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「.............」
あの件があった次の日。
珍しく時間に余裕を持って学校に来た俺は、昨日のことについて思考を巡らせていた。
昨日は結局あのあとすぐに解散した。
お互い疲れていたのも会ったし、俺がすぐに情報を整理したかったためである。
それにしても........と、俺はまた考え込む。
あれから家にいる間も考えていたのだが、実は戦っていたときからルナの正体について目星はついていた。
それは...........
(霊創協会.........か)
また動き出したのか。
個人的に言えば、俺は奴ら、霊創協会に恨み.......というか遺恨がある。
霊創協会。
それは、霊術師を創り出すという頭のおかしい目標を掲げている........ゴミどもの集まりだ。
ああ、思い出しただけで虫酸が走る。
世界のためとかいう偽物の大義名分のもと、子どもや大人、男性女性問わず誘拐して実験を繰り返している犯罪者共である。
誘拐という罪と人体実験という非人道的なことを、世界のためだなんだと正当化になっていない正当化をして、研究のためなら対象の命の有無も問わない連中。
個人的な感想にはなってしまうが..........大っ嫌いだ。
できることなら俺が研究室に乗り込んで、すべてを破壊してやりたい。
というか、実際にしている。
確かに今の霊術師界隈はかなり厳しい現状が続いている。
霊術師は血ではない。
もちろん俺や彩花のように寺の血を引いていたりするとなりやすいってのはある。
だが、基本的にはランダムなので、人工的に増やすことは基本できない。
そのため、霊術師は常に不足している。
それによって怪異による被害が拡大し、命を落とす人が増えるのも、憶測ではあるが事実。
その観点だけで言えば、奴らのやりたいことはわからないじゃない。
けど..........
ぎゅっ!!
爪が手のひらに食い込むほどに拳を握る。
だからといって、誰かを犠牲にしていい理由にはならない。
誰かを不幸にしていい理由にはならない。
光を得るために..........影を落とす理由には.......ならない。
少なくとも俺はそう思う。
それは俺の仲間も同じで、すでに3つの施設は仲間と一緒に破壊。
今は協力してくれる人たちが、施設にいた子どもたちを保護している。
多大な霊気にさらされたり、怪異から作った薬を打たれたりと、決して無事とは言えないが。
生きていれば、幸せを掴むことはできる。
これは俺の心からの気持ちだ。
人間、命一つさえあれば誰でも幸せになれる権利を持っている。
だから、生きてほしい。諦めないでほしい。
幸せを掴んでほしい。
もちろん俺達はそのサポートをしっかりとしていきたいと思うし、もし全員が幸せになってくれるなら、何でもしたいとも思う。
まあ、現段階で社会復帰できた子もいれば、まだ霊気の影響が抜けきっていない子、完治はしたが、トラウマなのかなんなのか、社会に出ようとしない子もいる。
が、比較的治療は順調なので、とても嬉しい。
「はぁ.........」
頬杖をつき、ため息を吐く。
正直、俺は考えるのが不得意だ。
なので、いろいろ考えていたら疲れてしまった。
「ルナ.........か」
昨日会った氷の術の使い手、ルナ。
戦闘中こそ余裕の笑みで楽しそうに見えたが。
俺が見た彼女の最初の顔。
表情こそ笑っていたもののあれは...........
「.......ぱい、せんぱい!」
「んっ?」
考え事をしていたら時間がだいぶ経っていたらしい。
気がつけば教室にはまあまあな数の生徒がおり、隣には朝倉の姿もあった。
「..............」
というかすごい形相でこちらを睨んでいるんだが。
俺なにかしたっけ?
「んもう!せーんーぱーいー!」
ああもう、さっきから頬をグニグニしやがって。
反応すればいんだろすれば!
「さっきからどうした?小雪」
「どうしたって、わかりますよね!?」
「いや、すまん。ちょっとわからないな」
「さっきからずっと話しかけてたのに先輩が無視するからじゃないですか!!」
「それはごめん。ちょっと考え事してて........」
「もう、しっかりしてください!先輩はいついかなる時でも後輩である私を最優先にしなきゃいけないんですから」
「それは無理」
「なんでですかぁ!!」
(おい、鳴神がまたやってるぞ)
(くそ、許せねぇ!いっつもいちゃいちゃしやがって!)
(串刺しだ!うちは焼き鳥屋だからな!串ならいっぱいあるぞ!)
(神よ、あの重罪なるものに鉄槌を!)
さて、男子からの視線と言う名の剣が背中に突き刺さるがそれはおいておいて。
現状を理解できていない君たちに説明しておこう。
この白髪ショートカットのナイスバディな女子は俺の後輩の冬波 小雪。
察した方もいるかも知れないが.......
正真正銘、俺が先日使った刀である。