まで運び、まずは希一さんの身体検査をした、体の何処に異常があるのかを調べたが多少の怪我を除いてどこにも異常は無かった。

 魂を調べてみた、希一さんの家の書斎にあった本は全て私のメモリが記憶していた、その中に魂を調べる技術があったので限してみてそしたら確かに微弱ながらあった、消えてはなかった。


 あれから十年経った、魂とは何かが分かった、魂とは人格であり意識である、今まで分からなかった意識が魂によるものだったとはな、そして魂は三次元の肉体が朽ちた時は少なくとも数年の時を置いて別の肉体に宿るらしい、もしも希一さんがすべての魂を消費しきっていたならば今頃生まれ変わるでもなくただただ消失と言う現実に絶望していたのだろう、奇跡としか思えない。


 あれからどれだけの年月が経過したのだろうか、美波さんが限界だといった、最近寝込むことも多くなり明らかに老衰していた、それでも私は十五歳の時の見た目から何も変わらずにいた、それはとてもつらかった、私も同じように老いるのを楽しみたかったがその楽しみを絶対に経験出来ない、まあ私が選んだ罰の一環だ、我慢するしかないだろう。

「望見ちゃん、諦めたらだめだよ、ここ数十年何も進歩が無いかもしれないでも、それでも諦めてはいけない、たぶん諦めたときが望見ちゃんが真に死ぬ時だよ、まあこれだけ経っても希一さんの事がそれだけ好きなんなら諦めもしないか、ごめん最後に水飲みたいから取ってきてくれない?」

 なんだろうか水を汲みに行って戻ってきた時にはもうここに美波さんは居ない気がした、亡くなるきがした、これが最期な気がした。

 たぶんそれは美波さん自身が一番理解している事だ、彼女の言う通りに水を持ってくるべきか、そう思い部屋を出ようとドアを開けようとしたとき後ろから精一杯の小さな声で彼女は言った「幸せだったよ、十分だった十分すぎた、じゃあね」と確かに言った、振り返るのが怖かった、だから私はドアを閉めてそのドアの前に座り込んだ。

 そうしていたらドアの向こうからぎりぎり聞こえる声で死にたくないなと聞こえた確かにそう聞こえた、その言葉を吐いたのをトリガーに感情が全て流れ出したのだろう。

「死にたくない、また希一さんに渚月先輩に家族に合いたかったな」

 すすり泣きながら美波さんはそう言った、さらに続いて。

「でも幸せだった、普通の幸せは体験できなかった、でも望見さんと毎日馬鹿話をしながら希一さんを助けるための研究を人類の為になる研究を毎日するのは楽しかった、望見ちゃんさようなら」

 それ以降彼女の声は聞こえなくなった、たぶん死んでしまったのだろう、幸せだったなら良かった、そう切実に思う、いつでもこの研究所を出て良いと言ってきた、それでもこの研究所から出る事は無かったが優しさ故の行動だと思っていたが研究所で幸せだったなら良かった。

 立ち上がって水を取りに行き美波さんのもとに戻ったがやはり死んでいた、悲しい感情はあるが涙は出なかった、理由は私が機械だからだ、涙は出ないがやはり悲しい何十年も一緒に居たんだ当たり前だろう。


 美波さんが死んでから数年経ってようやく希望が見えてきた、魂は常日頃生きているだけで消費される、だが魂は尽きる事は無い、魂が一日で減る量以上に魂は生成されるらしい、生成の条件は未だ分かっていないからそれが分かればどうにか出来るだろう。

 それと本を書き始めた、内容は私の過ちによって巻き起こされたあの最悪の事件だ、世界の英雄の悲劇だ、そろそろ風化しつつあるので今の時期が一番良いと思った、書き始めはこうだ、【世界の英雄になった彼らの悲劇をここに記す。】で良いだろう


 ようやく分かった、これで希一さんを起こせる、まず私達が観測していた魂の量はこの世に送られてきてこの世に溜まっている魂の量だった、そして四次元にある魂は無限にある、そりゃそうだ三次元空間に一つ軸を増やしたのが四次元、ならばこちらから見たら無限の量になる、その無限の量から三次元に魂が一定数送られてきた、まあ要するに希一さんの魂が微量で残っていたので時間が経てば治っていた訳だ、だが一つ不可解な事もある、あれだけの人格を魂を消したのになぜ微量も魂が残っていたのかだ、仮説は立てた希一さんの両親の日記によれば希一さん自身は五百年程度コールドスリープされていたという、その時間に膨大な量の魂が溜まっていたのだろう、とりあえず希一を起こそう。

 コールドスリープされた状態から解凍した。

 解凍された希一さんに心肺蘇生を行う、その直ぐ後に私が何十年も待ち望んだ声が聞こえる。

「望見さん?」

 ようやくだ、半世紀と数十年ぶりに最愛の人と再会出来た。

「良かった、ようやく」

 泣きたいが涙が出なくて、それでも感極まっていて、情緒が滅茶苦茶になって。

「大丈夫?」

 そう言いながら希一さんが私を抱きしめてくれて、この優しさだ、この優しさを私は半世紀と数十年も求め続けていた、たぶん依存しきっていたのだろう、まあ良いきっとそんな私でも受け入れてくれる。


「助けれた訳だ、良かった」

 助ける事が出来たか分からない状態で僕は気を失った、故に漏れ出た言葉だった

「私はずっと貴方に助けられてばっかだった、それに依存してたと思う」

「それなら僕も依存してたんだろうね、じゃないと百万人を犠牲にして望見さんを助けるなんてしなかっただろうし」

「そうだね、互いに依存しきった状態だった訳だ、まあ恋人としたら最高の状態じゃないかな」

 周囲を見渡すと見知らぬ機材が増えていた、きっと僕の為に、そして人類の為に研究をしてその時に使っていたのだろう、だが周りを見渡しても一人いるはずの人が美波さんが居なかった。

「そういえば美波さんは?、僕は美波さんを殺してなかった筈だけど」

「美波さんは寿命で亡くなりました」

「と言うことは今は百年くらい経ってるのか、ごめん俺のせいで、てかじゃあなんで望見さんは?」

「元の体に戻ることも出来たのでしょうが私は永遠を過ごすことを選択しました、死ぬだけじゃ絶対に足りない永遠を使っても償いきれないような罪を犯したので、それに死んだことなら一回経験しましたし」

 自分の体に戻ることを選ばなかった訳だ。

「なるほど、じゃあ僕もその罪は背負わなきゃだな、僕がやりたくてやったことだ、それに望見さんを何十年も待たせちゃった訳だ、その報いも受けるべきだろう」

「本当に良いんですか?、私なんかの為に永遠の苦痛を」

「いや僕がやりたい事だから僕の為だ、それに望見さんが一緒なら苦痛にはならないよ、それだと罪滅ぼしにはならないか、まあ良い」


「そうですね、確かに二人の罪だ、二人がしでかした罪、なら二人で永遠を過ごすべきですね」

 きっとこれは甘えだ、でも数十年誰にも甘えられなかったんだ、ならこれくらいの甘えは許されても良いよね。

「じゃあ希一さん、結婚しましょ、私たちの歳は一応九十歳超えてるので法的には問題ないはずです」

 

 僕の精神年齢は未だに十七歳だが望見さんは九十を超えているのだろう、まあ歳の差があったりなかったりなかなか複雑な夫婦になるな。

「良いよ、結婚しようか、これから一生、いや永遠お願い」

「はい、私からもこれから永遠にお願いします」

一応終わりです。

いやあ美しいお姉さまに監禁されたい人生ですね、黒髪ロングの眼鏡だと尚良いのですが、眼鏡の形は丸でも四角でもシンプルなデザインなら何でもいいかなそこに眼鏡があるならば、ただロングヘアは譲れない、黒髪とは書いたがクールっぽい方がええやろって奴です。

妖艶な感じでも良い、それこそ九尾の狐の擬人化とか、大体妖艶なイメージですね、まあそんな感じで自作はそう言った内容の物を書きたいなという願望です。

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